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2.アーリン

「はぁ……今日の舞台も最高だった」

 劇場のエントランスで、私は感嘆のため息を零した。今日は私が応援している劇団『オレンジ』の千秋楽だった。

 

 唐突だが、私は前世、日本で暮らした記憶を持っている。前世の私は重度のドルオタで『ソニックムーブ』というアイドルグループを箱推ししていた。

 彼らは私の生きる活力だった。

 娯楽の少ないこの世界でも全力で推せる何かが欲しい、そう思っていた時この劇団を見つけたのだ。

 メンバー全員が男性で構成されたこの劇団は、今王都で大ブームとなっている。


  私は今日『千秋楽お疲れ様!』と応援メッセージを書いたボードを胸に抱えながら観劇していた。前世のうちわの代わりである。

 私が毎回メッセージを書いたボードを抱えているせいか、ファン界隈で真似をする人が増えていた。劇の後のカーテンコールで、メッセージありがとうと言ってくれる役者さんも居るくらいだ。

 

 私は毎度の如くスタッフさんに、のど飴の差し入れを渡して欲しいとお願いすると劇場を後にした。

 実はこののど飴、前世知識を利用した私の手作りである。実家の店にも並んでいる。

 おそらく私の行動はファンの中では異彩を放っているだろう。前世仕込みだから仕方がない。

 劇場のスタッフさんに、いつもありがとうございますと挨拶されるくらいだから絶対に認知されている。なんなら名前も覚えられている。私の応援が彼らの力になるならそれで満足だ。

 

 

 

 家に帰ると店の従業員たちが忙しそうにしていた。私が前世よく作っていたマカロンを再現したら大人気になってしまったのだ。

 ちなみにマカロンは前世の推しの好物である。だから私もレシピを覚えていた。推し様様だ。

 従業員に挨拶して二階の住居スペースに行くと、母が休憩していた。

「おかえり、アーリン。千秋楽はどうだった?」

「ただいまお母さん、もう最っ高だった!今までの集大成って感じで!」

 私は暫くお母さんと語り合った。お母さんは私の劇場通いを容認してくれている。何故なら実家の菓子屋を流行らせたのが私だからだ。

 ご褒美的なものである。

 

「そういえば、アーリンもそろそろ成人ね。教会に行かなくちゃいけないわ」

 この世界は十五歳で成人である。成人すると教会へ行き洗礼を受けるのが習わしだ。この洗礼で特殊な才が目覚めることもあるので、必須行事である。

「アーリンはきっと何かに目覚めるんじゃないかしら」

 私を過大評価しているらしいお母さんは、洗礼を楽しみにしていた。洗礼式に着ていく服まで作ってくれたくらいだ。

 私は今の暮らしにとても満足しているのだけど。親心というやつなのだろうか。

 

 

 

 そして私の洗礼の日がやって来た。今思えば、洗礼など受けるべきではなかったのだ。この日を境に私の毎日は一変した。


  私は洗礼を受けるため、水晶のような玉に手を翳す。そうすると、玉が黒く輝いた。

「葬送師です!貴方には葬送師の才があります!」

 

 

 

 それからは怒涛の日々だった。神殿から迎えが来てあれよあれよという間に連れていかれた。葬送師は貴重で国の宝である為護衛が着けられ、一人では家に帰ることも出来なくなった。

 神殿に連れていかれると早速勉強が開始され、葬送師について学ぶことになった。

 あまりの環境の変化に目眩がした。

 国の宝と言うだけあってかなり豪華な部屋が宛てがわれたが、私の不安は消えなかった。

 これから一体どうなってしまうのだろう。

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