第6話 クソみたいな4人が集結してしまいました
オルファが戸惑った顔でこっちを見ている。
「……本当に、いいの?」
「もちろんだ! 俺たちと一緒に呪いの素晴らしさを説いて回ろうじゃないか!」
そう言うとオルファの曇った瞳がみるみるうちに輝きだした。
「あら、急に態度が変わったわね?」
「なにを言うリーシャ、お前の言うことに今まで間違いがあったか?」
「ふふん、それもそうね! ユウヤもなかなか物分かりがいいじゃない」
単純なやつで非常に助かる。
「おい骸骨。聞こえてるか? こいつは俺たちの仲間になる。もうスケルトンは出すな」
すると——
《はぁ? なんでお前らが命令してんだ?》
《俺はこの女を始末して自由になりてぇんだよ! 邪魔すんな!》
「……じゃ、壊すか」
「だな!」
俺たちが首飾りに手を伸ばそうとした瞬間——
《ま、待て待て待て!!》
首飾りが急に慌てふためいた声を上げた。
《わ、わかった! わかったから! スケルトン出すのはもうやめるから!》
《だから壊すのだけは勘弁してくれ! 頼む!》
「命乞いか?」
「呪いが死を恐れるとか……聞いて呆れますなぁユウヤさん」
「なー!」
《お、俺だってまだ生きてぇんだよ!》
「バカ言うな、俺たちに害なす悪党め。辞世の句を読め人類悪!」
首飾りを破壊しようとしたその時————
「やめてぇえええええ!」
オルファの絶叫が牢内に響く。
「この子の面倒は私が見るから!」
オルファが首飾りを両手で包み込んだ。
「ねぇ、もう呪いは出さないでしょ? 約束できる?」
《え?……あ、ああ、約束しよう》
首飾りがピョンピョンと震え、肯定の意を示す。
「ほら! 約束してくれたわ!」
……いや、俺たちにはこいつの本音が聞こえてるんだがな。
《ちっ……今殺されるくらいなら、しばらく大人しくしてやるか……》
《いつかチャンスは来る……その時こそ……》
ほらね。密かに物騒なことを呟いていやがる。オルファには聞こえていないのか。
「タクヤ、オルファにも言語理解を——」
「まあ、スケルトンはもう出さないって約束してるんだし、いいんじゃないの?」
いいところで、リーシャのアホが割り込んできた。さっきこいつの意見を全肯定した手前、今更ないがしろにするわけにもいかず、
「ぜ、絶対人サマに迷惑かけんなよっ!?」
俺は渋々了承するしかなかった。
「よかったね、ノロ吉くん!」
《……は?》
「今日からあなたの名前はノロ吉くんよ!」
《ノロ吉……? 俺様に何てふざけた名前を……!》
首飾り——もといノロ吉くんが絶句している。
「呪いだからノロ吉。かわいい名前でしょ?」
《よくねぇよ! 俺様にはもっと相応しい——》
「ノロ吉くん!」
《……》
オルファが満面の笑みで呼びかけると、ノロ吉くんは黙り込んだ。諦めたらしい。
「こいつ、なにか根本的にズレてるぞ……」
タクヤが真顔で言った。今更気づいたのか……俺は深く頷いた。
それにしてもこいつ、借金の頭数とはいえ、パーティに入れて本当に大丈夫だったのだろうか?
激しく不安になってきた。
◇ ◇ ◇
街中のスケルトンが、一斉に崩れ落ちた。ノロ吉くんが召喚を止めたのだ。
「「「おおおお!?」」」
新米冒険者たちが驚きの声を上げる。
「祭りも、もう終わりか~」
「もうちょい稼ぎたかったな~」
呑気な声が聞こえる中、オルファだけがノロ吉くんを抱きしめてニコニコしている。
「よかったね、ノロ吉くん……これからずっと一緒よ……」
《……》
ノロ吉くんは無言を貫いた。内心何を考えてるか俺にはもう、丸わかりなのだが。
「……なんか、すげぇの引き入れちまったな」
「俺も少し後悔しているが……借金の頭数が増えるんだ、我慢するしかない」
「……そう、だな」
「……そう、だな」
俺たちが小声で話していると、リーシャがこっちを見た。
「ん? 何の話?」
「「なんでもない」」
◇ ◇ ◇
翌日、俺たちはオルファを連れてギルドに向かった。
「……お前ら、あの『呪われた貴族の娘』を連れてきたのか」
ガロンが難しい顔をしてる。
「呪いは解けました。もう危険じゃないっす」
そう言いつつ、俺はオルファをチラッと見る。危険じゃないかどうかは、別の意味で怪しいが。
「あの首飾りがスケルトン事件の元凶でした。もう悪さしないって約束させたんで、問題ないです」
ガロンがオルファの首元を見て、眉をひそめた。
「その首飾り、一旦預からせてもらう。古い知り合いに安全性の調査を頼む」
「……いや。ノロ吉くんは私の半身」
「お前、その様子だと気づいていないと思うが、『脱獄犯』だぞ? 最低でも懲役30年だ」
脱獄犯?! 懲役、さ、30年!? 借金どころじゃないじゃないか!!!
「……それでも嫌」
もうええて! はよ渡せソレ。ゴリラ様の言うことを聞きなさい!!
ガロンが溜息をついて——俺たちの方を見た。
「お前らがこいつを留置所から連れてきたんだったな。これは脱獄幇助にあたる」
そうじゃん! 言われてみればこいつを勝手に連れ出すのはマズすぎた! なぜ誰も止めない!? くそぅ! ダメだこのパーティ。
「オルファ! 預けろ! 調査終わったら(多分)返してもらえるから!」
「で、でも……」
「頼む! 借金の次は犯罪者とか……これ以上俺たちを汚さないでくれ!」
「この通りだ!!」
ナイスフォローだタクヤ! 俺とタクヤの全力土下座に、ついにオルファが折れる。
「……わかった」
ノロ吉くんがガロンの手に渡る。
「よし。じゃあオルファ、お前もこいつらと一緒に養成所に入れ。脱獄の容疑も俺がなんとかしといてやる」
「……ありがとうございます」
オルファが小さく頭を下げた。声に覇気がない。完全にノロ吉くんロスだ。
「……問題児がまた増えたな」
ガロンが小声で呟いた。同感だ。
◇ ◇ ◇
養成所の寮。俺たちは四人で集まってた。
「これで四人パーティ結成だな」
「ようこそ! 地獄の債務者パーティへ」
タクヤが現実を突きつけてくる。
「わ、私のせいじゃないわよ」
リーシャがそっぽを向く。今となってはこの対応、もはやかわいくすら感じるね(?)
「……」
オルファが黙ってる。俺は声をかけた。
「どうしたんだ?」
「……別に」
そんなにノロ吉くんを没収されたのがショックだったのか?
「……ただ」
「ただ?」
「……ひとりじゃないのも、悪くないかなって」
無表情のまま、そう言った。
「……」
——そういえば孤独なんだったな。あまりに破天荒な癖のせいで忘れていたが……ま、根はいい奴なのかもしれない。厨二病で呪いオタで……属性盛りすぎだけど。
「改めてよろしくな、オルファ」
「……ええ」
——こうして、問題児パーティが正式に結成された。
ケモミミ用スキルが初日で無駄になったバカ、タクヤ。
魔力制御が全くできない厄病神のバカ、リーシャ。
実は厨二病で呪い装備しか愛せないバカ、オルファ。
そして――スキルで時間を止めても動けないお茶目な俺、ユウヤ。
……うーん、前途多難!




