教会炎上
なんだ、あれは。俺は戦場を城塞から俯瞰していた。尾上さんとともに上空から飛来するフィアードラゴンを迎撃するためだ。高高度への攻撃は、フォトンシューターの得意とするところだ。三体ほどドラゴンを打ち落とした時、戦場に異変が起こった。
設置した柵が凍り付いているのだ。それこそ漫画かアニメのように、真っ白な塊になっている。そしてそこに、炎を纏った弾丸が撃ち込まれた。柵が砕け散る。
熱衝撃破壊、という奴だろう。聞いたことがある。冷えたものを急激に温めると物体が膨張力に耐え切れず破壊されてしまうのだ。いったいどんな存在が、そのような事態を引き起こしているのだろうか。一つしかない、《エクスグラスパー》だ。
「エリン! 凍らせる《エクスグラスパー》を探してくれ! まだ誰かがいる!」
『了解しました、シドウさん! 騎士さんたちの援護をそれまでお願いします!』
柵がなくなったことによって、騎士たちは防御を失い『真天十字会』のゴロツキどもは突破の足掛かりを得ることになった。恐怖を知らない兵士たちは、迷うことなく戦場に殺到する。あるいは、その背中を恐怖によって押されているだけかもしれないが。
ともかく、奴らの足を止めなければ。俺はフォトンシューターを構え、兵士に向かって連射した。兵士たちの服はここから見ても分かるくらい膨らんでいた。恐らく、中には防弾防刃ベストのようなものを着ているのだろう。肉厚の剣に対してどの程度の防御効果があるかは分からないが、もしかしたら剣は奴らに通用しないかもしれない。
弓矢による攻撃も、急所に当たらない限りは無視して突撃してきている。彼方のビーム攻撃はそれらの防御を無視しているが、いかんせん手数が足りていない。奴らの足を止めるには、火力が必要だ。出力を最小に、射出速度を最大に。食らえ!
城塞の上から降り注いだフォトンシューターの連射は、平地にいた『真天十字会』の兵士たちを襲った。隠れる場所もなく、遮蔽物もない環境では射撃を回避することは出来ない。俺の弾丸を食らった兵士たちが痙攣し、白目を剥いて倒れていく。
それでも、殺到する兵士たちすべてを倒すことは出来ない。戦場という『面』を埋め尽くす圧倒的な兵力に、こちらの手数が足りていない。何人かの兵士たちが弓と銃弾を潜り抜けて塹壕内へと到達する。殺戮が始まる。そんなことをはさせてなるものか……!
「面妖な力を持っているようだな。少し見ないうちに、あの世界も変わったな」
突如として、背後からしわがれた老人の声が聞こえて来た。俺は振り返り、見た。総白髪の男で、太い眉毛も豊かな髪も、もみあげと繋がった見事な顎髭でさえも、銀に近い白で統一されている。身長は俺よりも高く、百八十はありそうだった。体つきはがっしりしており、なで肩も合わさって俺よりも屈強な姿に見える。
それはいい。こいつの外見なんてどうでもいい。問題はこいつがいつ昇って来たかだ。
「すまんが相手をしてもらうよ、《エクスグラスパー》くん。それがワシの仕事だ」
振り向きざまに、俺は反射的に裏拳を放った。この爺さんはヤバい。立ち振る舞いといい、雰囲気といい、ただものではない。そしてこの場にいるということは、敵軍の《エクスグラスパー》である可能性すらもあるのだから。
俺が放った裏拳は、しかし老人によってあっさりと受け止められた。前腕に鋭い痛みが走る。何らかの刃物のようなものを突き立てられていた。クナイのような形だった。
切断される。体を引きそうになるが、必死で俺は体を前に向ける。ここで引くのは悪手だ、ズルズルとペースを握られる。俺は爺さんの体を掴み、跳んだ。
「悪いな、爺さん。人をいきなり刺してくるような奴って俺嫌いなんだよッ!」
