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恐怖耐性ゼロの転生葬送師は美形達に甘やかされる※接待です。  作者: はにか えむ


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19.私の弱点

本日五話目の投稿ですので読み飛ばしにご注意下さい。

「夜にしか出ない亡霊ですか?」

 私はヒューバート王子に今回の任務を聞いた。何でも夜にしか現れない亡霊らしい。

「亡霊にしては意識がハッキリしているのか、何かを訴えようとしているみたいなんだ。昼間は上手く隠れていて見つけられない。意識がハッキリしていると言うことは強い亡霊だ。念の為アーリンに葬送を頼みたい」

 できるだけ交渉で、できなければ強制葬送して欲しいそうだ。久しぶりに普通の葬送師の仕事である。最近強制葬送しかしてなかったからな。

 今回は正直成功できるか心配だ。強制葬送より普通の葬送がダメなんて笑えない。

 絶対にみんなに迷惑をかけないように頑張ろう。

 

 

 

 私たちは亡者の生前住んでいた屋敷にやってきた。結構な資産家だったらしい、とても大きな屋敷だった。かの亡霊は事故で死んだが、何故か庭の中の温室に出るという。

 夕暮れに照らされた屋敷はとても美しかった。この屋敷を奥さんのために建てたというのだから驚きだ。奥さんはとても愛されていたのだろう。

 

 

 

 日が完全に落ちた頃、亡霊が現れたと知らせが入った。私たちは亡霊の元へと向かう。近づくほどに体の震えが止まらない、呼吸も苦しくなってくる。

 でも耐えなければならない。私はなんでもないように振舞った。先頭を行くジャレット団長の影に隠れながら、屋敷の中を進んでいく。

 皆には、私はただ怖がっているだけに見えているのだろう。みんな絶えず話しかけてくれて、足が止まりそうな私の背を押してくれた。

 

 温室の中に入って、血塗れの亡霊の姿を見た瞬間、私は耐えられなくなってしまった。

 呼吸ができない、苦しくて涙が止まらない。あの時の情景がフラッシュバックする。もはや立っていられなかった。誰かが私を抱きとめてくれる。でももうそれが誰かすら分からない。私は無我夢中で彼の服に縋り付いた。苦しい助けて欲しい。

 私はやがて気を失った。

 

 

 

 目が覚めた時は、自室のベッドの中にいた。ああ、またやってしまった。仕事も出来ずに迷惑をかけてしまった。

 ウォーレンがベッドの脇で、労しげに私の手を握っていた。彼を見ると、ホッとしたように笑ってくれた。

「落ち着いたか?」

「はい、すみませんでした。急に倒れちゃって」

 そんなこと気にしなくていいとウォーレンが言う。

「前にもこんな事があったな」

「最初の任務のときですよね、すみません……」

 私が他に言葉が思いつかなくてとりあえず謝ると、彼は言った。

「……アーリンは暗闇が怖いのか」

 どうやらばれてしまったようだ。私は何より暗闇が怖い。そして幽霊も。

「アーリン、駄目なことがあるなら最初に言ってくれ。さっきの君の様子は尋常ではなかった。みんな心配している」

ウォーレンは私の手を取ると温めるようにさすった。

「誰も怒らないから、怖いなら怖いと言ってくれ。俺たちが何とかしてやるから」

 そう言ったウォーレンの顔には悲壮感が漂っていた。彼もきっと私の様子に驚いたのだろう。

「私は暗闇が怖いです。亡者のことも少しだけ。思い出したくないことを思い出すから……」

 いっそあの時のことを全て忘れられたらいいと、何度思ったかしれない。生まれ変わっても、前世の記憶に体が動かなくなってしまうほどに私に刻まれた恐怖だった。

 前世でも理解を示してくれる人は少数だった。突然過呼吸を起こして倒れることのある私は異端でしかないのだ。

 ウォーレンは何も聞かずに私を抱きしめてくれた。頭を撫でる手に気持ちが落ち着く。何故だか涙が出てしまった。そのまま止まらなくなってしまって、ウォーレンの腕の中で泣き続けた。

 

 

 

 結局あの任務は他の葬送師がやってくれたらしい。

 王子は私に夜の依頼はやらせない事に決めたそうだ。元々夜の方が亡者が活発になるので、夜の依頼はあまり無いのだが。とても心苦しい。

 みんな私を頼って良くしてくれるのに、私はそれに答えられなかった。こんな葬送師を支えてくれてるみんなに申し訳ない。

 せめて私に出来ることは何でもやろうと心に決めた。

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