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第10話 小金持ちになりました

戦闘が終わり、俺たちはゴブリンキングの残骸を確認した。その中に、一振りの剣が残っていた。そこはかとなく強そうなオーラを放つ、黒い剣。


「お、その剣かっこいいな」


俺は素直に思った。ビジュが好みだ。


「……ええ」


オルファの目がキラキラしてた。


「そんなに欲しいならに嬢ちゃんにやるよ。戦利品だ」


バルガスが言った。


「……! いいの!?」


オルファの表情が、今まで見たことないくらい輝く。


そして——


「この禍々しさ……このフォルム……最高……!!」


剣を抱きしめて悶え始めた。まーた例のスイッチでも入ったのか? 最近は大人しくて可愛いヒロイン枠だったのに。


「てかこれ、まさか呪われた武器とかじゃねぇだろうな?」


オルファの嗜好を考えると、可能性は非常~に高い。


「……嫌な予感しかしないわ」


あのリーシャも同じことを考えていたらしい。これはまずい、が……まあ、今はいいか。とりあえず大物に勝ったんだしね!



◇ ◇ ◇



街に帰還した俺たちは、実習完了の報告を済ませた後、いつものように酒場で打ち上げを始めた。今回は先輩方が受けたクエストだったのに報酬は山分けだった。気前がいいねぇ!


「「「かんぱーい!!」」」


ジョッキがぶつかり合う。ロックとゴードも一緒だ。バルガスとミラさんは報告があるとかでゴリラの部屋へ行ったらしい。


「いや~、お前らやるじゃねぇか!」

「ゴブリンキング倒すとか、新人のガキとは思えんぞ!」

「見事だった!」


ムッフーー! 俺今、どう見ても輩の、あのゴリマッチョたちにチヤホヤされている!? これは……なかなか悪くないっ!


「そういや先輩たちは、クソゴリラ——じゃなかった、教官とどっちが強いんですか?」


ずっと気になってたたんだよね〜筋肉ダルマ同士の戦力ランキング。


「ガロンさんか? 俺たち三人でかかっても十秒ももたずに負けるだろうな。それも魔法なしで、だ」

「マジかよ……」


そういや、あのゴリラの本職は魔導士だったな。いまだに意味わからんが。


「あの人、ああ見えて元Sランク冒険者だからな。今は引退してギルマスやってるけど」

「Sランク……」


おい見直したぞ、ゴリラ。やるじゃないか。


「そういやお前ら、今日の戦闘でレベルもかなり上がってるんじゃねぇか? 受付の魔水晶で見てみろよ」


たしかにィ! 俺たちは魔水晶の元へ駆けつけた。


「どれどれ……」


手を置いて、ステータスを確認する。


「うおおおお! いつの間にかレベル12になってんじゃん!」

「俺は……11か」


タクヤが悔しそうな顔をした。


「これが才能の差というやつだよ、タクヤくん」

「くっ……!」


煽り合戦開始だ。


「全く、バカが忙しいわね……」


リーシャが呆れている。


「そういうお前はどうなんだよ?」

「私? 14だけど」

「「……」」


俺とタクヤは絶句した。


「こ、こんな屈辱初めてだ……」

「くっ……殺せ!」

「ふふん」


リーシャがドヤ顔を決めた。


「私は……13」


オルファが微かな声で呟く。


「お前もかよ!!」


こんなにも逞しい俺たちなのに、女性陣には完敗だった。



◇ ◇ ◇



同じ頃、ギルドの奥。


バルガスとミラが、ガロンに報告していた。


「——というわけで、ゴブリンキングが出ました」

「ゴブリンキングだと……? あんな場所で?」


ガロンが眉をひそめた。


「はい。焼き払った巣の奥から突然。出る時に確認はしたはずなんですが……」


ミラが不穏な顔で説明する。


「それで、あのバカどもは?」

「……撤退を指示する前に、突っ込んでいきました」

「はぁ……」


ガロンが深い溜息をついた。


「でも、見事に倒しましたよ。リーシャの魔法とオルファの剣技、それに男二人の連携……」

「正直、驚きました。あいつら、ああ見えてなかなか優秀ですね」


バルガスが言った。


「……そうか」


ガロンがゆっくりと腕を組む。


「だが、無茶は無茶だ。今回はお前らがいたから良かったものの」

「はい。しっかり説教しておきました」

「ご苦労だった」


二人が去った後、ガロンは一人呟いた。


「……問題児どもめ。また無茶しやがって」


だが、その口元にはかすかな笑みが浮かんでいた。


「まあ、ポテンシャルはあるってことか。……しっかり鍛えてやらんとな」


窓の外では、酒場から騒ぎ声が聞こえてくる。


問題児パーティの、新たな一歩が刻まれた夜だった。



◇ ◇ ◇



日曜日。


この世界にも休日という概念は存在する。週休一日が基本らしい。冒険者は自由業だから関係ないが、俺たち養成所生は前世でいう月曜から土曜まで授業がある。夕方からは、いまだにドブさらいのバイトに明け暮れてるし。


……なんでファンタジー世界に来て、前世よりブラックな環境なんだよ。


まぁいい。今日は貴重な休みだ。ここ最近、授業がない時は討伐クエストばかり行ってたからな。「本当の休み」は久々だ。朝からギルドの酒場でタクヤとだべってた。



「やっぱ休日はいいよな~」

「だな」

「今日はあのゴリラの顔を見なくてすみそうだぜ」

「聞かれたらまたどつかれるぞ」


別にいいだろ。休みなんだから細かいことは気にしな——


「おい、お前ら」


もー……勘弁してよねぇ!?

振り返ると教官のガロンが立っていた。そうか。よく考えればコイツ、ここのギルマスなんだった……


「朝っぱらから飲んでんじゃねぇよ」

「休みなんで~」

「まぁいい。ちょうどよかった、話がある」


ガロンが俺たちの向かいに座った。なんだ、説教か?


「この前のゴブリンキング討伐の件だが、特別報酬が出ることになった」

「「……なに?」」


俺とタクヤは同時に聞き返した。


「バルガスからの報告で、ほとんどお前らの手柄だってことがわかったし……ちゃんとガキどもにも相応な報酬を出してやってくれって頼まれてな」


——バルガスさん!! あんた、めっちゃええ人ですやん!!


「で、その額だが——三百万リーフだ」

「「さ、三百万!?」」


俺たちは同時に立ち上がった。


「マジか!? マジなのか!?」

「ついに来たぜ! 俺たちの時代がよォ!!」

「まあ落ち着け。報酬はパーティメンバーが全員揃ったら受付に取りに行け」


全員揃ったら? ふむ。つまりリーシャとオルファも呼んでこないとな。


「タクヤ! 行くぞ!」

「おう!」


俺たちは弾かれたように酒場を飛び出した。

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