城塞の上部から庭園部までの高さは約七メートル。頭から叩きつけられない限り即死はしないだろうが、かなりのダメージになるだろう。俺はそう考えていた。
「そうかね。だが残念ながら、キミはここで死ぬことになるだろう」
爺さんの腕が俺の腰に回された。直後、俺の腕の中にあった爺さんの体がぐにゃりと歪んだ。そうとしか表現の出来ない状態だった。爺さんはまるでできそこないのスライムのような形になり、俺の腕から離れて行った。いつの間にか、爺さんは背中の方にいた。
爺さんが俺の背中に立った。一秒も経たずに俺の体が地面に叩きつけられる。衝突と同時に蹴りの衝撃が俺の背中を貫いた。凄まじいプレッシャーを受け、内蔵が潰れる。
俺の背に乗った爺さんが、輝く刃を手に取ったのが見えた。頸椎にそれを叩きつけ、とどめを刺そうというのか? 冗談じゃない、俺はフォトンシューターを振り回した。体の構造上、肩の関節は背に乗った爺さんの方まで曲がらない。嘲笑う顔が見えた。
だが、俺の狙いはフォトンシューターを叩きつけることにはない。足掻いて目を引きつけ、時間を稼ぎ、フォトンレイバーのスイッチを押した。全身に展開された強固な装甲が分解され、新たな装甲と推進装置が展開される。老人の顔が歪んだ。
ブースターから炎が吐き出された。老人は炎が吐き出される寸前で飛び、ブースターに焼かれるのを避けた。地面の上をゴロゴロと転がり、俺は体勢を整える。
「手前、いったい何者だ! 『真天十字会』の《エクスグラスパー》なのか!」
「面白いことを言うな、少年。俺がそれ以外の何に見えるというのだね?」
爺さんは手元でクナイを回転させた。そこには真新しい血がべったりと付着している。深く刃を吐き立てられた左腕がジクジクと痛む。しばしの間、俺は爺さんと向き合った。
上方から銃弾が降り注ぎ、爺さんの体にいくつもの穴が穿たれる。尾上さんの銃撃だ。予想外の咆哮から攻撃を受けた爺さんは何の抵抗も出来ず銃撃を受ける。カっと目を見開き、驚愕の表情を作ったまま倒れ伏した。俺は慎重に爺さんに近付いた。
爪先で爺さんの体を起こしてみる。呼吸は止まっている。脈を取って見たが、動きはない。どうやら、先ほどの銃撃を受けて完全に死んでいるようだった。
「大丈夫です、尾上さん。ありがとうございます、これで何とかなりましたよ」
「それはよかった。お疲れのところ悪いけどシドウくん。ちょっと頑張ってくれない?」
どういうことか確認する前に、正門がノックされた。なるほど、これは頑張らなければならないだろう。ブースターを作動させ城塞の上に昇ると、サイクロプスの姿が見えた。
「サイクロプスと正面からやり合うのは初めてだが……やるしかねえか!」
「上のドラゴンどもは僕に任せたまえ! キミは地上の騎士たちの支援を!」
俺は頷き、城塞から飛び降りた。サイクロプスの身長は五メートルほど、城塞よりも小さいが、しかし昇ることも出来る高さだ。俺は扉をノックしているサイクロプスの頭部に切りかかった。頭が無防備な後頭部に突き刺さり、サイクロプスが狂乱する。浅いのか、一撃で絶命には至らない。俺は舌打ちし、何度も剣を振り下ろした。
身じろぎするサイクロプスが、俺の体を掴んだ。万力のような力に、俺は握り潰されそうになる。ブースターを作動させ、サイクロプスの手を焼いた。サイクロプスが再び喚きだし、俺を取り落す。俺はサイクロプスの体から滑り落ちながら、奴の頸椎に剣を叩きつけた。一際重い感触がしたかと思うと、サイクロプスの体が折れ曲がり、倒れた。
