白い鳥
白い鳥が飛んでいた。
鳥は確かに飛んでいて、幻ではないようだった。
鳥はとても美しく、見たことのない姿で、空想上の生き物のようだった。
私は鳥を川辺で見ていた。
日が暮れようとしていて、誰かが話しかけてきた。
「あの鳥を見たことは決して人に話してはならない」
私は不安になり、すぐに家に帰った。
家に帰っても鳥のことが頭から離れない。
記憶の中の鳥を、何枚も何枚も絵に描いた。
そしてある晩、夢を見た。
「あの鳥があなたをどこかへ連れていってくれる」
川辺で出会った誰かが、また話しかけてきた。
私は、はっと目を覚ました。
まだ夜明け前だった。
ベランダを見るとあの白い鳥が止まっていた。
私はほぼ反射的に鳥の背中に乗り、鳥とともに飛び立った。
火を吹く火山や波打つ海を越え、どこまでも飛んでいった。
夢を見ているようだった。
私は元いた街のことなどすっかり忘れてしまっていた。
ただただ、鳥と飛び続けていた。