カランコロンとフラメル
王都の露店通りから1本隣の通りにあるポーション錬金術師の今にも潰れそうなお店。
代々受け継がれた秘伝書を偶然発見し、これで店を盛り上げられると思い中を見ると一言。
【お客様と向き合う】
最初はガッカリして無造作に秘伝書をカウンターに放置する。
陳列を見直していると、久しぶりにカランコロンと扉の開く音が聞こえた。
「いらっしゃい」
ヨボヨボのおばあさんが来店。
「痛みが軽減できるポーションはあるかい?」
「ありますよ。そっちの棚…」
ここでさっきの秘伝書の一節を思い出す。
「ちょっと待っててくださいね。今取ってきますから」
ただ少し日常が優しくなった。
主人公は本当に少しだけ向き合ってみようと思うようになった。
今日は20日。もしかするとあの冒険者が来るかもしれない。
いつものやつまとめておくか。
夕方の閉店間際、カランコロンと鳴る。
「いらっしゃい」
「いつものあるか?」
「準備できてるよ」
いつもよりスムーズな受け渡し。
「また来るよ」
初めて貰ったまた来るという言葉。
今日は少し暑い日。
外は日傘が移動し、気怠げだ。
ちょっとポップでも作ってみようか。
【暑い日は冷た草の塗るポーション】
「うーん」
陳列を路地の窓に面しておこう。
今日はいつものヨボヨボのおばあさんと、その友達のヨボヨボのおばあさんが来店。
「痛み止めあるかな?」
「ちょっと待っててください。これ貼るタイプがありますけど、どこが痛いですか?」
「腰さね」
手は…届きそうにない。
「そしたら飲むタイプの方が良さそうですね」
「いつもありがとう。ベールは膝らしいから貼るタイプがいいか?」
「わたしゃ、飲むのは苦手だ。貼るのにしようかね」
店に会話が増えた。
ある雨の日。
カランコロン。
「いらっしゃい」
「あ、あのお薬、のどいたくないやつ」
小さな女の子が1人。
「これかな」
「それ」
「一人で来たの?」
「お母さんが辛そうだから」
今日は雨だし、客も来ないかな。
「じゃあ一緒にお届けしようね」
【CLOSE】
カランコロン。
「いらっしゃい」
「いつものあるか?」
「今日は早かったね。日がまだ真上だよ」
「ちょっと上手くいってな。それじゃまた来るよ」
今日は少しだけ早く閉めよう。
カラスの鳴き声。
風の音。
花束を持ち、石碑の前へ。
「父さん、母さん。店は何とかなりそうだ」
カランコロン。
「いらっしゃい」
「納品です」
上薬草が来たみたいだ。
「最近、ここへの配達増えましたよ」
「ありがとうございます」
「配達物あったらいつでも言ってください」
カランコロン。
初めての上薬草だ。
カランコロン。
「いらっしゃい」
「……」
強面の大男。
大剣を背負ってる。
「ボンドに聞いてきた。上級ポーションを頼む」
「ああ、ボンドさんのお知り合いでしたか」
カランコロン。
冒険者はきっと冒険が楽しいのだろう。
カランコロン。
「よろしくお願いします!」
今日は王都の薬学部の研修日。
「初めまして、モニカです!」
1週間は賑やかになりそうだ。
カランコロン。
「いらっしゃいませ!」
「あら、今日は店が明るいね」
「ははは、トメさんいつもありがとうございます。こちらは研修生のモニカです」
3日になるが早くも看板娘だ。
今日は店が薄暗い。
カランコロン。
「いらっしゃい」
「お、今日は元気がないじゃないか、あんちゃん」
「ボンドさん…」
モニカのやつ元気でやってるかな。
馬のいななき。
ガタゴト。
カランコロン。
「いらっしゃい…ませ」
「お気にならさず、ただのウインドウショッピングですわ」
カランコロン。
女性向けの商品を増やそうか。
今日は休業。
裏庭にある畑。
スベリラリーフ。
きっとあの女性喜ぶぞ。
カランコロン。
「おみずくださーい」
「はいよ、リリちゃん。お母さんはどうかな?」
「元気!」
カランコロン。
「またここに居たのね。ごめんなさいこの子が」
「いえいえ、ジョアンナさん。リリちゃんはこの店のマスコットみたいなもんですから」
カランコロン。
「あーら、リリちゃん。今日も元気だねー」
「トメおばあちゃん!リリ元気だよ!」
外にバルコニーでも作ろうか。
トントン、カンカン。
カランコロン。
「あんちゃん、なんだありゃ」
「ちょっと思いつきで、はは」
「そうか…あいつに声掛けるか」
「ん?今なにか?」
「いや、なんでもないぞ。とりあえずいつもの」
カランコロン。
「いらっしゃい」
「へー、ここがボンドの言ってた店ね。素敵なところじゃない」
大きな杖。魔女だ。
「何かご入用で?」
「ちょっとね。…ホーリーキープ!」
詠唱?
「これで木が腐れる心配はないわ」
「え、あ、ありがとうございます」
「お礼はいいわ。いつもの薬のお返しよ」
嵐のようだった。
カランコロン。
「いらっしゃい」
「あのー、わたくし、こういうものです」
「ジークリーフ商会…」
最近よく聞く新興商会だ。
「ぜひ、必要な素材があれば我が商会にお任せ下さい」
そうか、ついに…そうか。
カランコロン。
カランコロン。
カランコロン。
「リリちゃん、あそこのお客さんにこれ持ってってあげて」
「ジョアンナさんお手伝いありがとうございます。無理なさらず」
「トメさんちょっと待っててね」
カランコロン。
カランコロン。
今日も店はいつも通り。
今日は王都では珍しい雪の日。
「お願いします!ここで働かせてください」
この店の看板娘が戻ってきた日。
寒いけど暖かな日。
カランコロン。
「いらっしゃいませ!フラメル錬金雑貨店へようこそ!」
今日も笑顔の絶えない雑貨店は夫婦の明るい声が聞こえる。
王歴968年。
人類史上初の賢者の石を生成したフラメル一家の始まり。
著者 リリ・ローリング




