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金の破魔矢

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

多分、昔からの癖です。

日本の神様八百万。どんなものにも神が宿ると考えるのが人間の神道の考え方である。だからこそ、心内でついついお気に入りのものに話し掛けるという私の癖がある。


両親と旅行に行って破魔矢を購入した。何でもこの破魔矢、特級品であるらしく、一度購入したらば返納の必要が無いらしい。という事は、生涯ずっとこの家にいらっしゃるという事である。

破魔矢は儀礼に準じて玄関に置かれる事になった。矢の切っ先が家の入口に向けられているのを見ると、全ての災厄を撃ち落として下さる様で、安心した。

――我が家にお越し戴いて、誠に有難う御座います。返納の必要が無いとのことなので、末永く、我が一族が潰えるまで、宜しく御願い申し上げる。

そしてどうか、我が家に平穏を賜らせて戴きたい。――

黄金の矢は何も答えなかった。物である以前に、口が無いので当たり前である。けれども剥き出しになった指先にぐるりと風が纏わり着いた気がした。丁度私の手を握り込む様に。

私がこう願ったのは、父が病気になり、母が親族のいざこざに巻き込まれ、私がお世話になった職場から転勤を仰せつかったからだった。

ただ平穏に、何事もなく生きることがそれ程罪深い事なのか。安らかに眠る事がそれ程難しい事なのか。人によっては難しいのかも知れないが、私はその日々を取り戻したい。

黄金の矢に願ってから、日々は少しづつ改善していった。治る見込みが無いと絶望していた父の病気が僅かながら改善した。親族同士のいざこざが落ち着いて縁が切れた。私も新しい職場で試行錯誤しながらも何とか生きている。

この矢がお越しになってから、少しづつではあるが、運気が好転した。平穏な日常を取り戻しつつあった。

だからまた玄関の前に立って礼を申し上げる。

――貴方がお越しになってから、少しづつではありますが事態が好転しております。毎日、毎日、私達の厄を撃ち落として下さり、本当に頭が下がる思いで御座います。

けれどもまだ万全では御座いません。末永く、どうか我が一族をお守り下さい。――

するとまた指先に風が絡む。それはまるで『お前の願いを受け取った』と仰る様に。


――おはようございます。そして今日も宜しくお願いします。

――おやすみなさい。本日も平穏無事に終わりました。

気に入ったものがあると、内心話し掛けてしまうんですよ。今も昔も。


返納の必要がないって事は、見守る方が変わらないという事。過去も未来もずっと変わらず知っているという事。これ、強みだと思ってるんです。


だからきっと今日も話し掛けてしまいます。

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