地面を転がり、体勢を立て直す。戦場の様相はあまりにも混沌としていた。最奥部では炎と剣撃の音が断続的に聞こえて来る。銃弾と弓矢とが飛び交い、空をドラゴンが旋回している。時折、空中からビームが降り注ぎ、兵士たちを焼いて行った。炎を吐こうと口を広げたドラゴンに、ミサイルが突き刺さり爆発。ドラゴンの巨体が落ちた。
戦場を我が物顔で闊歩するサイクロプスの数は非常に多い。ゴブリンやオークなど、それ以外の《ナイトメアの軍勢》の数も増えているように思える。攻撃が思うように進んでいないからか、敵も戦力を集中し始めている。フォトンレイバーを握り直した。
「通しゃしねえぞ、手前ら! 俺の手の届く場所で、もう誰も死なせねえ!」
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ミサイルランチャーのリボルビング機構が作動し、次のミサイルが補給される。長時間重りを担ぎながら戦ったことと、度重なる能力使用による疲労が尾上にのしかかってくる。脇の傷が開いたのかもしれない、先ほどからジクジクと痛んだ。
尾上が見なければならないのは、空だけではない。地上の状況もだ。《ナイトメアの軍勢》が正門前に集中投入されているせいで、戦線は押され始めている。あの火炎使いをクロードが押さえてくれているのが、唯一の救いだった。
「尾上! 北西と南西の攻撃が緩んでいる、こちらも戦力を正面に集中させるか?」
「いや、まだ動かしちゃいけない。向こうはどこか一点でも突破出来ればいいが、こっちはどこか一点でも突破されれば致命的だ。広く防御陣を敷かなければならない」
上空の攻撃が緩んだのを確認し、尾上はライフルを地上に向けて連射した。ゴブリンやオークはイナゴめいて繁殖し、地上を埋め尽くそうとしている。世界の終わりとやらがあるとするのならば、もしかしたらこういう光景なのかもしれないな、と尾上は思った。
「分かった、ならば私も正門の防衛に参加しよう。それより、大丈夫かお主?」
「なに、問題ないさ。ちょっと虚弱体質でね。足掻くのに慣れてないのさ」
「気を付けろよ、尾上。どこから攻撃が来るか分かったものではないからな」
「問題はないさ。《エクスグラスパー》はクロードくんが押さえてくれているし、こちらに侵入してきた一体にしても、さっき排除することが出来た……」
そう言って視線を切って、尾上は気付いた。自分が犯した大きなミスに。
あの老人の死体がなくなっていた。血痕の一つも、そこには存在していなかった。
「……! 御神さん、気を付けろ! 敵が近くに潜んでいるぞ!」
御神は警戒を厳にしたが、遅かった。彼女の体が震えた。尾上は見た、彼女に突き刺さった短刀に。それは鎖骨のあたりを貫通し、胸元まで伸びていた。
「おや、避けらえてしまったか。存外に勘がいいのだね、キミたちは」
御神は倒れ込むようにして前に出た。刃が抜かれ、鮮血が迸った。不思議なことに、そこには短剣と、手だけがあった。正確には、人間の手のようなものがあった。
所見の人間は、尾上のようにこれが何なのか理解することが出来ないだろう。確かに、形は人間の手に似ているが、しかし蛇の胴体のように伸びた肌色の物体から生えているものを、手と認識するのは難しいだろう。蛇の胴体めいたものは城塞の下に続いていた。
「貴様は……! なぜ生きている! 確かに止めを刺したはず……」
尾上は城塞の下を覗き込んだ。そんな彼の視線に、銀色の光が瞬いた。間一髪、尾上は体を逸らしそれを避ける。額がパックリと割れ、鮮血が迸った。
老人は城塞に張り付いていた。その姿は異形としか言いようのないもので、四本の足と四本の腕を巧みに操り煉瓦のヘリを器用に掴んで張り付いているのだ! 恐怖! 更に、短刀を握った腕が伸びたように尾上には見えた!
