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プロローグ

 

『魔法とは、魔術を標準化したものである。勉強の得意な者、運動が得意な者。人それぞれ得手不得手があるように、扱える魔法には個人間で差異が生じることも多くある。だが、自分に扱えない魔法があったとして、決して悲観的になることはない。魔法は決して万能ではないからだ』



 ――『魔法の祖』アラズラム・クラーク『魔法大全』より



『魔術を魔法に昇華させるのに必要なものは、魔術を標準化させるための特殊な引き金(トリガー)だ。魔力と言うものは、方向性のない無垢なものと考えられている。それをどのような形で事象として現すかを決定づけるものが引き金(トリガー)と捉えてくれて構わない。……(中略)……従って、魔術を魔法へと昇華させるために必要なものは、その魔力の方向性を定める為の引き金。すなわち人の魔力を魔法へと媒介させる呪文や道具と言えるだろう』



 ――『飽話教授』オーダル・ボーア『魔法のすゝめ 第一巻 魔法の始まり』より



「……以上が此度の選抜に関わる条項だ。意見や異論は認めない」


 その妖精族(エルフ)の老人は静かに、だが力強く言い切った。


「そ、そんな馬鹿な話があるかっ!?」


「そ、そうですっ!! 大体、何年も解かれていない先祖の碑文なんて何の意味もないに決まってます!!」


 若いエルフ達からの不満や文句が溢れんばかりに飛び出す。しかし、老エルフはそれも予見していたのだろう。

 彼は手にした杖で強く地面を叩きつけると、先程までの喧騒が嘘のように静まった。


「……今しがた告げた通りだ。意見や異論は求めていない。わかったのなら、来たる選別に向けて各々準備するのだな」


 そう言い残し、老エルフは踵を返して自室へと戻っていった。


 残された若いエルフの反応は様々だ。

 忌々しげに唇を噛む者、嬉々として想いを馳せる者、どうでも良さそうに虚空を仰ぐ者……。


 その中に、殺意という狂気を孕んだ者が居たことに、誰一人も気付けなかった。

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