1.プロローグ
目の前には、見るからにおどろおどろしい穢れを纏った屋敷が建っていた。
外からでも無数の亡者の群れが屋敷内に居るのが分かる。まるでホラーハウスだ。
その光景を前に私は恐怖で震えが止まらなかった。
「大丈夫か?アーリン」
「大丈夫じゃないです!」
右から銀髪のオジサマが私の顔を覗き込んでくる。思いの外大きな声が出てしまった。
「それだけ叫べるなら大丈夫だろう、行くぞ」
左に立っていたミルクティー色の髪の男が私の腰に手を回しエスコートする。いやこれはエスコートでは無い、エスコートとは決して脇腹に指が食い込むほど強く固定するものでは無いはずだ。絶対。
歩きだした。いや引きずられている私に前方に居たチョコレート色の髪の男の人が言う。
「大丈夫だよ、俺たちがしっかり守るから、頑張ろう!」
体の前でファイティングポーズを作った彼は普段なら癒しのワンコ系男子なはずなのだが、亡者渦巻くこの光景の中では癒し要素など皆無に等しい。
「ぱっと払ってぱっと帰ってくればいいんだ、気合い入れろ」
なんの慰めにもならない脳筋理論はやめて頂きたい。前方で剣を構えた体格のいい赤毛の青年を私は睨んだ。
「アーリンお姉ちゃんなら大丈夫だよ!早く天上に送ってあげよう!」
私の後ろから可愛く顔だけ出した桃色の髪の男の子が言う。そのキラキラした瞳は私が確実に仕事をやり遂げるだろうと信じて疑ってはいなかった。いや、お姉ちゃんにも無理なことはあるんだよ。
「さあ、行きましょう。これが終わったらお菓子が待ってますよ」
私の後ろにいた青髪の男性が、私の体を強く、それはそれは強く押す。語外に早く歩けと言っている。ドSだ。
私の体が亡者の館に近づいてゆく、逃げられない。
私は半泣きになりながら叫んだ
「無理無理、無理ー!」




