28.子供たちの旅立ち
私の元にいた三人の子供たちは、葬送師として正式に働き始めることになった。彼らの勉強を見てあげることが多かったので、彼らがもう立派に役目を果たせることは分かっている。
三人とも、初めはこの中央神殿の配属になった。葬送師になった事情が事情だけに、狙われる可能性もあるし、家族と遠く離れたところに配属するのは忍びないということだった。
それに三人とも、葬送師としての力が強い。私ほどではないが、シェイリーンなど中央神殿で二番目の強さだ。
それを知った時、私はただ悲しかった。傷を負って葬送師になった場合、その重症度によって力の強さは変わる。彼女はそれほど傷つけられたということだ。
彼らにはそれぞれの住居スペースが与えられた。まだ精神的に不安定な面もあるので、葬送師の中で私だけは彼らと面会することが許されている。しかし、とても寂しい気持ちになった。
ヒューバート王子は彼らのためにできる限りのことをしてくれたようで、よく上層部に対する愚痴を言いに来ていたが、本当に感謝している。きっと王子がいなかったら当然のように家族との面会なども制限されていただろう。
今回のことはイレギュラーなのだ。慣例に囚われるべきでは無い。
彼らの六翼がしっかり支えてくれる人だといいなと思う。
「さて、やっとこの問題は片付いたね」
今日も今日とて愚痴を言いに来ていたヒューバート王子は、深いため息をこぼして言った。
「僕は頑張ったよ、頑張って君たちの希望を叶えることに成功したんだ」
何を言っているのだろうかこの王子は、何やら重大発表があるらしい。
「なんとね、定期的に葬送師同士の交流会を開催出来るようになったんだよ!」
王子の発表に、私は思わず拍手してしまった。よく頭の硬い上層部を何とかできたな。
「最初は試験的に開催するんだけどね。マーニのこともあったし、葬送師同士でしか解決できない問題もあるんじゃないかと提案したんだよ。これまで上層部の決めた下らない規約のせいでマーニは目覚めなかったということを強く主張したら、やつら黙り込んだよ。ざまあって感じだったね」
よほど疲れているのだろう、王子のテンションがおかしい。でもよくやってくれたと思う。
「という訳で、この神殿にいる七人の葬送師たちでお茶会があるよ。楽しみにしててね!」
それはかなり楽しみだ。その時には子供たちの好きなお菓子を作ろう。
それにしても、今この神殿には七人も葬送師がいるのか。この国にいる葬送師が全部で十八人だから少し多いな。近いうちに配置換えもあるかもしれない。中央には力の強いものが集められるから、私の移動はないだろうが、子供たちは対象にされる可能性がある。そうなったら悲しいな。
その後も散々愚痴をこぼして王子は帰って行った。話を聞いていた六翼も苦笑いである。あれで外で会うと完璧な王子だもんな。
「良かったな、交流会。前から他の葬送師に会いたがってただろう」
ライナスさんが私の頭をぐりぐり撫でて言う。
「僕らもちょっと楽しみだよ、六翼は他の六翼とあんまり関われないんだ」
レズリーの言う通り、六翼も葬送師の事を話すのは禁止されている。ちょっとやりすぎ感があるよね。
葬送師は国の宝というが、宝石箱にでも閉じ込められている感じだ。
「ニール達もベテランの葬送師から得るものは大きいでしょう。私も楽しみです」
クレイグさんは未だニールくんたちをとても心配している。いや、みんなそうか。みんな子供たちには甘かったもんな。
「交流会何のお菓子作る?俺手伝うよ」
「菓子を作るのは確定事項なのか」
「アーリンならそうするかと思って」
私もお菓子を作るのは考えていたので大正解だ。お菓子と聞いてライナスさんも手伝うと申し出た。絶対つまみ食い目当てだ。ライナスさんは私がお菓子を作っていると、いつもどこからともなくやって来るのだ。
「楽しみだな」
ウォーレンが新しいお茶を入れてくれながら、笑いかけてくれる。
本当に楽しみでワクワクしていると頭を撫でられた。
その後はなんのお菓子を作るかで盛り上がった。ここの葬送師は子供と女性が多いので可愛いを極めたお菓子にしたい。カラフルなプチロールケーキとマカロンのタワーはどうだろう。色んな種類を摘めるのが最高だよね。
ウォーレンにシュークリームをリクエストされたので、プチシューも有りだな。
いつの間にかお菓子のリクエスト大会になっていて思わず笑ってしまった。みんな食べたいものが違うのが面白い。
交流会、成功するといいな。
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