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最弱英雄の転生戦記  作者: 小夏雅彦
黒猫は災厄と嗤う
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未知なる敵と次なる旅路

 みんなと図書館で合流した俺たちは、事情を説明し御神さんを待った。エリンはリンドと一緒に、事態の進展を喜び合った。彼方くんは蚊帳の外に置かれ、少し寂しげだ。

 しかし、御神さんとの合流時間を指定していなかったのがまずかった。いつまでたっても御神さんが現れない。


 とは言っても、待っていたのはほんの十分くらいなのだが。待っている間暇をしているのも何なので、俺たちは別の調べものをすることにした。すなわち、彼方くんが持っているアポロの剣に関する調べものだ。

 こちらは比較的簡単に見つけることが出来た。とは言っても、それらしいものがほとんどない、というだけであるが。エリンのサードアイによる検索を続けてもらいつつ、俺たちは手に入れた一冊に目を通してみることにした。記されているのはこんな内容だ。


『太古の昔、『光』はこの世界を守るために『闇』との戦いに挑んだ。『光』は絶大なる力を持っていたが、その一つが自分の持つ根源たる力、すなわちこの世界の法則を形作る力を具現化させ、分け与えるという能力である。しかしながら、この世界には根源たる力を振るえる人間は存在しなかった。少なくとも、この段階においてはまだ。


 そこで、『光』は別世界の人間をこの世界に呼び出し、その力を分け与えることに決めた。理解し難いことかもしれないが、世界はこの《エル=ファドレ》だけではなく、いくつも存在する。それらは薄い皮膜によって分かたれた、すぐそこにある世界である。そして皮膜を破り、世界の壁を越えることが出来るのは『光』だけである。


 『光』は十二本の武具を作り出し、召喚された英雄に分け与えた。

 それはすなわち、

 『ヘラの兜』『アレスの鎧』

 『ヘスティアの手甲』『ヘルメスの具足』。

 四つのコアと呼ばれる防具。


 『アポロの剣』『ポセイドンの海槍』

 『ヘファイトスの短剣』『デメテールの杖』

 『アルテミスの弓』『アテナの盾』

 『アフロディアの慈愛』『ゼウスの杯』

 八つの武器。

 偉大なる勇者、《エクスグラスパー》は十二の武具を振るい、『闇』をこの世から追放した』


 そう書かれていた。取り立てて真新しい情報はないが、名前を知ることは出来た。


「……『光』の考証担当はネーミングセンスに突っ込みを入れなかったんでしょうか?」

「仮にも伝説の武具の名前が他の神話まるパクリってのはどうかと思うんすよね」


 しかも、それぞれの神が持つ逸話とマッチしていない名前も多くある。最後の方は武器に当てはめることすら放棄している。創世神話としてはあまりに適当ではないだろうか。


「お前ら、何言ってんだ……どうでもいいだろ、そういうことは」

「どうでもよかぁ、ないでしょう! 気になっちまうんですよ、こういうことには!」

「そうですよ、いくら創世にこちらの世界の人間が関わっていると 言っても、これはありません! だいたい一神教なのに多神教神がモチーフとはどういうことですか!」

「分かった分かった! 分かったからお前らちょっとは落ち着かんかぁ!」


 トリシャさんはキレたが、しかし俺たちは止まらない。


「おっ、騒がしい一団がいると思えば、お主らか。すまぬ、お待たせした」


 と、そんなところで計ったように御神さんがやって来た。俺はそっちの方に目を向けて、言葉を失った。

 彼女の背中には、ぱんぱんになったバッグが背負われていた。


「あの、御神さん。その恰好……どこかに行かれるんでしょうか?」

「おお、そうだそうだ。まだお主らには言っていなかったなぁ」


 そう言って、御神さんはバッグを下ろした。『ドスン』という音がしたような気がした。どんだけ詰め込んでいるんだ、この人は。御神さんは適当な場所にあった椅子を掴み、引っ張ってくると、両手を組んでドカッと座った。


