利善とレイドの異世界旅1
「それじゃ、私帰るから、案内はそこの、エリファラウスに、お願いして」
この世界に来てすぐウェアは次元の扉の前にいた男に二人を託した
「やぁ、君たちは新しい仲間だね。ようこそアドラント異世界交流世界へ」
エリファラスと言う男は非常に巨漢で筋肉の塊のような男だが、丁寧で物腰も柔らかく、好感の持てる青年だった
「良かったら私に案内させてもらえるかな?」
「ああそれは助かる。よろしく頼むよ。それじゃあウェア、ここまで送ってくれてありがとう」
「うん、応援してるから、頑張って。あと人質のこと、お姉ちゃんに任せて、きっと大丈夫」
「ありがとうございますウェアさん!」
ウェアにお礼を言って別れるとエリファラスの後に続いて異世界の協力者たちが集まる街へと繰り出した
どうやら二人が最初にいた場所は次元の扉があるだけの場所だったようで、そこは何人かの強力な力を持った能力者達が守っていた
「君たちのことはゼアさんから聞いていたよ。人質を取られているって言うのによくウルと戦う決意をしてくれたね。感謝するよ」
「いえ、私達にできることがあるなら・・・」
ウルと戦う決意はできているが、弟が未だ囚われの身であるレイドはその胸中心配でたまらない
いくらディスが助け出そうとしてくれているとは言っても、その手に弟を抱くまでは落ち着いていられるわけがなかった
しかしそれでもレイドは戦うことを決意している
自らの手で家族を取り戻すために
「さてまずはここ、多くの異世界人との交流ができる大広場だ。ここでは自分たちの能力で相性を見てパーティを組んだり、能力を合わせて新しい力を生み出したりできるんだ。ただあまりにも強力な力を持ってるとうまく合わせれなかったりするからそこは要注意だね」
エリファラスの説明の後その場にいた能力者達に自己紹介をすると、拍手の元皆に歓迎された
それぞれの目に正義の火がともっており、誰も彼もがその能力を人々のために使ういわば善なる人々だった
ウルは悪意の塊である者たちが多い、それに対抗するためには善意を持った能力者達が必要なのだ
「それじゃあ次はこっちだ」
エリファラウスの後を歩き、食堂や娯楽施設、図書館、能力開発研究所など数多くの施設を見て回った
その中には神々が待機している場所までもあり、いかに多くの力ある者たちが協力しているのかがよくわかった
「これだけの数の協力者がいてもウルは強力すぎて勝てるかどうかわからない。それに、何のために奴らが世界を滅ぼそうとしているのかも全く実体が掴めていないんだ・・・。いや弱気になってすまない
。どうにも年を取ると考えすぎてしまってね」
恐らくエリファラスも不安なのだろう
この先ウルとの戦争が起きれば数多くの世界が大きな被害を受けるだろうし、この世界で仲良くなった者と死別する可能性も高い
エリファラスは自分のいた世界では巨漢の勇者と呼ばれる心優しい勇者だった
そのため戦っていた魔王とも和解し平和な世界を築いた実力者である
しかもその魔王は彼の妻でもあるため、彼女と世界を守るためにと立ち上がったのだ
そんな彼でも不安に陥るほどウルは得体がしれない
「大丈夫ですよエリファラスさん! きっと世界は守られます。だってこんなにもたくさんの世界を守ろうとしてる人たちが立ち上がってるんです。私もここでなんだか勇気をもらえました」
「そうか、そうだね。君は人質まで取られているのに私の心配まで・・・。君は強い子だ。そうだ、私達は絶対に負けないさ! ありがとうレイド君」
「ところであんたの能力はどんなのなんだ?」
今まで黙っていたが利善は興味本位でエリファラスに能力について聞いてみた
「お、ちょうど演習場が見えてきたからそこで私の能力を見せよう」
彼が向かった場所は演習場と呼ばれる巨大施設で、ここでは科学や魔法に関する能力者が様々な研究によって作り出した能力者達の訓練場でもある
かなり出力の高い能力による攻撃にも十分耐えれるだけの設備があり、神々でも壊すことは容易ではないだろう
「ちょっとそこで待っててくれないかな、能力を使う許可を得て来るから」
「許可がいるんですか?」
「ああ、私の力は破壊することに特化してて危険だからね。まあ制御はできるから問題ないんだけどね」
この施設を使う能力者はその力によって入場を制限されることがある
そのランクはFからSSSランクにまで分けられていて、FからBまでの能力者は許可証なく入場できる
そのランク分けの基準は、FからBまでがサポーターやサイドキックたちで、Aからは勇者や救世主、英雄といった実力者たちだ
SSランクにもなると世界を一人で救うことができ、SSSランクに至っては複数世界を救った大勇者や大英雄くらいで、数人しかいない
「私はAランクでね、ホールという能力を持ってるんだ。まあ説明するより診てもらう方が早いかな」
エリファラスはそう言うと訓練場の中心に立った
「オッケー始めてくれ」
彼の掛け声とともに彼の周囲にターゲッターと呼ばれる的が出現した
その様子を二人は固唾を飲んで見守る




