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恐怖耐性ゼロの転生葬送師は美形達に甘やかされる※接待です。  作者: はにか えむ


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35.襲撃再び

 今日は何も無い休日だ。久しぶりにウォーレンとゆっくり話す時間が取れた私は有頂天だった。

「最近は忙しかったもんな」

 私の言葉にウォーレンが笑う。私の頭を撫でながらウォーレンも同意を示す。

「忙しいという言葉で片付けていいのかは分からないが、確かに慌ただしかったな」

 彼は私の頬に口付けると、疲れたような顔をしていた。


 私は葬送に出向くだけだが、聖騎士には他にも色々な役割がある。きっと疲れているのだろう。私は膝をポンポンと叩いて彼を誘導した。私の膝を枕にしてウォーレンがため息をつく。

「早く教団の件が片付いて欲しいよ」

 それはみんなが思っていることだ。私も早く何の心配もせずに街を歩きたい。

「王子がきっと何とかしてくれますよ」

 そう言うと、ウォーレンは不機嫌になった。

「アーリンは王子と仲が良すぎる」

 そう言って、ウォーレンの頭を撫でている指を弄び始めた。

 拗ねているウォーレンは小悪魔的な可愛さだ。

「王子はアレだよ、なんて言うか兄のような弟のような、好敵手のような?気が合うだけだよ」

 そう言うが、ウォーレンはなかなか理解してくれない。

 

 最近ウォーレンより子供たちを優先しすぎたようだ。私はいつもウォーレンの示す愛情に甘えすぎているのだろう。もっとちゃんと恋人らしい振る舞いをしないと駄目だなと思う。ちゃんと仕事以外で一緒にいられる時間を作ろうと決めた。

 今は護衛は部屋の外に待機してくれてるし、周りにも気を使われているのだろう。もしかしたらウォーレンが何か言ったのかもしれないが、それでも反省した。

 

「アーリンが子供たちの心配をしているのは分かっているよ。でも休日全部子供たちに使うのは無いだろう」

 彼も子供たちを心配しているから、きっと本心では無い。ちょっと拗ねてみたかっただけなのだろう。私の髪を弄びながら、ウォーレンは訴える。

 なんて穏やかで幸せな時間だろうか。

 

 

 

 しかし、平和というものはいつも簡単に崩れ去る。私たちに緊急召集がかかったのだ。

 今日の護衛とともに呼び出された場所にいくと、葬送師全員と六翼が勢ぞろいしていた。

 その中心にいるのは、当代神殿長とヒューバート王子だ。

「全員揃ったな。皆も教団――天上のしもべのことは知っているだろう。昨日南の神殿の葬送師が一人、教団の関係者と思われる人間に拉致された」

 その場にいたみんなは息を呑んだ。とうとう彼らは普通の葬送師に手を出してきたのだ。

「今日これから全ての神殿が厳戒態勢に入る。葬送師は絶対に神殿から出るな」

 事態はかなり大事だ。もう教団が捕まるまで神殿を出られないかもしれない。

「我々は拉致された葬送師の奪還に集中する。六翼達は絶対に葬送師を一人にしないように」

 

 

 

 話が終わると、神殿は宣言通り厳戒態勢に入った。私たちはその間、他の葬送師達とお茶会をしながら過ごす。それ以外にすることがないからだ。それになるべく固まっていた方が警備もしやすいだろう。

 

 三日後、葬送師を奪還したという知らせが届く。しかし教団の連中を確保するまでは安心できない。

 

 厳戒態勢五日目の午後ヒューバート王子がやって来た。

 

「参ったよ、奴ら話が通じないったら無い」

 かなり疲れているようだ。無理もない。私は疲れの取れるハーブティーをいれてやる。


「とりあえず、教団の上層部と思われる人間と、教団の研究員と、出資していたと思われる貴族は捕まえたよ。奴らも暫くは何も出来ないだろう」

 お茶に口をつけると少しほっとした様子だった。

「全く、どうして不老不死なんてなりたいのかね僕には理解できないよ。今教団への金の流れを追ってるんだ。結構な数の貴族が出資しているみたいでね。どういう組織か知らないまま出資していた貴族も多い。単なる古代魔法研究だと思っていたようだ」

 愚痴なのが報告なのか、両方なのだろう。

 しかし、貴族たちを騙して資金を得ていたのか。騙される側もそんな怪しげなものにお金を出さないで欲しい。

「騙されたとしてもかなり厳しく罰するつもりだから、当分教団は資金を得られないだろう。逆に貴族の恨みを買っただろうね」

 王子はお茶を一気に飲み干すとさらに疲れた様子で話す。

「教団の研究員はもう駄目だ、あんなに話が通じない人間がいるなんて……葬送師なら絶対に古代魔法が使えるはずだの一点張りだ」

 それは大変だっただろう。捕まえられただけでも僥倖だ。王子にお茶のお代わりをいれてあげる。

「ありがとう。とにかくもう少ししたら厳戒態勢も解けそうだよ。もうちょっと我慢してね」

 そう言って、お茶を飲み干すと王子は去っていった。

 私達葬送師に出来ることは何も無い。事態が収拾するのを待つだけだ。

 それがとてももどかしい。

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