れっつ、でぃなー!
少し長い混浴を経て、俺達はお互いにバスローブに包まれながらリビングへと向かった。身体全身が火照っていて上機嫌な吹音は、なかなか俺の腕から離れない。
久しぶりだったから、吹音はもう寝てしまうのではないかと思っていたがまだ元気そうで何よりでもあった。
リビングに入ると、冷たい冷気がすぅっと俺の背筋を凍らせた。
「おっ…さむ!」
「寒いねぇー…ふふ」
さらにギュッと俺の腕にしがみつく。俺はエアコンのリモコンを取り電源を落とした。なんと気温は20℃設定。誰がこんないイタズラをしたのか……吹音しかいないだろうが。
はぁっとため息をついて、俺はソファーにかけてある自分のパジャマと吹音のパジャマを取ってやった。
これでやっとリフォームが出来ると思ったのだが……。
「もう1回」
「え?」
まだし足りない…いや、ヤり足りないとせがまれてしまった。一応パジャマを手に持っているが、どうやら着る気はなさそうだ。
でも俺としては部屋のリフォームをして、ご飯食べて、仕事の残りを終らせて…俺にだって予定はある。ここで2回戦目を始めてしまうと残りわずかな休業が尽きてしまう。
「さっきの良かったからーお願い?」
「だぁめ。俺はお腹減った。」
「吹音食べていいからー」
なんと言う事を言うのだろうか、この子は。自らを差し出すなんて……少し可愛いがそこはぐっと我慢しなくては。
まだわがままが許されるなんて考えてたらダメになってしまう。
「俺は夕食が食べたいの。麺が食べたい。」
頬を親指と人差し指でつまむと俺はパジャマに袖を通す。
「後ろ向いててよ」
「やだ、さっき見た。もう1回!」
「じゃあ別の所で着替える」
「やだー」
手をギュっと掴み、リビングから出させてくれない。
なんで吹音はこんなに欲しがるのだろう……。
「もぉ、さっきも1回って言ってた。全く」
と、吹音を見ようとした瞬間。視線が鎖骨を通り胸へと流れる。
さっきキスマークを沢山つけてやった所が赤く、蚊にさされのように腫れているが今は可愛いピンク色になっている。
「…むぅ」
「いいでしょ?」
俺はついに、負けてしまった。でも、完全に折れたわけではない。
「寝るときになったらね…それでいい?」
「約束ね!」
「はいはい」
やはり、幼い子には俺は弱いのだろうか……。
何かしら頼まれてしまうとすぐに折れてしまうし、吹音の身体が少し目に入っただけで抱きたくなってしまう。
まぁ、吹音の身体にはちゃんと事情があるわけだからそんな日は、キスとかで済ます。
俺はトイレでしぶしぶ着替えることにした。
狭い密室で1人でいることがこんなに静かだとは、あまり思わなかったことが今更感じる。時折吹音の鼻歌が聞こえてやはり機嫌そう。
「幼いままなのかなぁ」
ぼそっと呟いてトイレを後にする。
少し肌寒いキッチンでは麺を茹でている吹音の姿が。
「何作ってるの?」
カウンター席に座って料理を静かに見守る俺。吹音は口を開ける事無く、ラーメンのパッケージを俺に見せてくれた。
…なるほど、麺と言ったら、たまたまそこにあったものを作ったわけだ。
吹音は何かの音楽を聴きながら、楽しそうにラーメンを作ってゆく。
「何聞いてるの?」
「らじお~う!」
イントネーションが、任天堂の“マリオ”に似ているのは間違いではないだろう。
ラジオをイヤホンで聴いている吹音……。てっきり何かの曲とかだと思った。
「きく?」
「頑張ってつくって!」
頭をポンポンと叩いて、俺はラーメン作りを見守る。
10分もしないうちにラーメンは出来あがった。やっと夜ご飯にありつけると思ったが、時間は7時前。少し早いが後々リフォームがあるため別に良いだろう。
「頂きますしようか?」
「うんしよう!」
ルンルン気分でキッチンを抜けてきた…と思えば、上半身はTシャツを着ているが、下半身は下着しかつけていない。そしてエプロン姿…。
何て言えばいいんだろうか。
「中途半端な裸エプロンだな…」
「だって、お湯が跳ねたら熱いから」
「服着て、食べよ?」
吹音自身も、自分の格好に満足してなかったのだろう。俺の言うことをすんなりと聞いてラーメンを仲良く頂いた。




