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俺の日常  作者: 宵賀
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れっつ、おやすみなさぃ......

 しばらくして俺が寝室を見に行くと、それはまぁ…言われたことをちゃんとして自分の机に座っている吹音がいた。特に何も荒れているわけでもなく、ソファーは窓側にそろって置いてある。

 本棚はソファーのすぐ隣に置いてあって、いつでも本が取れる状態。うん、よく出来ているぞ。これはご褒美を上げなくては。

 そう思い、俺はなにやら難しい顔で紙と睨めっこしている吹音に近づく。


「吹、なーにしてるの?」

「うわぁ!」


 足をガクン!と動かして、本当に驚いた様子。俺は睨めっこしていた紙を見ようとすると吹音がそれを勢いよくクシャクシャにした。


「何、その紙」

「紙だよ」

「何の紙?」

「吹音の紙」

「……何が書いてあったの?」

「………」


 しばらく黙っていると「なんも。べぇー」と舌を出して言われた。俺はその舌に誘われたのかのように吸い付く。

 顔を離すと顔を真っ赤にしていて、嬉しがっている様子。


「部屋が綺麗になってたから、ご褒美。よく出来ました」


 頭を撫でてやって、俺はリビングへと向かう。吹音が俺の後ろをついてくるような足音がして、わっと振り返ると正面衝突をした。


「いだぁぁぁ」

「ふふ…ごめんね」


 胸に頭をぶつけただけなのに、痛そうに演技をする。別に痛くないんじゃないの?ってからかってやりたいが、吹音な眠そうにあくびをしていたので言うのはやめた。

 吹音にとってはもう就寝時間なのだろう…まだ9時30分であるが。

 病院では9時には既に寝ていたと看護婦さんに言われたこともあった。


「眠いの?寝ていいよ」

「もぅ1回するー」


 ぎゅーっと抱きついてきて、吹音最大のおねだり。でも、俺には仕事…が。

 今もパソコンを動かして少し電源落としただけなのにメールが3通も来てしまっている。どれも仕事の内容。

 もっと言ってしまえば、前にしたプレゼンの内容が良かったため俺が次のプレゼンも任されたのだ。


「ベッド作っといて」

「分かった!」


 ぱっと俺から離れて、リビングにあるベッドへと飛び込む吹音。でも、ベッド近くに置いてあった携帯電話が視界に入ったのか、それを弄り始めた。

 これでしばらくは時間が稼げる。きっとすぐに寝てしまうだろう。


 俺はカウンターに移したパソコンと向かい合い、プレゼンの内容をまとめる。俺がするプレゼンは会社の水道光熱費とかの金銭関係。節電を心がけたり、自販機は撤去したら?などと言ってみたらそれが通った。来月には撤去される予定。

 浮いたお金は俺たちの給料に割り当てられるからまぁ嬉しいといえば嬉しい。


 カタカタとパソコンのキーを打っていると、いつの間にかリビングの電気が消されていたらしくて、パソコンの上にある電気がつけられていた。

 後ろを見れば、誰もいないベッド……あれ?吹音はどこに?


「はい、ココアー」


 コースターの上にほいっと、吹音が半分ほど淹れてくれたココアを差し出してくれた。

 そして、何か言いたそうにお菓子……。


「お菓子は食べないよ?」

「いらないの?」

「うん」


 寂しそうな顔でお菓子を戻す。本当は眠いだろうに、頑張って起きているんだなーという関心は出来ない。優しさで起きてるのならまだしも、欲を優先しているから良いことでもない。

 俺は「ありがとう」というと、吹音に構わずパソコンと睨めっこ再開。


「ふーーーー…こうだぁいぃぃ」

「ん~?」

「ねむぅーまだ?」

「今日はない。俺が忙しい。今度ね」

「え゛」


 吹音が声とは思えない声で「え」と発音した。一体どこから声を出したのであろうか…。

 後ろでベッドで1人残された吹音がパサパサ、時にはスプリングが軋む音を聞きながら、俺はココアを飲む。構って欲しいと言わんばかりで数分ほど…。俺は無視をしていたが流石にこちらも眠くなってきたので伸びをする。

 そろそろ11時になる。吹音は騒ぎ疲れたのかきっと寝てしまっている。ココアのお代わりを自分で作り、もう一分張り。


「はぁ…長いなぁ」


 作りたて熱々のココアをふぅふぅと冷ますと、それを飲まずにまた打ち込む。自分の部署だけなのに、何かとパソコンを点けっぱなしの人が多いからどこも電気消費が多いのだ。

 スタンバイ状態ならまだしも、普通にONのまま昼に行ったりする。


 ぐちぐちと心の中で文句を言いながらやっとそれを保存して、ココアを飲んだから歯を磨きながら明日の予定を確認して。

 寝る前にも色々とやることがあって、俺は精神的に疲れた気がした。


「あーおわった」


 小声でそう言うと、1人でベッドを独占している吹音を横にずらして俺もやっとベッドに身を沈める。

 俺がベッドに入ったことを肌で感じたのだろう。吹音がむくっと身を起こした。


「おわ……た?」

「うん。おいで」


 半分も起きてない、吹音を優しく包み込み俺は重い瞼をやっと閉じることが出来た。

 途中、吹音がモゾモゾと動いて俺と正面になるように体勢をずらす。


「んん……」

「おやすみね」


 俺は少し目を開けて、安心して眠っている彼女の頬を撫でてやった。

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