舌打ちし、彼は手榴弾を取りピンを抜いた。三秒ヒューズ、彼は二秒間握り投げた。弧を描き手榴弾は城塞の内側に投げ込まれた。彼は御神を庇って伏せた。直後、爆発音。先ほどまで老人がいたであろう場所で爆発が起こった! 常人であれば即死!
しかし、城塞の手すりを掴む四本の腕を尾上は見た。彼は御神を助け起こし、体勢を整えさせた。懸垂の要領で異形の老人が昇ってくる。彼が地に足をつけた時、その姿は人間のそれに戻っていた。漆黒の道着めいた衣服を着た、白髪の老人がそこにいた。
「蜂の巣にして殺したはずなんだがね……どうやって生き延びたのか教えてほしいな」
「《エクスグラスパー》を相手にしているのだ、殺した程度で安心するなよ」
老人は嘯いた。尾上も無駄に会話をしているわけではない、御神が呼吸を整える時間を確保したかったのだ。心臓を逸れてはいるものの、太い血管を損傷している。すぐに治療を行わなければ、御神は死ぬ。それだけは絶対に避けなければならない。
「私と向き合っていていいのかね? そろそろ、戦いは正念場を迎えるようだが」
ドスン、と凄まじい音がした。尾上は思わずそちらを見て、そして愕然とした。そこには、サイクロプスよりも遥かに巨大な怪物が存在した。
体長十メートルを越えるであろうゴツゴツした岩めいた体の持ち主で、鈍足だが優れた力を持つのであろうことが分かる。何本もの矢が突き立てられるが、しかし怪物はそれに対して微動だにしない。泰然自若とした様子で歩き続け、足元にあった塹壕を踏み潰しながら進んだ。
「ギガンテスだと……!? あれこそ、伝説の存在であったはずなのに……!」
御神も目の前に現れた怪物を見て、驚愕した。その隙を見逃さず、老人は動いた。流れるような動作で短刀を抜き放つと、手負いの御神の喉元に向かってそれを投げた。反応が遅れた御神は、それを避けられない。短刀が突き刺さり、鮮血が舞った。
「……尾上!?」
だが一瞬早く反応した尾上が、彼女を庇った。もちろん、彼は超人ではない。クロードのように飛来する刃を掴んだりすることは出来ない。だから、その対応策も限られる。彼は左腕を晒し、御神を殺そうとする刃を受け止めたのだ。
「いい反応だ。とはいえ、キミが死ぬことに変わりはないのだがな!」
老人は次なる刃を用意した。と、そこでビームが降り注いだ。咄嗟の反応で老人は後ずさった。上空を見てみると、漆黒の球体があった。フローターキャノンだ。
「聞こえているかい、クロードくん。シドウくん。限界だ。即座に城塞内に撤退しろ」
尾上はインカムを作動させ、外で戦うクロードと指導に指示を出した。その最中にも右腕だけで器用にアサルトライフルを操り、前方の老人目掛けて発砲した。いかなる能力で老人が銃撃を避け、命を繋いだのかは分からない、だがそれは銃弾の一切合切を無視できるような便利な能力ではないようだ。事実、彼はその場に釘付けにされている。
『限界って、どういうことですか尾上さん! こっちはまだやれますよ!』
『同感です。ヴェスパルはこの手で確実に始末しますしデカブツもこちらで仕留めます』
「撤退の準備は整った、ってことさ。先ほど飛行船の修理が終わった旨、それから『共和国』からの増援がこちらに辿り着いた旨がこちらに知らされた。これ以上、命を賭ける必要はない。エリンくんのサードアイが、後続のギガンテスとサイクロプスを捉えている」
そもそも、騎士団の防衛網もすでに限界に達している。ギガンテスの登場で彼らは浮足立っている。いかにクロードが傑出した戦力であるとしても、限界がある。あの軍勢をすべて滅ぼし尽くすことなど、彼であっても出来ない。
