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第13話 胡散臭い司教がやってきました

「今日のコボルト、なんかやたら強くなかったか?」


討伐クエストからの帰り道。俺はふと疑問を口にした。


「ああ、コボルトといやぁスライム、ゴブリンに次ぐ初心者用の雑魚枠なんだがな」


タクヤも同意する。


「最近私たちが戦うモンスターって、結構な確率で強いの多くない?」


リーシャが腕を組んで首を傾げた。


「……それ、私も思ってた」


オルファまで頷いている。


「だよなぁ~。運が悪いのか」

「あんたたちバカ二人の日頃の行いよ」

「「んだとぉ~?」」


だが、まぁ否定はできん。俺たちがこれまでやってきたことは決して褒められたものじゃないしな。酔っ払って全裸で逮捕されたり、麦畑を全焼させたり、ガイコツ騒動の原因を引き入れたり……


う~ん、やっぱ日頃の行いのせいなのかもしれん。


そんなことを話しながら、俺たちはギルドへと歩いていった。




◇ ◇ ◇




翌日。養成所の講義室。


「あなた方は神を信じますか?」


——うへぇ、また変なのが出てきたな。


教壇には、なにやら胡散臭い怪しげな男が立っていた。ローブを纏った、いかにも聖職者って感じの風貌。だが、その目は妙にギラついてて、正直あんまり近づきたくない雰囲気を醸し出してる。


「紹介しよう、こいつは俺の古い知り合いのエルヴィンだ。このウィステラの街で司教をやっている」


ガロンが説明した。


——げぇ~。


俺とタクヤは無言で目を見合わせてゲンナリした。宗教系ってだけで警戒してしまうのは、前世の習性だろうか。勧誘やら募金やらでめんどくさいことばっかだったからな。


しかも異世界ものといえば、大体教会は悪いやつがセオリーだ。神の名のもとに民からお布施を巻き上げて、裏では悪事を働いてるパターン。関わったら骨の髄までしゃぶりつくされるに違いない。お~コワ。


……とはいえ、あのゴリラの知り合いならそんなやばい奴ではないか。ああ見えてここのギルマスだし、元Sランクの冒険者だしな。


「今日はエルヴィンにアンデッド系との戦い方の授業をしてもらう。お前ら耳の穴かっぽじってよ~く聞いとけよ」


ガロンが俺たちを見回して——ニヤリと笑った。


「とくにそこのバカども。あれ、なんだっけ……え~と、そうそう、『冥府の債務者』、だっけ? かっこいい名前だな!」


——くそぅ! わざとらしく煽ってきやがるあのクソゴリラ。


周りの養成所生どもが爆笑してる中、俺は歯ぎしりした。タクヤも同様に悔しそうな顔をしてる。


ただ、オルファだけはなぜか自慢げな表情を浮かべてた。こいつには皮肉が通じてないらしい。




◇ ◇ ◇




エルヴィンの講義が始まった。


「アンデッドを倒すには、神聖魔法やスキルしか効果がありません」


淡々とした口調で説明が続く。


「最下位であるスケルトン程度なら普通の武器でも倒せますが、再生を繰り返すグールや、そもそも物理攻撃が効かないレイス類なんかは、神聖系の攻撃しか打つ手がありません」


ふむふむ。まぁ、そりゃそうだろうな。アンデッドに物理が効かないのはゲームでも定番だ。この程度のことならタクヤに聞かずともわかる。


「しかも、やつらは群れで現れることが多いので、しっかり対策しておかないと簡単に命を落としてしまいます」


エルヴィンがニコリと笑った。なんか、笑顔がそこはかとなく怖い。


「あと、死体に取り憑いて仲間を攻撃してくるタチの悪いやつも大勢いるんですよ」


——うわぁ、それは嫌だな。


「元仲間」なんて、死んで「敵」ってわかってても攻撃しにくいだろうに。アンデッド系か~。なるべく関わりたくないものですね。


「なので、今回は最低限の自己防衛のためにも、神聖魔法の基本である『ターンアンデッド』を習得しましょう」


てなわけで、俺たちは司教に教えてもらってスキル習得することになった。


——が、ここで意外な事実が判明。


「『冥府の債務者』の中ですと、聖属性の適性があるのは……ユウヤくんとタクヤくんだけですね」


エルヴィンが何やら特殊な魔道具(?)を通して言った。


「つまり女性陣は習得できないと」

「その通りです」


……普通逆なんじゃ? 清らかな乙女とかそういうのが聖属性を持ってそうなもんだが。


とはいえ、こいつは都合がいいぞ!?


