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プロローグ

 



『魔法とは、魔力を持つ誰しもが魔術を簡単に取り扱う為の手法である。誰しもが簡単に取り扱えるからこそ、決して人に害を与える事があってはならない』


 ――『魔法の祖』アラズラム・クラーク『魔法大全』より




『魔術と言うものは独創性(オリジナリティ)の高い物だ。発現の多くは血継によるものとされ、家族間以外で同じ魔術を使う者はまずないとされている。……(中略)……つまり、魔術を魔法へと昇華させることは、ある種、魔術師の一つの境地と言えるだろう』


 ――『飽話教授』オーダル・ボーア『魔法のすゝめ 第一巻 魔法の始まり』より





 僻地にひっそりと佇む古城。普段は人が入ることの無いこの城に、喧しい声が響く。


「おーい、この荷物はここでいいのかー?」


「ああ! それから馬車に入ってる赤い垂れ幕も持ってきてくれー! あ、ちょっと君! それはそうじゃない!! それは弔事用の飾り付けだから、今回みたいに新しい魔法の御披露目なんかの時はこっちを……」


 忙しなく荷物の搬入を行う業者達に向かって、しきりに指示を出す男。口許にはたっぷりと髭が蓄えられていて、よく肥えたその腹が男の裕福さを表している。きっと日々贅沢をしているのだろう。


 いくら雇用主とはいえ、荷下ろしも手伝わずに偉そうに口だけ出してくる男に、忙しなく働いている業者の彼が陰で悪態の一つもつきたくなるのも頷ける事だった。


「ったく。人使いが荒いよな、全く……ん? こんなの荷物に入ってたか……?」


 今回の式典は雇用主の男の言うように慶事だ。御祝い事なのだから、その装飾なども華やかにする事が一般的である。


 だというのに、業者の男が手にしたそれは、黒い布で覆われていた。そう、それこそ弔事で使う事が適当のように。


「何だこれ……紛れ込んで入ってきちまったか?」


 訝しみながら布を開き、中身を確認した彼の表情はみるみると青ざめていき、先程まで悪態をついていた事さえ忘れて、雇用主である男の元へと走って行くのだった。

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