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エフィ

「母さん、僕はきっと・・・」

 何を言われたのかは聞こえなかった

 あの悪意しか持たなかった生命体が唯一愛を示した

 少なくともそう感じられた

 だからその優しい悪意に身をゆだねてしまった


 記憶はある。自分が何をしているのかもわかっている

 だが愛ゆえに彼を止めることができない

 恐らく彼には自分は従順で逆らわない人形に見えているだろう。いや本心は分からないが、自分は彼には逆らおうとしなかった

「さぁ母さん、行こうか」

 新しいおもちゃを与えられた子供のように嬉しそうな悪意の化身

 自分の名付けた名前を名乗り、自分を母と仰いでくれている

 それだけで彼女、研究員エフィにとっては満足だった

 息子たる悪意アウル

 彼に与えられた力で死ぬこともなく、世界を渡って移動もできた

 攻撃力はない。彼は母親を戦闘員としては考えていなかったから

 新しく作り出したリルカクローン

 前回作り上げたクローンでは勝手に自我が芽生えるという失敗作であったため、一切の心をなくし、ただ悪意を振りまき世界を消すマシーンとして作り出した

 エフィの手によってリルカクローンは運ばれ、世界を壊すとまた迎えに行く

 それが繰り返される


 新たなリルカクローンが生まれてから数日後

「母さん、これを見てくれ」

 アウルが見せたのは黒い塊

 それはまるで生まれたばかりの頃のアウルのようなうねうねとうねる生命体

「可愛いですね」

「そうだろう母さん! この子は僕とリルカの細胞から作り出したいわば僕の子供さ」

「アウルの、子」

「そうだよ母さん。この子は良い悪意を持って生まれてくれそうだ」

 エフィは手渡された黒いドロドロを手に受け取る

「ああ、懐かしいです。アウル、あなたの子供のころのよう」

「だろう、母さんの孫だね」

 孫、その言葉でエフィは疑問を抱いた

 この子をアウルと同じように育てていいのか?

 悪意を受けて悪意を振りまくような罪深い生命体にしていいのか?

 エフィはそのドロドロを抱きしめると、アウルの前から忽然と姿を消した

(そうだ、だから私は、エフィレポートを残したんだ。アウルの正体を知ってもらうために!)

「かあ、さん?」

 あとには突然愛する母親を失った悪意が残された

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