俺とタクヤは顔を見合わせて——ニヤリと笑った。


「へぇ~、リーシャさんは聖属性ないんスか~」

「これからは俺たちにも頼らざるを得ないですねぇ?」

「ま、俺らは選ばれし者だからな!」

「落ち込む必要はないぜ?」


自慢げに煽ってやると、リーシャの顔が見る見るうちに赤くなっていく。


「う、うるさいわね!! 別にいいわよそんなの!!」


キィキィと騒ぎ出したリーシャを眺めながら、俺は心の中でガッツポーズをかました。


ははは。愉快愉快!




◇ ◇ ◇




その後、実践練習ということで、俺たち養成所生はゴリラ教官と司教に連れられ、この街の教会にやってきた。


「「で、でけぇ……!!」」


俺とタクヤの口から感嘆の声が漏れる。


目の前にそびえ立つのは、アホみたいにでかいヨーロッパ式の巨大建築物。白い石造りの壁に、高くそびえる尖塔。ステンドグラスの窓が陽光を反射してキラキラ輝いている。


これには流石の俺も仰天。前世で見たどの教会よりもデカいんじゃないか? 俺たちは圧倒されて、しばし呆然と立ち尽くした。


「あんたたち、なに震えてんのよ?」


リーシャが呆れた顔で言った。


「まさか初めて見たの? この国の国教なんだから、教会くらいよく行くでしょ? だいたいの子は洗礼や名付けもしてもらうし」


はえ~そうなんか。


当然、異世界転移組の俺たちはそんな風習など知らん。これがこの世界の常識ってやつか……世間は広いね。


中に入ると、さらに圧巻だった。


壮大な祭壇。天井まで届く豪勢なパイプオルガン。荘厳な雰囲気が漂う空間だ。なんかもう、異世界ファンタジーって感じがビシビシ伝わってきてちょっと楽しい!


「儲かってんなぁ~」


俺は思わず呟いた。いや、不謹慎なのはわかっているんだが……こんだけ豪華な建物建てられるってことは、つまり、相当な寄付金が集まってるってことじゃんね!?


「確かにぃ……」


リーシャが衝撃を受けた表情で同意した。


なんて顔しやがるんだお前。こいつまさか冒険者やめて神職につくとか言い出さないだろうな? 銭ゲバのリーシャさんならありえそうで怖いんですけど……


てくてく歩いていると、急に司教が足を止めた。


「こちらです」


案内されたのは——教会裏の共同墓地だった。


かなり広い。古びた墓石が立ち並んで、なかなか雰囲気がある。薄暗くて、空気がひんやりしてて、なんつーか……"出そうな感じ"がビンビンしてまんなぁ。


ていうか、なんでここに? まさか……


「お察しの人もいるかもしれませんが」


エルヴィンがニコリと笑った。


「今からここでアンデッドを出しまーす!」


——やっぱりかぁぁぁ!!


司教はなにやらワケのわからんアイテムを取り出した。骸骨の形をした、薄気味悪い置物みたいなやつだ。


ふと隣を見ると——案の定、オルファがキラッキラした目で釘付けになっていた。うちの呪いコレクターは、いつだってブレない。


「もちろん最低レベルのグールしか出しません。私やガロンもいるので、死ぬことはありませんが……」


エルヴィンの目がギラリと光った。


「油断して噛まれでもすると、正気を抜かれて"酷い目"に遭いますよ?」


不穏な笑みを浮かべながら、手元のアイテムが嫌な光を放ち始める。


すると——


土の下から、ゾロゾロと這い出てくるものがあった。


グール。腐りかけた肉体を引きずる、前世で言うところのゾンビみたいな魔物だ。臭いし汚いしグロいしで、この前のスケルトンとは大違い。


「うげぇ、キモっ」

「臭えええ!!」


俺とタクヤは思わず嗚咽した。


「気持ち悪いし、とっとと倒しちまおうぜ!」


俺は習得したばかりのスキルをすかさず発動する。


「『ターンアンデッド』!」


手のひらから白い光が溢れ出て、グールを包み込む。


光に触れたグールは——断末魔の悲鳴を上げて、塵のように消えていった。


「「おおおお!!」」


俺たちは歓声を上げた。すげぇ、一撃で倒せた。これは楽しい!


「俺もやるぜ! 『ターンアンデッド』!」


タクヤも続く。次々とグールが浄化されていく。


後ろでリーシャがキャーキャーとやかましく騒いでたが、オルファはなんだか落ち着いている様子だ。意外とこういうの平気なのか? ……呪いに続き、アンデッドも守備範囲だとしたら相当厄介な性癖だぞ。


その後、なんやかんやしてると、あらかた倒し終わった。


「ふぅ、案外楽勝だったな!」

「神に選ばれし俺たちなら当然の結果だな!」


俺とタクヤは大袈裟にハイタッチを交わした。


——その時。


「さぁ子供たち、ここからが本番ですよー!!」


エルヴィンが嬉々とした声で叫んだ。


手元のアイテムの光がさらに強まる。


数秒後。


——冗談みたいな数のアンデッドたちに墓地は埋め尽くされた。


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