「さて、解呪についての話だな。解呪を行うには、『帝国』との国境線上にある霊山、マーレンに向かう必要がある。儀式はそこでないと行えぬのだ」

「霊山、ですか。まさか山登りをすることになるとは思いませんでしたが……」

「いやいや、マーレン自体は穏やかで険しくない山だ。しかし問題があってなぁ」


 両手を組んで、御神さんはのけ反った。

 倒れてしまわないだろうか。


「現在、あの辺りを根城とする山賊が現れておってなぁ。おかしな力を持つゆえ、『帝国』騎士もなかなか手が出せんのだ。おかげで、村人から助けを求める陳情が何度もこちらに流れてきておるのだ。しかし、教会騎士団も迂闊に手が出せんので困っている」

「迂闊に手が出せないって、信者からの要請なんでしょう? だったら何で……」


「『帝国』との境界線上にあるというのが問題なんでしょう。迂闊に突っついて『帝国』側に逃げられると、今度こそ教会には手出しをすることが出来なくなる」

「左様。教会としても、『帝国』領にみだりに立ち入ることは避けたい、ということだ」


 どういうことだろう。俺は首を捻ったが、しかしみんなは得心したようだった。


「えーっと……つまりどういうことなんだ? よく分からねえんだけど……」

「『帝国』と天十字教会、もっと言うと『共和国』のパワーバランスの問題だよ。現状、教会は各国家の独立性を保証しているけれども、盗賊を追いかけるためとはいえ勝手に領土内に入ったなら国家の独立性を揺るがしかねない、ということさ」

「騎士団が行ったのならば、それは侵攻と取られても仕方がありませんからね。そして両国を黙らせるほどの武力を教会が保有していればいいが、そういうわけでもないと」


 やはりここでもパワーバランスか。

 国家間の理屈は、俺には分からない。それでも、苦しんでいる人々を見捨てて、そのままにしているのは……


「んなことは、きっと……間違っていると俺は思う」

「気が合うな。拙者もそう言う面倒なのが嫌いだからこういう立場におるのだ」


 御神さんが微笑んだ。そして、彼女はバッグに詰め込んでいた紙束の中から一つを取り出し、広げた。そこにはアルクルス島と、その周辺の地図が描かれていた。


「ここより南西方向にマーレン山がある。峠には『帝国』との関所もある。現在のところ、山賊団は『帝国』にはちょっかいを出してはおらん。しかし、その周辺の、騎士団の庇護下にない村では簒奪行為が相次いでいるということだ。そのため、奴らは不届きなことにマーレン山を拠点としている、と拙者は考えておるのだ」

「この近くに潜伏できそうな森や施設は……なるほど、なさそうですね」

「しかも、マーレン山にはかつて使われ、廃棄された教会の遺跡が存在する。雨露を凌ぐことが出来るし、奪ったものを保管しておくももってこい。可能性は高いぞ」

「この距離ならば、三日もかければ現地に到着することが出来そうだね」


 地図の端には縮尺が記されているが、しかしその単位は俺たちが使っていたものとは異なるようだ。現地人であるエリンやリンドにも確認してみるが、厳密な数学的距離というよりは、メートル法が発明される前に使われていた体感的な観測法を用いているようだ。


「慣れないうちは戸惑うかもしれないけど、シドウくんも多分分かるようになるさ」


 いつまでこの世界にいるのかも分からない、慣れておくに越したことはないだろう。


「ところで、山賊たちは奇妙な術を使うと言っていましたね。それはいったい?」

「うむ、これは山賊の襲撃から生き延びた者たちの証言を集めたに過ぎないのだが……」


 そう言って、御神さんは語り出した。


■◆■◆■◆■◆■◆■◆■


 ある日、野良仕事をしていると甲高い音が鳴った。音のした方向を見てみると、そこには山賊がいた。火薬玉でも使ったのか、人々はそう思ったらしい。《エル=ファドレ》に持原始的な火薬武器、こちらの世界でてつはうと呼ばれていたような、陶器の中に火薬を詰めた炸裂弾のようなものがあることは知られていたそうだ。もちろん、実用性は低い。


