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俺の日常  作者: 宵賀
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思い出した…  ver.吹音

 3時になってお店に行った吹音だが、お店に行った瞬間、お店の女将さんらしき人がとあることを教えてくれた。

 それは吹音にとってとてもショックなことであり、運命を変えてしまうことにもなった。


「あなたが吹音さんね…せっかく来てくれたのは嬉しいんだけど、募集はなかった事にしてくれない?うちの店の事情が変わったから、募集できるようにはならないのよ……」


 唐突に言われた言葉。

 吹音はただ、「分かりました」としか言えずに、今までにあった気分が心の底に落とされてしまい、黙ったまま、何も考えずに来た道を辿る。

 10~12月までも短期バイト。受かったのに何もないまま終わってしまったことについて、悲しくて仕方なかった。

 ただ、まっすぐ家に帰る途中で、どこかで顔見知りの人に出くわした。


「吹音、あんた外で歩いてもいいの?」

「え?」


 その人はとても綺麗な人で、程よく化粧をされた品のよい顔立ちで、長い黒髪、そして、耳には指輪と同じぐらいのピアスをしている。

 吹音の記憶の中から引っ張り出された、その女性は、自分と同じ会社に勤める同僚でもあった。


「お、お久しぶりです」


 ぺこっと頭を下げて、吹音は挨拶をする。

 心の中では知り合いとかにあったらとにかくドラマの女優さんみたいな人の真似をするという、光大との約束があり、それを瞬時に思い出した。

 女性は、そんな吹音の態度を見て少し笑い、近くの喫茶店へと招きいれた。


「会社には本当のことを言っておいたから、そんな態度を取らなくてもいいのよ?」

「そっか・・・」


 この女性、翠川冴さん、いつもは「冴」と呼んでいるが、今はそんな呼び捨てにはできない気もした。

 冴さんはココアとコーヒー、あと菓子パンを頼んでくれた。


「彼氏さんとはどんな感じ?生活には支障はないの?」


 冴さんは何を言ってるのだろうか。

 知り合いの前ではちゃんとしてるし、甘えることを控えめにしているから、生活に支障はない。

 そのことを言うと、冴さんは少し驚いた様子で鼻を鳴らせた。


「あ…ちょっと私、電話してくるから。先に食べてて」

「はーい」


 席を立つ冴さん。その行動は少し落ち着きがないが、入れ替わりで頼んでいたものが来ると、吹音は目を輝かせてそれらを頂いた。

 菓子パン、それはパンの中に乾燥させたフルーツの欠片が入れてあり、どれもおいしい。

 しかし、、頼んでもないものが次々に出されてゆき、冴さんが電話から帰ってくるまでに丸いテーブルは菓子パンで溢れた。


「あら、ずいぶんと速いのね」

「これ、こんなにあるの?いっぱい頼んだ?……んですか?」


 いくら冴さんでも、病院のときにお見舞いに来てくれたからって、敬語は外すことができない。

 ところどころ、甘えているいつもの口調になるが、冴さんはそんな吹音を優しい目で見守ってくれている。


「セットメニューよ。私ここが好きで。吹音が元気になって、今のうちに一緒に食べようと思ってね」

「なんで、今のうち?会社の帰りとかでも、駅から少し遠いけどいいじゃん?」


 そういうと、少し冴さんは少し困った顔になった。

 何かを言おうとしているが、言ってはいけないような、そんな迷うが感じられる。吹音は聞いたらいけないこと聞いてしまったと思い、視線を落とした。


「あ、落ち込まないでよ。少し考えたことよ。そうそう、会社は臨時休業みたいな形で休みをとってあるからさ。でも、仕事はあるかね。早く元気にしなさいよ」


 そう言い終えた冴さんは、何故か涙を浮かべていた。

 すばやく吹音はハンカチをポーチから取り出し、差し出す。どうして泣いているのか、吹音には分からない。

 しかし、冴さんにはとある思い事実を抱えている事は、吹音には少し分かった。


「さ、いっぱい食べて。早く元気になって欲しいからね。あ、ハンカチは洗って返すよ」

「ハンカチはいいよぉ。冴さんも食べよう?」


 結局ハンカチはお持ち帰りさせられてしまう事になり、吹音は、久々に合った同期と楽しい時間を過ごした。



 冴さんと別れた後の空はすっかり暗くなってしまった。

 自宅マンションからはすぐだったので、冴さんのお見送りを断り、その場で別れた。

 

 “いつものように”吹音はエントランス、エレベーターを抜けるとドアの前に立った。

 カギを通して家の中に入ると、どこかの遠い記憶が吹音を包み込んだ。


―――夜で、言い争い?


 足を進ませると、ちゃんと片付けていったはずの部屋が、少し荒れている。

 が、瞬きをすると出て行ったときのまま。


―――光大の本、濡らして、怒られた。


 何を思い出しているのか、よく分からなくなり、今の格好のまま、吹音はベッドへと倒れこむ。

 しかし、何かを思い出すように、頭の思考は止まらない。


―――言い争い、喧嘩。


 ぼそりぼそりと、頭の中で何かを思い出すうちに、喧嘩しているのは自分と光大だと気づく。

 今まで何があったのか、自分は知っていると吹音は分かった途端に、昼間の頭痛を越す鋭い痛みを襲った。


「……ッ!!」


 んっと、小さな声を出し、痛みに耐えようとするが今はそうはいかなかった。

 思い出すのと当時に来た頭痛。これは何を意味するのか。そして、病院の時光大が言ってくれた事が、耳元で蘇る。


―――「ごめんね、俺のせいで」―――


 ぐっと我慢していたものが心から出てきて、吹音はそのまま、吐血してしまった。

 まるで、心臓がそのまま出てきた感じがして、吹音はベッドについてしまった血をみて、気を失ってしまった。


―――光大と喧嘩してたんだ、私。癌があるの言ってなかったんだ……。



更新がなくなったかと思ったら、この展開。すみません、放置にしてしまって…。

心からお詫びします。

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