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恐怖耐性ゼロの転生葬送師は美形達に甘やかされる※接待です。  作者: はにか えむ


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27.デート

 今日は休養日だ。あの子供たちの一件から私の心は晴れない。出かけるのも億劫になってしまっていた。

 つまり一月は仕事以外で神殿の外へ出ていないのである。

 そんな私を心配したウォーレンが、外出に誘ってくれる。馬に乗って景色の綺麗なところに連れていってくれるらしい。私は彼の気遣いが嬉しくて、了承した。

 

 すると待ち構えていた女性の神官さんたちにドレスアップされてしまう。見事な早業だった。彼女たちにも随分心配をかけていたようだ。しっかりしないと。

 綺麗にしてもらったら、自然と気分も高揚した。デートが楽しみでしょうがない。

 

 私服に着替えたウォーレンと合流して、彼の馬に乗せてもらう。後ろから抱え込まれる形になって、ちょっとドキドキした。

 「街の中はゆっくり歩こう。街からでたら走るからその時は気をつけて」

 二人でゆっくりと街を見て回る。あのカフェが素敵だとか、祭りが楽しみだとか、そんな些細な会話も楽しかった。

 ふと思って護衛はいいのかと聞くと、実は見えないところにいると言われた。今日の護衛はレズリーとクレイグさんらしい。前回の隠密ごっこが楽しかったのか、二人が志願してきたそうだ。私は声を上げて笑ってしまった。

 

 街の外に出ると、ウォーレンが馬の速度を上げる。私はビックリしてウォーレンにしがみついた。彼は楽しそうに笑った。

 速度が上がるとバランスをとるのが難しい。私はしばらく格闘していた。彼が笑いながらコツを教えてくれる。やっと慣れたころ、私は馬に乗るのが楽しくなっていた。彼に支えられながら、流れる景色を堪能する。じきに私たちは景色のいい丘の上にたどり着いた。

 

 そこにシートを敷いて用意してもらったランチを食べる。こういうところで食べると美味しく感じるのはどうしてだろう。

 景色を見ながらこんなゆっくりした時間もいいなと考えていた。

 最近は色々なことがありすぎた。心が疲れていたのかもしれない。私たちは並んで座ってただ景色を眺めていた。

 そうしている内に眠たくなってくる。

「眠ってもいいよ、今日はゆっくりしよう」

 私の頭を撫でながら言うウォーレンの言葉に私の意識は眠りの中に落ちていった。

 

 

 

 目覚めると、私はウォーレンの膝を枕に眠っていた。いつの間にこんな体勢になったのだろう。ウォーレンも木にもたれかかって眠っていた。彼もきっと気疲れしていたのだろう。

 私が起き上がるとウォーレンも起きてしまった。もっと寝顔を堪能したかったのに残念だ。

 彼はおはようと言って私の頬に口づける。そのまま抱き込まれてしまった。

「よく眠れた?」

私の髪をすきながら耳元で聞いてくる。

「はい、とても」

 こんなに疲れが取れたのは久しぶりな気がする。やっぱりストレスが溜まっていたのだろう。

「最近は色々ありすぎてよく眠れなかったので」

「だと思った。日に日に疲れた顔になっていたから」

 そんなに分かりやすかっただろうか。自分では平気なつもりだったのだ。

「みんな心配していたよ」

「私はみんなに心配かけてばかりですね」

 ウォーレンさんはそうじゃないと言って私の目を見た。

「心配かけていいんだ、アーリンは我慢しすぎるから。だから弱音だってはいてもいいし、怒ったっていい。俺たちはその為に居るんだ。だから遠慮するな」

 みんなそう言う、六翼は私のためにいるのだと。でも彼らにだって心はあって、私が迷惑をかけていい存在ではないと思う。彼らは仕事で私の面倒を見ているだけなのだから。

 

「ほらまた、迷惑だろうって顔をしてる」

 ウォーレンが眉間に皺を寄せて怒っていた。

「確かに俺たちは仕事でアーリンのサポートをしてる。でももうそれだけじゃない。俺たちはみんなアーリンが好きだよ。家族のように思ってる。迷惑なんて少しも思わない」

 ウォーレンの言葉に涙が溢れた。私は葬送師としては半人前で、いつも上手くできなくて、必死だった。みんなに迷惑をかけないように。みんなは仕事で私に良くしてくれるんだと言い聞かせて、これ以上甘えてしまわないように。私はずっと怖かったのだ。みんなに見放されてしまうことが、恐ろしかった。

 ウォーレンの言葉は私のそんな弱気な心に突き刺さった。涙が溢れて止まらない。私はずっと彼の腕の中で泣き続けた。

 

 なんだか心のしこりが取れた気がした。

 

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