 村には腕自慢たちが揃っていた。一対一でクマと戦い、勝利したと嘯くもの。十年にも及ぶ『帝国』の奴隷兵士生活を終え、名誉市民として登録されたもの。

 それ以外にも大勢、都会の喧騒に飽き飽きしスローライフに身を転じた人々が集まって出来た村だった。山賊どもなど物の数ではない、そう思っていたそうだ。


 しかし、山賊たちは奇妙な武器を持っていた。それは鉤を大きくしたようなもので、引っ掛ける部分を山賊たちは持っていたという。普通の鉤で言うところの持ち手の部分を向けると、大きな火薬の炸裂音がして、人々を殺傷していったというのだ。弓の一撃にすら耐える、何重にも重ねたバンデッドアーマーを容易く貫通していったという。


 命からがら、村から逃げ出し、この窮状を伝えに来た村人も、腹に傷を受け、苦しみ抜いたのち三日後に絶命した。背中から腹までを貫通する鋭利な傷がついていたという。


◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆


 その話を聞き、俺たちは静まり返った。訳が分からないから、ではない。ある程度事情が呑み込めてしまうからこそ、ワケが分からない。尾上さんがまず口を開いた。


「聞きたいことがあるんだ。その山賊たちが使っている武器の絵とかはないのかな? もし、その逃げ延びて来た村人さんがその形を詳しく説明していたなら、教えてほしい」

「うむ。命は長くないと悟った彼は、彼奴らの使っていた武器について説明を始めた」


 そう言って、御神さんは別の紙束を取り出して見せた。証言を元にして、教会の絵師たちが描いたものだという。その形を見て、俺たちは絶句し、確信を得た。


 山賊たちが使っていたのは、拳銃だった。

 それもセミオートマチックの。


「……どうなっているんだろう。本当に山賊たちがこんなものを使っていたのか……?」

「《エクスグラスパー》みたいに、この世界にも武器が転移してきたんじゃあ?」

「そうであるならば、彼らはこれの使い方が分からないはずだ。もし、この武器の使い方を理解したのならば、それを他人に知らせようとも思わないはずだ。だってそうだろう、銃を手にした人間は、平等に銃の力を手に入れるのだから」


 それもそうだ。銃のアドバンテージは遠距離から敵を殺傷することが出来る、弾数が続く限りそれを続けることが出来る、という以外にも、誰もが使えるという点がある。反動の強い銃を女子供は使えないだろうが、成人男性ならば拳銃程度、簡単に扱うことが出来るだろう。もしあるのならば、それよりも強力な武器をも。


 もし、多くの武器があるというならば、その使い方を知らしめることは自分の持つ最大のアドバンテージを自ら手放すのと同じことだ。自分が使い方を教えた銃で、自分が殺されてしまってはたまったものではないだろう。少なくとも集団のリーダーにはなれない。


