12.救い
今日は邪教団体の実験施設の葬送をする日だ。
あの後、ジャレット団長に葬送のことを話したらかなり揉めた。しかし、私には何故か死にはしないという確信めいたものがあったのだ。魂が天上と繋がっているせいかもしれない。何とか納得してもらった。
他の六翼にも大変心配されて、今も飲み物を用意してくれたり肩を揉んでくれたりしている。
ウォーレンさんには、ありがとうと言われて泣かれてしまった。涙を流していても綺麗な人だなと思った。彼の弟さんの苦しみを終わらせようと強く思う。
実験施設にたどり着くと、かなり厳重に結界で囲まれていた。
亡者の声が耳につく。ここがこの国で最も亡者の多い場所らしい。
施設内の窓から無数の亡者が見えた。途端呼吸が苦しくなる。体が震えて、亡者の声に引きずられそうになる。
ウォーレンさんがまた後ろから耳を塞いでくれた。少し落ち着く。
私が落ち着いたことに気づいた彼が耳から手を離し、私の手を取った。
「どうかアレンを救ってやってくれ」
彼は祈るように言った。
共に結界の中に入ると、そこはこの世の地獄そのものだった。私はまた体が震え出した。
それに気づいたウォーレンさんは後ろから優しく私を抱きしめる。
「大丈夫だ、ちゃんと守るから」
耳元で囁かれて、勇気が出た。私は大きく、深く息を吸う。
「迷える亡者のため、天上の扉を開け」
すると前回の比ではないほどの暴風が吹き荒れた。前が全く見えない。ウォーレンさんが支えてくれていなかったら、飛ばされていたかもしれない。
風が、光の扉に吸い込まれてゆく。同時に私の中からも何かが急速に失われてゆく感覚があった。まだ大丈夫。もう少しだけ。
亡霊が扉に飲み込まれてゆく。扉が閉まる最後の瞬間、彼によく似た子供が笑っていたように見えた。
「ありがとう、アーリン」
意識を失う瞬間、彼の声を聞いた気がした。
次に目が覚めた時には、あれから三ヶ月も経っていた。
目覚めるやいなやみんな部屋に集まってきて、私の無事を喜んでくれた。ジャレット団長など心配しすぎて痩せ細っていた。
レズリーは号泣していたし、リオくんは私に全力の治癒魔法をかけるし、収拾がつかなくて大変だった。
そんな中、ウォーレンさんが歩み寄ってくる。
「アーリン、本当にありがとう。これでアレンは救われた」
彼はまた泣きそうな顔をしていた。
「君には感謝してもし足りない。今後俺の全てをかけて、この恩を返そうと思う」
彼は私の手を取ると、その指先に口付けた。
私は突然の事態に真っ赤になってしまう。
彼は私の手を取ったままベッドの脇に跪いて、こう言った。
「私ウォーレン・ウッドはアーリン・ダイヤモンドを唯一の姫とし、生涯守り抜くことをこの剣にかけて誓います」
騎士の誓いと言うやつだろうかと思い、頷いて返事をする。
「ありがとうございます」
すると周りがザワついた。
「アーリンお姉ちゃん!今の、聖騎士のプロポーズだよ!」
レズリーが叫ぶ。
私は何を言っているのか分からなかった。
ウォーレンさんを見ると、彼は晴れやかに笑って言った。
「結婚式はいつにする?」
それを聞いた瞬間、私の頭は許容量を超え意識がフェードアウトした。
誰か状況を説明して欲しい。




