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恐怖耐性ゼロの転生葬送師は美形達に甘やかされる※接待です。  作者: はにか えむ


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16.ライナスさんの故郷

 ライナスさんの故郷は鉱山の近くにあった。ライナスさんの屈強なイメージによく合っている。

 実験施設は表向き何の変哲もない民家だった。村の人達が気づかなかったのも頷ける。頑丈な結界の中で、閉じ込められた亡者が飛び交っていた。

 今回は強制葬送なので亡者の近くに寄る必要は無い。結界内に一歩立ち入って扉をひらけばいいだけだ。

 

 亡者の声がうるさい。毎回どうしても引きずられそうになってしまう。

 ウォーレンがすかさず耳を塞いでくれた。そのまま深呼吸していると、一緒に来た騎士たちが応援してくれているのが見えた。彼らは人払いと見張りをしてくれているのだ。彼らのおかげで気分が少し落ち着いた。

 

 私はウォーレンに目配せすると、手を離してもらって結界に向かって歩き出す。手を離した途端、亡者の苦しむ声が流れ込んできて顔を顰めた。周囲を囲んでくれている六翼と一緒に結界の中に入る。

 私は大きく息を吸って聖句を唱えた。

「迷える亡者のため、天上の扉を開け」

 

 結界内が眩い光に覆われ、天上の扉が姿を現す。

 また突風が巻おこり、亡者が吸い込まれていく。

 ライナスさんはその様子をじっと見ていた。静かな表情だが、なんだか泣いているようにも見えた。

 ほんの数分で、亡者は全て居なくなる。扉が閉じると目眩がした。

 ウォーレンがすかさず私を支えてくれた。今日は気絶せずに済みそうだ。

 

 酷いめまいがしたのでウォーレンに抱き上げてもらって結界の外に出る。

 ライナスさんが傍にやってきた。

「ありがとう、これでこの村は救われる」

 彼は私に頭を下げると、結界の中に戻って行った。

 無事終わってよかった。

 

 ジャレット団長とライナスさんとクレイグさんは、早速施設の中を調査するらしい。私は残りの三人と一緒にお留守番だ。ウォーレンに支えてもらいながら椅子に座って休憩する。リオくんが飲み物を持ってきてくれて、レズリーがブランケットをかけてくれた。

「今回は大丈夫そうだね」

 レズリーは嬉しそうに笑っている。またベッドの住人になるのは勘弁して欲しい。

「だが休息は必要だ、帰ったらすぐ横になってくれ」

 心配性のウォーレンが私の手を握りながら脈を測っている。測り終わるとそのまま温めるように手をさすっていた。恥ずかしいから自重して欲しい。私が目で訴えると、ウォーレンは楽しげに微笑む。やめてくれる気は無さそうだ。

 

 

 

 そうこうしているうちに、調査組が帰ってきた。

 ライナスさんとクレイグさんの顔が怒りに満ちている。中で一体何を見たのだろう。きっとろくでも無いものだ。

 ジャレット団長が私を見て改めて礼を言う。その顔はやり切れない思いに満ちていた。

 

 一端神殿に帰ろうとした時、見張りの騎士達が騒がしくなった。

 騎士の一人がこちらに駆けてくる。

「不審者を発見しました!現在五名が後を追っています!」

 

 なんでも顔を隠した人間が、こちらの様子を見ていたらしい。騎士が声をかけると逃げ出したそうだ。

 魔法の得意な人物だったらしく、結局捕まえることは出来なかったそうだ。天上のしもべの関係者だろうか。

 

 

 

 施設の見張りだけ残して、私たちは急いで神殿へと戻ってきた。ヒューバート王子にその事を報告すると、もっと警備を増員する事になった。

「しかしなぜ今日あの施設を葬送する事を知っていたのか……もしくはずっと張り込んでいたのか?」

 もし彼らが事前に情報を得ていたのなら、神殿か王宮に内通者が居るのだろう。後者であってほしい。

 王子も何事かを考えながら顔を顰めている。結局答えは出なかった。

 

 

 

 神殿に帰ってきたらどっと疲れてしまった。ウォーレンがずっと運んでくれたのだが、頭痛がおさまらない。

 ウォーレンは寝台に私を寝かすと、温かい飲み物を用意してくれた。すこし頭痛が落ち着く。

「天上のしもべは一体何をしようとしているんだろう。神になるって本気なのかな」

 私の呟きにウォーレンは私の頭を撫でながら言った。

「これだけの事を仕出かしているんだから本気なんだろう。実際成功するかは別として」

「早く捕まってくれたらいいのに」

 ウォーレンはそうだなと笑って、私に眠るように促す。ちょっと疲れでナーバスになっていたようだ。頭を撫でてくれるウォーレンの手が心地い。私はそのまま眠りについた。

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