「お主ら、この武器のことについてなにかを知っておられる様子だな」

「知っている、というより、これは僕らの世界の武器です。申し遅れましたが、僕のは尾上雄大、『共和国』の庇護下にある《エクスグラスパー》です」


 御神さんは瞬間、驚いたような顔をするが、しかしすぐに納得する。


「『共和国』が数百年ぶりに《エクスグラスパー》を召喚したと聞いていたが、お主が」

「黙っていたわけではありませんが、すみません。すぐに言うべきでした」

「いやいや、それはいいのだ。それよりも、この武器について聞かせてくれ」


 尾上さんは銃についての知識を、俺のそれよりもよほど詳しく説明してくれた。


「なるほど、なぁ……初めて武器を持つ者でも、熟練の騎士と同じ動きを……」

「信じられないのも無理はありませんが、しかしそれは事実であります。ご理解下さい」

「いや、信じていないわけではない。拙者も同じようなものを持っているからな」


 そう言って、御神さんは自分が帯びている二本の刀の柄を握った。


「魔導兵装『日輪』と『熾天』。不可思議な力によって、この剣は炎を生み出せる」

「ああ、俺たちの船を助けてくれたのはそれを使って……」

「拙者の技と合わせれば、火炎を纏った斬撃を飛ばすことも出来る。ずぶの素人が扱ったとしても、並の騎士程度に負けはせんだろう。しかし、それは……」


 御神さんは、少しの間考え込むような仕草をした。


「その銃というのは、山賊団に行き渡らせられるほど多くを作ることが出来るのか?」

「生産設備さえ整っていれば、という条件は付きますがね。魔法石のような希少鉱物を使わなくていい分、生産性は比べ物にならないほど高いでしょう。もし、生産体制を整えることが出来れば……それこそ、大陸全土の人間を武装させることも可能です」


 騎士階級は安価で高性能な銃の登場によって駆逐され、前時代的な戦争は銃の生み出す圧倒的な威力によって駆逐された。

 それが、この世界でも起こるというのだろうか? 俺たちが経験して来た――実感はないが――血みどろの歴史が、繰り返される?


