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恐怖耐性ゼロの転生葬送師は美形達に甘やかされる※接待です。  作者: はにか えむ


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26.ニールくんの決意

 事件からおよそ一ヶ月後、ようやくニールくんの外出許可を貰うことが出来た。神殿の住居スペースに入れるのは葬送師の家族のみであるため。ニールくんの孤児院の子供たちとの面会は今までできなかったのである。

 保護者代わりとして院長の面会だけは許されていたが、やはり皆に会いたいのだろう。外出許可が降りるのを心待ちにしていた。

 外出には私達も同行することが許された。ニールくんはまだ六翼が居ないからその代わりだ。

 

 私はニールくんと六翼と一緒に孤児院のみんなへのお土産を作っていた。彼はここ一ヶ月でかなり精神的にも回復したようだ。楽しそうにお菓子を作っている。

「アーリン姉さん、上手く型がとれないんだけど」

 

 私はいつの間にかニールくんに姉さんと呼ばれるようになっていた。なぜだかは不明である。

「それはもうちょっとグッと押して、押し切ったら微妙に左右に揺らしてごらん」

 彼はクッキーの型どりに苦戦していた、綺麗な形にならないとムキになっているのが微笑ましい。

 

 クッキーを量産していると二人の子供がキッチンを覗いているのが見えた。今回の被害者の二人だ。女の子がシェイリーン、男の子がアダムである。彼らは今、ニールくんも一緒に私の住居スペースで暮らしているのだ。

 

 私は手招きして二人を呼ぶ。おやつをお駄賃がわりにクッキー作りを手伝ってもらった。二人とも楽しそうで安心した。

 ここに来た当初は大変だったのだ。何度も家に帰りたいと泣いていた。でも葬送師は保護されなくてはならない。可哀そうで見ていられなかった。今は少し現実を受け入れることが出来るようになったみたいだ。

 みんな彼らの様子を微笑ましげに見ていた。私はウォーレンに目配せすると笑い合う。元気になってくれるのが本当に嬉しい。

 

 

 

 完成したクッキーを持って孤児院へと向かう。

 私も孤児院に行くのは一月ぶりだ。ニールくんはソワソワして落ち着きがない。よほど楽しみなんだろう。

 孤児院に到着すると、ニールくんは真っ先に馬車をおりて駆け出していった。

「ただいま!」

 入口の扉を開けるとみんな到着を待っていたようだ。綺麗に並んでドアの前に並んでいた。

 ニールくんを見た瞬間、みんな泣き出してしまった。ニールくんも泣きながら再会を喜びあっている。私たちはその光景を眺めながらなんだか切なくなってしまった。

 

 一頻り泣くと子供たちは遊び始める。

「ようやく子供たちが元に戻ったようです」

 院長先生がホッとしたように言った。院長は目頭を抑えると私たちに向き直った。

「本当にありがとうございました」

 院長の顔にも笑顔が戻ったようだ。それがとても嬉しい。

 

 

 

 散々遊んでお別れも近くなった頃、ニールくんが子供たちに言った。

「俺、葬送師になる事になったんだ。だからもうあんまり会えないかもしれない」

 そう言われた子供たちは悲しそうだ。

「でも、たまにはここに帰ってくるから!応援して欲しい!」

 子供たちはニールくんを質問攻めにしていた。ニールくんが貴族になるんだと話すと、すごいすごいとみんな手を叩いていた。彼が孤児院を出るのは悲しい理由では無いと知ると、みんな彼を祝福した。


「院長先生も、葬送師にになって沢山稼いで恩返しするから、楽しみにしててよ!」

 院長は涙をこらえてニールくんを送り出した。

「いつでも帰ってきてね。ここはあなたの家だから」

 

 

 

 馬車の中で、ニールくんは涙をこらえていた。孤児院では笑顔でいたが、本当は辛くて寂しかったはずだ。

 彼は葬送師として働く未来は変えられないと気づいてしまったのだろう。

「アーリン姉さん、俺葬送師になっていっぱい稼ぐよ。それで孤児院に恩返しするんだ。だから葬送師のこと教えてよ」

 彼は涙を堪えながらも、決意の籠った顔で言った。

 彼は覚悟を決めたのだ。私よりもニールくんの方が強いのかもしれない。私は未だにトラウマを克服出来ずにいるのだから。

 

 私に出来ることなら何でもしてあげよう。ニールくんの未来が明るいものになるように。私は祈った。

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