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カランコロンとフラメル

作者: 亜雅沙
掲載日:2026/05/25

王都の露店通りから1本隣の通りにあるポーション錬金術師の今にも潰れそうなお店。

代々受け継がれた秘伝書を偶然発見し、これで店を盛り上げられると思い中を見ると一言。


【お客様と向き合う】


最初はガッカリして無造作に秘伝書をカウンターに放置する。

陳列を見直していると、久しぶりにカランコロンと扉の開く音が聞こえた。

「いらっしゃい」

ヨボヨボのおばあさんが来店。

「痛みが軽減できるポーションはあるかい?」

「ありますよ。そっちの棚…」

ここでさっきの秘伝書の一節を思い出す。

「ちょっと待っててくださいね。今取ってきますから」

ただ少し日常が優しくなった。


主人公は本当に少しだけ向き合ってみようと思うようになった。

今日は20日。もしかするとあの冒険者が来るかもしれない。

いつものやつまとめておくか。

夕方の閉店間際、カランコロンと鳴る。

「いらっしゃい」

「いつものあるか?」

「準備できてるよ」

いつもよりスムーズな受け渡し。

「また来るよ」

初めて貰ったまた来るという言葉。


今日は少し暑い日。

外は日傘が移動し、気怠げだ。

ちょっとポップでも作ってみようか。

【暑い日は冷た草の塗るポーション】

「うーん」

陳列を路地の窓に面しておこう。


今日はいつものヨボヨボのおばあさんと、その友達のヨボヨボのおばあさんが来店。

「痛み止めあるかな?」

「ちょっと待っててください。これ貼るタイプがありますけど、どこが痛いですか?」

「腰さね」

手は…届きそうにない。

「そしたら飲むタイプの方が良さそうですね」

「いつもありがとう。ベールは膝らしいから貼るタイプがいいか?」

「わたしゃ、飲むのは苦手だ。貼るのにしようかね」

店に会話が増えた。


ある雨の日。

カランコロン。

「いらっしゃい」

「あ、あのお薬、のどいたくないやつ」

小さな女の子が1人。

「これかな」

「それ」

「一人で来たの?」

「お母さんが辛そうだから」

今日は雨だし、客も来ないかな。

「じゃあ一緒にお届けしようね」

【CLOSE】


カランコロン。

「いらっしゃい」

「いつものあるか?」

「今日は早かったね。日がまだ真上だよ」

「ちょっと上手くいってな。それじゃまた来るよ」

今日は少しだけ早く閉めよう。

カラスの鳴き声。

風の音。

花束を持ち、石碑の前へ。

「父さん、母さん。店は何とかなりそうだ」


カランコロン。

「いらっしゃい」

「納品です」

上薬草が来たみたいだ。

「最近、ここへの配達増えましたよ」

「ありがとうございます」

「配達物あったらいつでも言ってください」

カランコロン。

初めての上薬草だ。


カランコロン。

「いらっしゃい」

「……」

強面の大男。

大剣を背負ってる。

「ボンドに聞いてきた。上級ポーションを頼む」

「ああ、ボンドさんのお知り合いでしたか」

カランコロン。

冒険者はきっと冒険が楽しいのだろう。


カランコロン。

「よろしくお願いします!」

今日は王都の薬学部の研修日。

「初めまして、モニカです!」

1週間は賑やかになりそうだ。

カランコロン。

「いらっしゃいませ!」

「あら、今日は店が明るいね」

「ははは、トメさんいつもありがとうございます。こちらは研修生のモニカです」

3日になるが早くも看板娘だ。


今日は店が薄暗い。

カランコロン。

「いらっしゃい」

「お、今日は元気がないじゃないか、あんちゃん」

「ボンドさん…」

モニカのやつ元気でやってるかな。


馬のいななき。

ガタゴト。

カランコロン。

「いらっしゃい…ませ」

「お気にならさず、ただのウインドウショッピングですわ」

カランコロン。

女性向けの商品を増やそうか。

今日は休業。

裏庭にある畑。

スベリラリーフ。

きっとあの女性喜ぶぞ。


カランコロン。

「おみずくださーい」

「はいよ、リリちゃん。お母さんはどうかな?」

「元気!」

カランコロン。

「またここに居たのね。ごめんなさいこの子が」

「いえいえ、ジョアンナさん。リリちゃんはこの店のマスコットみたいなもんですから」

カランコロン。

「あーら、リリちゃん。今日も元気だねー」

「トメおばあちゃん!リリ元気だよ!」

外にバルコニーでも作ろうか。


トントン、カンカン。

カランコロン。

「あんちゃん、なんだありゃ」

「ちょっと思いつきで、はは」

「そうか…あいつに声掛けるか」

「ん?今なにか?」

「いや、なんでもないぞ。とりあえずいつもの」


カランコロン。

「いらっしゃい」

「へー、ここがボンドの言ってた店ね。素敵なところじゃない」

大きな杖。魔女だ。

「何かご入用で?」

「ちょっとね。…ホーリーキープ!」

詠唱?

「これで木が腐れる心配はないわ」

「え、あ、ありがとうございます」

「お礼はいいわ。いつもの薬のお返しよ」

嵐のようだった。


カランコロン。

「いらっしゃい」

「あのー、わたくし、こういうものです」

「ジークリーフ商会…」

最近よく聞く新興商会だ。

「ぜひ、必要な素材があれば我が商会にお任せ下さい」

そうか、ついに…そうか。


カランコロン。

カランコロン。

カランコロン。

「リリちゃん、あそこのお客さんにこれ持ってってあげて」

「ジョアンナさんお手伝いありがとうございます。無理なさらず」

「トメさんちょっと待っててね」

カランコロン。

カランコロン。

今日も店はいつも通り。


今日は王都では珍しい雪の日。

「お願いします!ここで働かせてください」

この店の看板娘が戻ってきた日。

寒いけど暖かな日。


カランコロン。

「いらっしゃいませ!フラメル錬金雑貨店へようこそ!」

今日も笑顔の絶えない雑貨店は夫婦の明るい声が聞こえる。




王歴968年。

人類史上初の賢者の石を生成したフラメル一家の始まり。

著者 リリ・ローリング

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