「いずれにせよ、山賊に苦しめられる人々を助けるのが私の使命。相手がどれほどの力を持っていたとしても、拙者は行く。それが神の使徒としての使命である」

「それが交換条件、ということでしょうか。解呪をして欲しいのならば、手伝えと?」

「左様。お主らが戦える存在であるということは、先刻承知。是非とも力を貸してくれ」


 御神さんは立ち上がり、深々と礼をした。複雑な気分だ。俺たちが戦う力を持たないならば、この人は俺たちを見捨てていたのかもしれない。いや、多分確実にそうだ。


「俺は……協力していいと思う。っていうか、それ以外に道はねぇって、そう思います」


 けれども。これは掴めたチャンスだ。

 少なくとも、可能性はもうゼロではない。


「もちろんです、シドウくん。元より選択肢がないのですから、乗るしかありません」

「……申し訳ありません。私たちのために、こんな危険なことを……」


 リンドは申し訳なさそうに、くしゃっと顔を歪ませた。

 俺はその頭を撫でる。


「言っただろ、責任取るって。それにこんなこと、なんてことはねえさ」

「でも……山賊の持っている武器は、とても強力なものなのでしょう?」

「安心したまえ、リンドくん。いかに優れた武器を持っていたとしても、相手は素人さ」


 尾上さんも立ち上がり、誇らしげに自分を指さした。


「彼らにはプロのやり方を教えてあげるとしよう。山賊上がりの民兵集団にね」

「それに、私たちは銃を持った連中を制圧するのには慣れているからな」

「銃弾を恐れるから、銃に傷つけられるのです。当たらなければどうということはない」


 クロードさんは適当なことを言った。

 恐れている者は、一人としていなかった。


「彼方くん、多分危険なことになると思うが……大丈夫か?」

「だ、大丈夫です。僕だって……人を苦しめるような人は、許して置けませんから」


 彼方くんの言葉には、若干の不安が隠れているように見えた。だが、その目は決意に満ちたものだ。きっと、村を追われた人々と自分とを重ね合わせているのだろう。


「最後に確認しておきたいのですが、村人の無事は確認されているのでしょうか?」

「先程話した方が出て行った時までは、少なくとも。それから先は、分からん」


 言われて、俺はようやくその可能性に気付いた。もしかしたら、村人は皆殺しにされているのかもしれない。だが俺の想像を、クロードさんは否定した。


「山賊が村を占拠しているのは、その方が自分たちにとって利益となるからでしょう。つまり、村人を奴隷化し、支配下に置いていると考えた方がいいでしょう」

「もしそうならば、積極的に村人を殺す理由はないね。とはいえ、見せしめに何人かやられているかもしれないから、決して楽観はできないだろうけど」

「まだ助けられる可能性があるってんなら十分ですよ!行きましょう!」


 俺は拳を打ち鳴らした。これ以上、好き勝手をさせてたまるものか。


「方針が決まったようで何よりだ。では我々は、これよりマーレン山に向かうぞ」

「え、ちょっと待て。いまからか? いまこの時間から行こうって言うのか?」


 すぐに出ようとする御神さんに、トリシャさんが抗議した。確かに、窓の外を見て見ると宵の帳が落ちかけている。時間にして五時過ぎくらいか。いまから出れば確実に野宿。


「こうしている間にも民は苦しめられているのだ。すぐに出ないわけがあるのか?」

「おおいにある。『墓泥棒がミイラ』というコトワザを知らんのか。夜間の強行軍を繰り出して、私たちが先に潰れてしまったらどうする。敵の方が悠然と構えているんだぞ」


 『ミイラ取りがミイラになった』、と言いたいのだろうか?

 まあ、言葉というのは時代によって変化していくものだ。ここでツッコミをいれるのも野暮というものだろう。


「何を言っている、『心を燃やせば実際熱い』というコトワザを知らんのか! そうやってマイナス方向のことを考えた時点で、すでに負けているものと知れ!」


 今度は『心頭滅却すれば火もまた涼し』と言いたいのだろうか?

 というか、あのコトワザで通じたのだろうか。と言うより、使い方が間違っている気がしなくもない。


「熱血脳筋タイプか……! 根性論だけですべてが解決できると思っている、お前のような手合いは私は好かんぞ!ちゃんとリスクを計算してから行動しろッ!」


 大雑把な『動いてから考える派』と『考えてから動く』派の対立か。一応、いまのところどちらにも理があるため、俺は口を出すことが出来ない。


「まあまあ、落ち着いて下さいトリシャさん。彼女の言うことにも一理ありますよ」

「どこがだ。兵は拙速を尊ぶ、と言うが何も考えていないのは論外だろう」


 そこだけは正しいコトワザなのか、そんな下らないことを考えた。


「時間がないことは確かですしねぇ。それに、緊急性があります」

「確かに。襲われた村人がどれだけ生き残っているかは分からないけれど、時間が経てば経つほど生存確率は低くなると考えていいだろう」


 尾上さんの言葉に、俺は身を固くする。

 相手は人を簡単に殺す、人間なのだ。


「すぐに準備を整え、出発しましょう。多少の強行軍は許容しなければ」

「ふむ……まあ、合理的と言えなくはないか。分かった、納得する」


 まだ憮然としている感じだが、トリシャさんもクロードさんの提案に応じた。


「そういうわけです、御神さん。こちらにも準備があります。もしよろしければ、この辺りで旅装を整えられるような場所があれば教えていただきたいのですが」

「うむ。任せろ、この街は拙者の庭のような場所だ。すぐに取りかかるぞ」


 御神さんは大きなバッグを背負い直し、俺たちを先導していった。しかし、あの中にはいったい何が入っているのだろう。思い切って、俺は聞いてみることにした。


「うむ、旅に必要な基本的なものを一揃え、ここには入れておるぞ」

「へえ、凄いっすね。っていうことは、これかなり重いんじゃあないっすか?」

「なに、これしきのことでへこたれていては仕事にならん。それに、旅路もまた修行の一つ。多少負荷をかけていくくらいのことをせねばいかんのだ」


 時間がそれほど残されていないのに修行か、と言われて首を傾げたが、恐らくこの先のことも考えて、だろう。それに、多少負荷をかけておいた方がいざという時動きやすいのかもしれない。

 ともかく、俺より御神さんの方が旅慣れているのだ。


 結局、準備が終わる頃には日はすっかり落ちていた。ランタンに火を灯しながら、俺たちは明かりさえない道を進んで行った。

 夜道を歩くのは、そう言えばこれが初めてだ。


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