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俺の日常  作者: 宵賀
17/28

よくわからない…   ver.吹音

幼い吹音ちゃんはきっと“私”を使えないので第三者目線でいきますb


 

 朝になって吹音は頭を撫でられて目が覚めた。視界がはっきりとしていないが、目の前には大好きな光大が起き上がる様が見えた。自分も起き上がらなくては……。

 そう思って身を起こそうとすると、光大の手が優しく「まだ寝てなさい」と言ってくれて、吹音はまた目をつぶった。

 眠ることが出来なかったけれど、光大が家の中を歩く音がしたり、少し聞こえるテレビの音、「チン」と朝を教えてくれるトースターの音が耳に入ってくる。


 吹音はそん初めての朝を、日常のどこかにあるのかなぁ…と感じていた。

 昨日から家に帰ってきてから、何か心の中で引っかかる。でもそれはよく分かんなくて、光大に聞きたいけれど聞いちゃいけないような気もして、昨日は言えなかった。


――あ。


 吹音は布団にぎゅっと捕まって、昨夜の事を思い出した。

 もう1回したかったのに、眠くて眠くて何も出来なった。睡魔に先に越されてしまったように思えた。

 ギリギリまで起きてて、ココアを作って…。なしって言われて駄々をこねても構ってくれなくて……。

 こうやって思い出していくうちに、吹音はなんだか悲しくなった。


――もう1回ない?もうない?


 ふと目を開けると、自分の顔を望みこむ光大がいた。優しい微笑で「おはよう」と言ってくれたのに、悲しさはまずばかり。

 よくよく見れば、お仕事にいく格好をしていてもう出る感じがしていた。


「やだ」

「ん?」


 腕を伸ばすと光大は手を取って指を絡ませてくれた。腕を縮めようとすると、ぐいって引っ張られる。

 お仕事…行くのかなぁ。まだ眠いよぉ。


「もう…1回は?」


 まだ言うことを利かない体。吹音は少し困った顔をした光大を見る。


「吹、もう1回ばっかじゃダメだよ?」

「やだ。1回、1回」


 ため息をついて、ベッドに腰をかけてきてくれた。吹音はスーツ姿の光大に擦り寄った。

 擦り寄ると光大は頭を撫でてくれて、「こっち向いて」と言った。


「俺忙しくなるから…」

「………」


 天井をぼっと見ていると、大きな光大の手が視界を塞いで、暗くなった。何か言葉を発しようとした途端にキスをされた。口が少し開いてたからそこから自分よりも大きい舌が入ってきて、自分の舌を追い回す。

 吹音は暗い視界の中で、自分の中に何かが渦巻くのを感じた。濃厚なキスをされて、少し体に重みがかかった。一瞬明るくなったと思えば、アイマスクをされてまた真っ暗。

 光大の手が頬を撫でてくれて、触れられている感覚が下に行くと、渦巻いている何かが大きく暴れだした。


「ふあっ!」


 生暖かい光大の舌が自分の体の上にあると、くすぐったい。吹音はそれを止めさせようとしたら、手をぺろっと舐められて両手を優しく押さえつけられてしまった。

 きっと、片方の手で自分の手が押さえられているのだろう。もう片方の手は服のボタンを起用に全て取られてしまった。


「もう1回?」


 そうやって口を開けると、またキスをされる。嬉しいのだが、何も見えないから少しつまらないし、まだ眠いから眠くなってしまう……。

 ぺろぺろと舐められてゆくうちに、吹音の中にある渦は嵩を増して自分ではどうしようもなくなってきた。


「あっ…いや!」

「吹?」


 ピクっと体を振るわせて、足をバタつかせた吹音を見て、光大は優しくアイマスクを外してくれた。

 目の前にいる光大は、少し目の奥が光っていて何かを期待している……?


「こー…だい?」


 吹音がそう言うと、光大はしかし、何も言わずに、さらけ出されている胸をしまうように寝巻きのボタンを一つ一つつけてくれた。


「お終いね、吹。行ってくるから良い子にしてて」

「分かった…」


 せめてものお見送りとして大好きな彼を追って、吹音はトタトタと少し間隔を開けて歩く。昨夜ピッタリくっつこうとしたら驚かされてぶつかってしまったのを避けているからである。

 玄関で靴を履いている光大の背中。吹音はその背中を見てやけに寂しさを怒りを思い出した。


――なんだろう……これ?


 後ろから抱き付いちゃえー!と思って、手を伸ばそうとしてみるが何故か怖くなった。

 もしかして、会社に行ったらもう戻ってこないのかもとも思った。


「じゃあ、吹。……吹?どうしたの?」


 吹音はなぜか目に涙を浮かべて、頑張って光大に伝えた。

 帰ってくるの?どこにも行かないで、帰ってくるの?と。


「ここは俺と吹音のおうち。帰ってこない訳がないよ。そろそろ時間だ。じゃあね」


 最後にポンポンっと頭を撫でられて、玄関を出て行った。

 吹音はしばらくそこにいたが、彼が戻ってこないことが分かると一人残された家の中に戻った。

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