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茄子と恐竜とマンモスのダンス

作者: 相野仁

「ダンスは革命だ!」


 恐竜くんは叫びました。

 それを聞いたマンモスさんが答えました。


「いいや、違うね。ダンスとは情熱だ!」

 

 茄子さんはため息をついて言いました。


「どちらも正しくてどちらも間違っておる。ダンスとは生き様じゃ」


「はい、師匠!」


 恐竜さんとマンモスさんは背筋を伸ばして答えます。

 彼らが身動きすると大地が揺れました。

 どちらとも山もかくやという巨体なのですから仕方ありません。

 茄子さんは立ちあがると指を天を目がけてさし示しました。


「いくぞ、レッツダンス!」


 茄子さんが踊り始めると、恐竜さんとマンモスさんがそれに合わせ踊りはじめます。

 大地が激しく揺れて地面がひび割れ、周囲の木々が倒れていきます。

 それでも彼らは少しも意に介しません。

 全くもって迷惑な連中でした。


「恐竜さん、違う! もっとステップは軽やかに!」


 茄子さんがお弟子さんである恐竜さんを叱りつけます。


「はい、師匠!」


 恐竜さんは体重が数トンもあるのですから、軽やかなステップをしろと言う方が無茶です。

 しかし、恐竜さんは師匠の指導に従おうと必死でした。

 その結果、激しく大地が揺れて鳥や小動物達が逃げまどいます。


「マンモスさんはもっと腰を使って!」


 茄子さんは次にもう一人の弟子であるマンモスさんを叱ります。


「はい、師匠!」


 マンモスさんの体の構造的にこれ以上腰を使うのは不可能です。

 それでもマンモスさんは、師匠である茄子さんの指導に従おうと一生懸命でした。

 その結果、地面が陥没して緑が壊滅していきます。

 果てしなく迷惑な師弟トリオでした。

 一通りダンスの練習が終わると、師匠の茄子さんが言いました。


「そろそろ休憩しようか。上達する為には、休む事も大切だからな」


 それを聞いた恐竜さんとマンモスさんは、それぞれ休み始めます。

 恐竜さんがどっこいせと腰を下ろすと、地響きが轟いて地下から水が吹き出しました。


「踊った後の水っておいしいなあ」


 恐竜さんは嬉しそうにそう言って、ごくごくと水を飲みます。


「恐竜さんはダメだね。水はもっとスマートに飲むものなんだよ」


 マンモスさんはそう言いましたが、やっている事はどちらも同じです。

 その為、師匠の茄子さんにたしなめられました。


「そういう言い方は止めなさい、マンモスさん。我々は生きている以上、水が必要なのだから」


「ごめんなさい、先生。恐竜さんもごめんなさい」


 マンモスさんが素直に反省して謝罪したので、恐竜さんと茄子さんは許してあげる事にしました。

 茄子さんは地の割れ目の上へと移動し、全身で水を浴びます。


「ふー、極楽極楽じゃ」


 それから満足そうな声を漏らしました。


「先生、年寄りくさいですよ」


 恐竜さんがそうからかうと茄子さんは笑って答えます。


「だって私はもう年だもーん」


「そんな先生。先生にはまだまだ元気でいてもらわないと困りますよ」


 マンモスさんが困惑してそう言うと、茄子さんはからからと笑いました。


「安心せよ。ダンスを踊る限り、私はそうやすやすとは死なぬ。何故ならばダンスとは生き様だからじゃ!」


「さすが先生!」


「そこに憧れます! 尊敬できます!」


 恐竜さんとマンモスさんは、やんやと拍手喝采を浴びせます。

 「お前ら迷惑だからさっさとくたばってくれ」という、周囲の生き物達の願いなんてどこ吹く風です。

 今日も無言の悲鳴を踏みにじりながら、彼らのダンスの練習は続いていくのです。


「さあ、今日もレッツダンス!」


 その後隕石が落ちてきて、恐竜さんもマンモスさんも絶滅してしまいましたが、茄子先生だけはしっかり生き延びました。

 何故ならば茄子先生だからです。


「うーん、恐竜さんもマンモスさんも修行不足だったね」


 先生は残念そうにつぶやき、一人寂しく本日もダンスを踊るのでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めまして、つまり我々人類は茄子師匠から進化した訳ですね、知らなかったです(棒読み) 人類史を塗り替える笑撃の事実発覚だwww こういう一発ネタは好きなんで、またお願いします^_^
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