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「うわああ……」

 その生物は……鳳龍と呼ばれ、「蒼穹の民の地」や「雲竜の民の地」では、それほど珍しくは無いが「華の民の地」では、ほとんど居ないらしいく「瑞獣」扱いされている生物だった。

 様々な大きさ外見のものが居るが……共通しているのは、外側は「羽毛が有る蜥蜴」、骨格は哺乳類(けもの)に似ており、前足には翼を思わせる「飾り」が有るが空を飛べる種類は、ほとんど居ないという点だ。

 二本足で歩いている種類だが、胴体は人間と違って横倒しになっている。

 元々は四本足で歩いていたが、前足が極端に小さくなり、二本足で歩くようになった……そんな感じの外見だ。

 胴体の大半と顔は、緑と茶と灰色の斑模様。腹は白く、頭頂から尻尾の先にかけて明い琥珀色の(たてがみ)が生えている。

 熊よりも大きい、大牛ほどの体格の、その鳳龍の前で、腰をぬかしている若い男が居た。

 服装は「華の民」のもの……それも文官系の役人か学者らしい出で立ちだ。

「あ……あの……ぼっちゃま……」

 その横では、下男らしい中年の男が、何とかして若い男を立ち上がらせようとしている。

「く……く……食われ……」

卒爾(そつじ)ながら……」

 私は、その2人連れに話しかけた。

「へっ?」

「鳳龍は、あまり人や獣を襲いません。肉を食べる種類でも小食ですので」

「ほ……本当に?」

「ふみゅ♪」

「えっ?」

 その鳳龍の顔は、どちらかと言えば怖い方なのに、妙に可愛げのある声を出して、首を縦に振る。

「まさか……人間の言葉が……」

「ふみゅ♪ ふみゅ♪」

 鳳龍は……更に首を縦に振る。

「『蒼穹の民』や『雲竜の民』の間では、人の言葉を解する程度の知恵が有る個体(もの)も居ると言われています」

「は……はぁ……」

「おい、何やってる? お前、寂しがり屋のクセに、いつも勝手に出歩いて、何のつもりだ?」

 その時、聞こえた声は……「華の民」の言葉でも、私達「蒼穹の民」の言葉でも無かった。

 「雲竜の民」……「華の民」の地の西南の高原地帯に住む者達の言葉だった。

「ふみゅ〜……」

「帰るぞ。お前の兄弟も、お前が居なくなって寂しがってる」

「ふみゅ〜」

 少女と言われれば少女に、声変わり前の少年と言われれば少年に見える、その人物は……「蒼穹の民」の民族衣装とは少し違う服を着ていた。

 少女であれば……公主(ひめ)様より2〜3歳ほど齢上と言った所か……。

 首に巻いている頚巻(スカーフ)は、その服が、元々は寒冷地に住む者達の民族衣装だった名残だろう。

「すまない。お騒がせしたようだ……」

 その雲竜の民の子供は……意外に綺麗な「華の民」の言葉で、そう告げた。

「え……えっと……えっと……何だ、その……そいつと君は……」

「この子は私を友達だと思っているらしいが……世間一般で私がこの子の飼い主だと解釈されても……概ね問題は無い。この子が何かしでかしたら、私の責任とされても異存は無い。この顔と図体がだ、大人しいので、めったに誰かに迷惑をかける事は無いと思うが……」

「あ……あ……そうか……すまないが……以後、そいつが出歩かないように気を付けていただくと有り難い」

「了解した」

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