EP4:渚で騒げやオンナたち
◆閑話休題!◆
……フィサリーたちが帰路に着く前、リゾート地であるサルタ・コスタで何があったのか?
気になる方もおられるはず、振り返って見てみよう。
さて、彼女たちは何をしていたのか。
まずはビジネス街を物色する。
そこで何が流行っているか、どんな水着などが売られているか、それを確かめたかったのだ。
無論、おいしいグルメも堪能する……。
とは言っても、食い意地が張っているようなのは、彼女たち4人の中では、赤髪ポニーテールのハンナくらいだ。
「串焼きだよ〜! ガレットもあるよ!」
「言い値で買いますぅー!」
白い建物や地面に囲まれた、美しく整えられた街中で。
機嫌の良さそうなキッチンカーの親父と対面する、赤髪のハンナ。
頼まれてもいないのに、ハンナは大喜びで長い財布を開けて、フィサリーの分も食べ物を買って恵んでやる。
彼女が食べないのなら、自分か、カオルコか、アガーテか……。
とにかく誰かにおごってあげたい、と、そう考えた。
「ほんと色気より食い気……」
「なんか言ったかァ〜〜? 女の子たるもの、おしゃれも、恋も、グルメも嗜むんよ」
「そうではあるけどぉ」
串焼き肉を完食してから、ハンナは無理矢理、余計なことを言ったフィサリーの口に、焼き菓子・ガレットを突っ込ませて静かにさせる。
アガーテとカオルコが苦笑いする中、フィサリーは渋々、少しずつ食べた。
◆
時間が許す限り遊ぶ!
……そういう約束になっていた。
「飛ばすぞーッ」
食後の運動がてら、砂浜で四輪バギーに乗ってはしゃぐ女たち。
カオルコはフィサリーの運転のもと横にまっすぐ、アガーテはハンナに運転を任せ斜め上下に。
それぞれ両手を広げ、言葉にしがたいほどの喜びを表現した。
超刺激的!
心地よい風!
ほとばしって飛び散る汗!
そして調子に乗りすぎて、グロッキー……。
◆
気を取り直して、今度は更衣室だ。
海で水泳や、ジェットスキーにスキューバダイビングなどを楽しむのだ。
ビーチまできた以上は、海水浴をしなくてはもったいない。
砂の城だって建ててやる、と、そう思っていたのだ。
少なくとも、フィサリーは。
「可愛いわねサリー! 私それの黒と紫のやつ持ってるわよ」
洗練されたムードを漂わせるアガーテは、暖色系のシンプルかつかわいらしいビキニを。
ハーフツインの髪型とも、噛み合っている。
「に、似合ってるぅ?」
照れ臭いカオルコは、巫女装束をモチーフとした東洋風のビキニを着用。
長い半透明の袖や、赤の差し色などがそれっぽく見栄えもよい。
「イケてるじゃん」
自信満々のハンナは、薄い黒色でパレオ付きの水着を着用。
この面々の中でも彼女はとくに背が高く、豊満で……色々と規格外であった。
威風堂々としている姿は、みずみずしさと格好良さ、名だたる芸術家の作った彫刻めいた美しささえ、周りに感じさせた。
「もっと露出エグいのあったんだけど、自信なくってね……」
最後にフィサリーは、水色を基調とする可愛らしく爽やかなビキニだ。
模様はチェック柄で、半透明のカーディガンと一体化している。
蝶のモチーフまで配されており、元はグラビア撮影用のものを転用した……と、思えなくもない印象を、一同に与えた。
だが、紛れもなく、元から彼女の私物だ。
「この蝶々のサンダルとか壊しちゃったら、弁償してもらいますからね。そんなことより……」
ハンナたちをじっくりと眺めながら、フィサリーは「むふーん」、と、鼻で深呼吸して笑う。
「このメンバーみんな、スタイル抜群じゃないですか? ペチャパイが1人もいないんだもの」
「私もだけど……」と、フィサリーは小声で付け加える。
ギリギリ失言ではあったが、しかし、なんだかんだで付き合いの長い3人は許してやった。
そもそも彼女がそう思うのは、当然のことであり、事実だからだ。
「あんた、あけすけになったよなー。誰に似たの? ジョナサンか? あたし?」
「そ、それはー……へへ」
などと、ロッカールームでじゃれあっていた彼女たち4人は、ついに水着姿で白い砂浜へと飛び出す。
ビジュアル面の良さもあり、先に遊んでいた観光客たちの注目を集めた。
先刻、ここを台無しにしようと襲ってきた魔物の群れを全滅させた後なのだから、なおさらだ。
ナンパは当然お断りしたし、準備体操をやってからバナナボートにも乗ったのである。
「あはっあはっ……こんなん買っちゃった。買ったからには、バキュウウウウン」
「やったね!? 先輩だからってぇ!」
