第五章:現実
−謝らなくていい
「これからも友達」
それはそう嘘じゃないけれどプライドじゃない もう会えないよ・・・−
雨に一晩中打たれた結果高熱を出して寝込んでしまった。
まぁ・・・
当たり前か・・。
母さんはかなり怒りながら俺の看病をしてくれ
少しましになった。
でもまだボ〜っとするし頭も痛い。
2コ下の妹も俺を心配して見に来てくれた。
いつも口うるさい妹も今日は違っていた。
「お兄ちゃん。
どうしてあんな雨の中
傘もささずにいたの?
何かあった?」
さすが妹。
母さんにも同じ質問をされたけど、俺は答えなかった。
やっぱり何かわかるんだろうか・・・?
「お前さ、もし自分の大事な人を失う事になったらどうする・・・?」
頭は少しボ〜っとして
うまく言えたかどうかわからないけど
妹は少しうつむいていた「私は・・・・・ううん・・・
やっぱりよくわからないや。ごめん・・・。」
「・・・ゴホ。
いやいいんだ・・・。」
そうだよな。
わからねぇよな・・・
俺だってわかんねぇよ
でもこれだけはわかる。もう・・・・
もうあの頃には戻れねぇって事だけ・・・・。
2日後
俺はもうほとんど完治していたけど、大事をとって今日はもう1日だけ学校を休む事にした。
学校休むって結構気分
いいよなぁ♪
俺はベッドの上で寝転びながら音楽を聴いていた
その時部屋のドアが開いて目の前には慶と葉月が立っていた。
なぜだかあの時の記憶が蘇る・・・
俺は耳からイヤホンを外してベッドから起きたあがった。
「・・・涼・・すげぇ熱出したってきいて・・・
大丈夫か?」
何だよ。
体調が悪い時でも大声出して、俺にタックルしたりしてくるくせに・・・・。
そんな怯えた目で小さな声で・・・・
まるで慶じゃねぇみてぃだ。
それに葉月だって、妹より口うるさく俺に説教するくせに。
゛傘ちゃんとさしなさい゛とか言うだろ?
なのに、今日は随分
大人しいじゃねぇか。
イライラする・・・・
もううんざりだ・・・
「出てけよ。」
「・・・えっ?」
慶が俺に疑惑の目を向けた。
「出てけって言ってんだよっ!!!
お前らの顔なんか見たくねぇんだよ!
うぜぇんだよ!消えろ!!」
目の範囲にあったCDを俺は手に取り壁に向かって投げた。
CDはパリ−ンという音と共に粉々になった。
「涼っ!話がしたいんだ!」
「話?葉月とめでたく付き合う事になりました〜ってか?
別にど〜だっていいんだそんな事はっ!!」
・・・そうなんだよ
別にど〜だっていいんだそんな事。
慶は俺の言葉に少し
驚いていた。
そうだろうな・・
俺はあの葉月を゛女゛として見るようになった事を慶に言っていた。
その時の慶は少し笑っていて゛そんなもんか〜゛
と言っていたっけ。
だからお前は、俺がこんな風に怒ってるのは葉月と内緒で付き合っていたからととるだろうな・・・
違うよ。
そんな事別に構わなかった。
もちろんくやしいよ・・・けど、それは葉月が選ぶ事だ。
だからいいんだよ
そんな事・・・・・ー
「俺は・・・お前を親友だと思ってた。もう家族だって・・・
慶には何でも話してた。でも、お前はそうじゃなかったんだな・・・。」
慶は大きく目を見開いて目に涙を溜めながら
首を横に大きく振って、必死で訴えていたけど 言葉にはならないみたいだった。
分かってるよ
違うって言いたいんだろ
でも何が違うんだよ・・・もう遅いんだよ・・・
葉月は泣いていた。
俺は呆然と立ち尽くす慶を押し出してドアを閉めた。
それから、しばらくして階段を降りる音が
聞こえた。ー
ー守れるものは一つも ないのかな?
果てしなかった空が今日は低い・・・
明日が見えない
それでも
NEVER MINDー