シドウも成長しているとはいえ、まだ立ち回りには未熟なところが目立つ。加えて、彼には他の戦闘型の《エクスグラスパー》が持っているような広域殲滅能力が存在しない。彼の持つアドバンテージは常軌を逸した生命力と高い防御力、そして剣と銃が生み出す汎用性だ。しかも、最大戦力を維持できる時間は極めて短い。
極論を言えば、シドウ単体が持つ戦闘能力は騎士一人と大差がない。特にこうした、向かい合っての戦闘では。
「それと、御神さんが負傷した。これ以上、こちらで指示を出すことが出来ない。敵が、《エクスグラスパー》が生存していた。これ以上戦闘を継続するのは不可能だ」
『なっ! あ、あいつが生きていたっていうんですか?! だって、あいつは……』
「生きていたのは事実だ! いいか、二人ともすぐに下がるんだ! 船着き場で待つ!」
尾上は通信を切り、銃身下部に設置されたグレネードランチャーを発射した。さっきこれをやっておけばよかった、尾上は後悔したが、これで殺せるとも思っていなかった。
事実、爆炎を裂きながら老人が突撃してくる。その両手にはクナイめいた短刀が握られている。クロスレンジでの打ち合いを出来る力はない、尾上の脳裏に死の文字が過った。
しかし、死は訪れなかった、御神が決死の力を振り絞り、刀を抜いたのだ。轟炎が轟き、老人の大きな体を飲み込んで行った。炎が晴れた時には、すでに老人の姿はなかった。荒い息を吐いていた御神が吐血し、崩れ落ちるようにして倒れた。
「御神さん! バカな、無理をするんじゃない! あなたは戦える状態じゃない!」
「なに、どんな状態であったとしても……仲間を守るのが、拙者の、すべきこと……」
御神はまた吐血した。太い血管どころか、呼吸器系に損傷を負っているのかもしれない。この世界の医療技術で、そんな深い傷を負った人を治療することが出来るのか?
そんなことを考えていた尾上は、凄まじい目眩に襲われた。猛烈な吐き気と、全身を刺すような痛み。脂汗も酷い、引っかかるものを感じ傷口を見ると、赤く腫れていた。
(あの爺さん……毒を塗った刃を使ったのか……!? 受けさせられた、ということか)
毒を受けてなお、尾上は冷静だった。否、死が身近にあるからこそ、冷静になっていると言い変えた方がいいだろうか。雑念が振り落とされ、思考がクリアになる。
着地音が聞こえた。城門の外を見てみると、そこにはあの白髪の老人がいた。御神の決死の一撃を持ってしても、あの男を殺すことは出来なかった。彼は近くにいたシドウを無視して尾上の方を見て、ニヤリと悪辣に笑うのだった。
「まあいい、最低限の仕事はした。《エクスグラスパー》一人と魔導兵装使い一人であれば、私という戦力を『真天十字会』に売り込むことが出来るだろうな」
「手前……! よくも二人をやりやがったな、ああっ!?」
シドウが吠え、老人に向かって切りかかる。だが、シドウの放った刃は老人の体を捉えることはなかった。彼の体はまるでスライスチーズか何かのように二つに裂けたのだ。体があったはずの場所を通り過ぎたシドウが、傍から見れば間抜けな声を上げた。
「さようなら、愚かなものたち。キミたちは生きてここから出ることは出来ないよ」
去り際に老人はシドウの背中に短刀を突き立てた。シドウは呻きながら背後に剣を振るうが、しかしやはり老人には当たらなかった。老人はシドウに背を向け、走り出した。シドウは追いかけようとするが、しかし上から尾上が彼を制した。
「シドウくん、追いかけるな! あいつを倒すことは不可能だ! それより、こっちを手伝ってくれ! 御神さんが危ないんだ、このままでは命の危険さえある!」
シドウは逡巡し、苦々しげな表情で仲間の命を取った。ブースターを作動させ城塞の上に上がり、御神の体を抱えて船着き場に向かって走っていった。尾上もそれに続いた。
腕の傷に、自らの体を蝕む毒のことを、気付かれないように努めながら。




