18.孤児院
本日4回目の投稿です。
読み飛ばしにご注意下さい
今日はクレイグさんの運営する孤児院を訪ねる日だ。
王都の喧騒を少し外れた、静かな湖のすぐ側にその孤児院はあった。
「なぜこんな辺鄙な所に孤児院を?」
護衛として共に来ていたウォーレンとリオくんが疑問を投げかける。
「このすぐ側に、退役軍人たちが開拓した村があるんです。彼らに許可をとって建てたんですよ。」
なるほど、それで警備も万全というわけだ。引退したとはいえ元軍人が沢山いるのだ。人さらいも避けるだろう。
「ありがたいことに彼らも子供たちをかわいがってくれますから、いい場所なんですよ」
まだできて五年ほどの小さな孤児院だが、設備は整っているようで快適そうだった。
私たちが中に入ると、孤児院の子供たちが駆け寄ってきた。クレイグさんはよほど子供たちに慕われているらしい。
私たちを見て警戒している子供たちもいるが、多くはクレイグさんに夢中だ。
クレイグさんが私たちを紹介してくれるとやっと警戒を解いたらしく近寄ってきてくれた。
孤児院の管理をしているというおばさんは夫に先立たれた未亡人らしく、開拓村の人たちに協力してもらって孤児院を運営しているのだそうだ。
十五人ほどいる子供たちを一人で面倒を見るのは大変ではないかと言うと、年長の子供たちがしっかりしているから大丈夫だと笑っていた。
子供たちにクッキーを差し入れると、目を輝かせて喜んでいた。ここは王都から少し離れているため、甘味はあまり手に入らないそうだ。
今度甘いサツマイモの苗を寄付しようと心に決めた。オカズにもなるので丁度いいだろう。
クレイグさんに確認をとると、そんな事は思いつかなかったと喜ばれた。
「アーリンは農業にも詳しいですよね。ここの畑も見て貰えますか」
私の推し活知識が役に立つ時がやってきた。畑を見て、土壌作りも何もやっていない事が分かったため、いちばん簡単な腐葉土の作り方をレクチャーする。堆肥だけでなく肥料もまければ一番いいのだが、孤児院の予算では無理そうだ。
リオくんとウォーレンに腐葉土製作のための穴を掘ってもらって、雨が入らないように防水性のある布で覆う。子供たちは落ち葉を沢山取ってきてくれた。完成は数ヶ月後である。完成した頃にまた来よう。子供たちには定期的に土を混ぜてもらうようお願いした。
そのあとお昼ご飯をご馳走になったのだが、モヤシが食卓にあがっていて驚いた。
クレイグさんがモヤシを教えてくれたお姉さんだと私を紹介すると、一人の男の子が大興奮していた。余程モヤシを気に入ったらしい。彼は孤児院のモヤシ作成を一手に引き受けているそうだ。気に入ってもらえて何よりだ。
午後からは走り回って子供たちと遊んだ。前世の遊びを教えてやると子供たちはすぐに順応してあそび始めた。
騎士になりたい男の子たちはクレイグさんやウォーレンに剣を習っている。
リオくんは年少の子達に好かれているようだ、流石六人兄弟の長男である。
楽しい時間はあっという間だった。夕方、帰らなければならない時間になると途端に寂しくなった。子供たちはまた来てねと言ってくれて嬉しかった。今度はもっと豪華なお菓子を作ってこよう。
「ありがとうございます、アーリン。子供たちも楽しそうでした」
帰りの馬車の中でクレイグさんが言った。私も楽しかったからいいのだと返すと。穏やかに笑ってくれる。
「しかし、少し警備が心配だな。雇えるなら誰か雇った方がいいと思うが」
ウォーレンが心配そうにしている。確かに少し村から離れているから心配かもしれない。
「今は村の人達に巡回をお願いしているのですが、いい人材が見つかり次第人を雇う予定です」
クレイグさんも子供たちのことが心配らしい。天上のしもべの被害を直接見ているのだから余計にだろう。
「早くいい人材が見つかるといいですね」
私たちは彼らが健やかに過ごせることを祈りながら、神殿にもどるのだった。
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