30.交流会
今日は待ちに待った葬送師達の交流会の日である。
私は葬送師の制服に着替え、迎えが来るのを待っていた。
「やあおはよう、今日はいい天気だよ、絶好の交流会日和だね」
ヒューバート王子が迎えにやって来ると、私のテンションはうなぎ登りだ。
「このままシェイリーンを迎えに行くけどいいかい?」
「あれ?シェイリーンの担当になったんですか?」
「そうそう、僕の担当は君とシェイリーンね」
シェイリーンの力が私に次ぐほど強いものだったからだろう。王子を通して近況が知れるので私としては嬉しい。
「アーリンお姉ちゃん!」
迎えに行くとシェイリーンが突進してきた。相変わらず元気なようで安心した。
「ほらほら、ヒューバートお兄ちゃんもいるよー」
王子が手招きするとシェイリーンは綺麗に礼をしていた。
「おはようございます、王子殿下」
しっかりした子である。王子は不満そうだ。
交流会の会場である中庭に着くと、もう全員揃っていた。六翼も全員揃っているので周囲に威圧感がすごい。うちの六翼達も若干引いていた。
「アーリン・ダイヤモンドとシェイリーン・スピネルを呼んできたよ」
「ようこそ、こちらにきて座ってちょうだい」
顔の半分にベールを被った妙齢の女性が手招きした。
私たちは空いている席に座る。
「全員揃ったからまずは自己紹介しましょう。私はスザンナ・マーガレットこの中じゃ一番年上ね」
スザンナさんの顔半分には火傷の痕があると聞いている。彼女は火事が原因で葬送師になったらしい。
「ジャック・オパール。若いつもりなんだけど、この中じゃオジサンだな」
苦笑しながら言った隻腕の男性は三十代くらいだろうか。足も悪いらしく車椅子に座っている。彼は元騎士らしい。
「マーニ・トパーズよ。ついこの間まで五年ほど眠っていたの」
マーニさんは前に見た時よりだいぶ回復しているようだった。普通に椅子に座っている。
「アーリン・ダイヤモンドです。もうすぐ葬送師二年生です」
年齢順らしいので自己紹介したら笑われてしまった。
「ニール・アレキサンドライトです。この間葬送師になりました」
「シェイリーン・スピネルです。一年生です」
「アダムで……トルマリンです。苗字忘れちゃった!」
子供達もちゃんと自己紹介できたようで良かった。みんな苗字が宝石縛りで笑ってしまう。
「じゃあお茶会を始めましょうか」
スザンナさんがにこやかに言う。
「あ、今日のお菓子は私が作ったんです。皆さんに食べて欲しくて」
私が目の前にそびえるロールケーキタワーを指して言うと、みんな驚いていた。
「マジか、すごいな、これ全部手作り?」
「実家が菓子屋なんです」
子供たちは喜んで早速お皿に取り分けている。子供たちはまだマナーを習っていないので、今日は無礼講だ。
「アーリン姉さんのお菓子は最高だよ!孤児院でも大人気だったから!」
ニールくんが嬉しいことを言ってくれる。
「ねえ、このマカロンも手作り?もしかしてご実家は『カリオン』かしら?」
「そうです、ご存知でしたか?」
「もちろん!これでも流行りの情報には目がないのよ。いつも騎士に買ってきてもらうの」
ズザンナさんは嬉しそうにマカロンを摘んでいる。
場も落ち着いた頃、マーニさんが言った。
「アーリンさんお礼が遅くなってごめんなさい。アーリンさんがいなかったら私、きっとずっと眠ったままだったわ」
マーニさんは深く頭を下げた。
「いえあれは本当に偶然だったので、目が覚めてよかったです」
「あれからリハビリも進んで、もうすぐ現場復帰できそうよ。なんだか力も少し強くなってるなってるみたいなの」
マーニさんは嬉しそうだ。
「眠りから目覚める方法がわかったのは僥倖だな。もう力を使う度に怯えずにすむ」
「そう言って使いすぎないように注意しないと、本当にどうしようもなくなったらどうするの」
スザンナさんに注意されたジャックさんが肩を竦めた。彼も責任感が強い人のようだ。
「それにしても、どうして苗字が宝石縛りなのかしらね。私の時は花縛りだったのよ」
「縛るのが伝統って聞きましたけど、そろそろネタ切れなんじゃないですかね?」
そんな穏やかな雑談をしている内に時間はあっという間にすぎてしまった。
みんな気さくでとても楽しかった。次の交流会も楽しみだ。
私たちがお茶会をしている間、六翼達も交代で交流会をしていたらしい。みんな楽しめたようで何よりである。
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