土産物屋で購入した水鉄砲で早速遊ぶカオルコと、素手で水をかけた後同じく水鉄砲でやり返すフィサリー。
「遊びも修行のうちさぁ」
「ビッグウェーブよー!」
サーフボードを乗りこなし、海のうねりにも乗ってみせる、赤髪のハンナと金髪のアガーテ。
2人がサーフィンで遊んでいる傍ら、カオルコとフィサリーは海の中に潜って魚たちと戯れる。
そこは日光が海面から差し込み、空の色を反射する青の世界だ。
海の脅威・毒持つ刺胞生物クラゲも紛れており危なかったが、意外にも刺されずに済んだ。
「ぷはーっ! しょっぱーい」
「そんなサリーも綺麗だ」
安全のため、岸まで泳いで移動してからの一幕。
フィサリーの青い髪が、海では保護色に……というわけでもない。
濡れて多少乱れてもあなたは美しかったという旨を、カオルコはフィサリーへと伝えて抱き寄せた。
断じて、いやらしい意図はなく、あくまでも友情によるもの。
サーフィンを終えたばかりのハンナとアガーテがのびのびと戻ったが、この2人はあらぬ方向に受け取ったか、二度見した。
しかし、休憩のために、陸へ上がった際には、もう気にしないという寛大さを見せたのだった。
◆
「ねーねー」
今度は年甲斐にもなく、砂遊び。
サンオイルの塗り直しも欠かさない。
その最中、年上3人のサンドアート作りのためににいじられてしまうフィサリー。
案外、乗り気というか、楽しげだった。
顔より大きく盛られるとは、こういう気分なのだと、貴重な体験にもなったからか?
「地上絵!」
「コンドルは有名だけど、ペンギンのやつはないよアガーテ」
フィサリーなら勝手に抜け出してくれるから大丈夫、と、彼女をよそに、アガーテら3人が戯れる。
このドラグリア星と、鏡合わせの関係にある星には地上絵があるらしい。
なお、フィサリーはアガーテとハンナが絵を描いて遊んでいる間に、カオルコが助けてやったのだとか。
「私のお城完せーいッ」
「やるね、フィサリー。今度はホンモノ建てちゃいな」
「やだなー! カオルコさんってば、お世辞はやめてくださいよ」
予定通り、砂の城作りも行なった。
最初は1人でやっていたのが、近くでゾウやステゴサウルスの滑り台を作っていた子どもらも参加。
ビーチに居合わせた大人と子どもが本気になった結果、本格的な砂の城が建てられてしまった。
「バルジアの古城くらいあるな……」
「大げさだってハンナ!」
そのハンナが、「サンオイルを塗り直しておくれ」と、わざとらしくフィサリーに依頼。
するとなぜか、カオルコも便乗し出したため、この4人はビーチパラソルとシートを借りて休憩する。
「……朝っぱらから大変だったでしょー? こうやってガス抜きしとかないと、もたないよ」
「へへっ、ステキな提案をしてくださってありがとうごぜぇやす……」
媚を売るわけではないが、下手に出ながらカオルコに日焼け止めを塗るフィサリー。
どこかを触って欲しそうにしていたカオルコだが、センシティブな気持ちになったフィサリーも、その場はやめておく。
この時、心と衝動への抑制が効いた自分自身を「えらいっ!」、と、鼓舞したらしい。
「あたしさあ、フィサリーには、ドンドン階級上がってきて欲しいんだよね」
「2年目過ぎたのよね? インターンやってた頃も含めて今、カッパーなんだから、それだけでも大したものよサリー」
「そ、そうですか!? アガーテさん、ありがとうございます!」
上の階級にいるものとしてフィサリーを最大限褒めながら、アガーテはさりげなくハンナの大きな胸にもサンオイルを塗ってやる。
ハンナのほうも、アガーテが抜け目なくやってくるのを想定済みで、楽しみにしていたゆえに怒らなかった。
「早くしてくれなきゃ置いてっちゃうぞ」
頑張る後輩が言い返してくれるのを期待して、赤髪の先輩女がわざとらしく笑って煽る。
その後輩というと、「ふふっ」と微笑んで怯まない。
「何の、逆に出世しまくって、蹴落としてやるんだから。そしたらハンナたちを毎日こき使ってあげる!」
「ははっ、サリーは生意気なくらいでいい!」
「よくぞ言った! あとで先輩たちの怖さ、分からせてあげる!」
冗談を交わして笑い合う4人。
うっかり、フィサリーの手が滑ってしまい際どいところに……。
しかしカオルコは許した。
思わず青髪の彼女は照れ笑い。
「あたいのもすごいんだよ。……おほん。また、今日みたいに遊んでくれるかな」
「もちろんですよカオルコさん。いつでもご一緒させてほしいくらいッ」
それからフィサリーたちは、もうしばらくビーチで遊んで過ごすのだった。




