第三章:最後の思い出
高三の春−
始業式の朝
空気が重い。
なんなんだ一体・・・
待ち合わせ場所からこの見慣れた桜並み木までの間、俺達は一言も会話を交わしていなかった。
こんな事今までの俺達にはなかったのに・・
いつもの葉月ならこの桜を見てはしゃいでいるはずなのに。
慶か俺かが葉月をからかってパンチラをする事もなく、俺達は歩いていた。
「なぁ!今日さ、始業式が終わったら海にでも行かねぇ?」
そう提案したのは俺だった。
でも提案して良かったと思う。
これが、三人で笑い合えた最後の思い出になったから・・・
始業式を終えて俺達は海に向かった。
でも途中でご飯を食べたり、葉月が買い物をしたりで海に着いたのは
夕方になっていた。
「海だ〜・・・。」
「慶、テンション低くすぎ。」
「人の事言えんのかょ。
大体、葉月が買い物しすぎなんだよ。」
「そんな事ないもんっ!」
いや、そんな事ある。
葉月の買い物で大半の時間を費やしたし
その証拠に葉月の両手は荷物でいっぱいだしな。
海にそんなものは必要ねぇ。
「とりあえず、砂浜に座ろうぜ☆」
俺達は砂浜に腰掛け、
少しオレンジ色に染まり出した海を見つめていた
「今日は来て良かったな。なんかいつもの俺達に戻ってきたし♪」
慶と葉月は゛そうだね゛
と笑った。
「涼っ♪海の水冷たいか確かめようぜ♪」
「おっ!いぃねぇ♪」
そう言って俺らは二人で海に向かった。
でも水の冷たさを確かめるのは嘘。
俺達はこう言って、どちらかを海に落とし
結局二人共海に落ちる。
っというのがいつもの事だった。
今回も結局そうなった。
「冷て〜!!さみ〜!!!」
「ありえねぇ〜!!!!」
言いながらまた海に落とし合う。
「葉月も来いよ〜!!!」
俺がそう誘ってもお前は結局来なかったよな。
でも砂浜に座ってオレンジ色に染まる葉月はすごく綺麗だった。
顔は光に照らされてよく見えなかったけど・・
お前は泣いてたんだな。
でも俺達はそんな事に気づきもしなかったんだ・・




