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獣人族の国再び13

 最後の階層には女性が一人で立っていた

 彼女はこちらを見るとお辞儀をして話し始めた

「私はワコ様に使える天使アメノイナナキビメ、ワコ様にいただいた我が使命、全力で遂げさせていただきます」

 イナナキビメさんはどこからか槍を繰り出すと構えた

「これは生体槍力殺神槍(りきころしかみつやり)。魔を持つ者を撃ち滅ぼす槍です。私には神力以外どのような力も扱えませんが、だからこそこの槍が使えるのです」

 イナナキビメさんが持つ槍は神力以外の全てを消し去る力を持ってるらしい

 現にその槍が構えられただけで周囲の力の流れがピタリと止まってしまった

「周囲に一切魔力が感じられない。これって、精霊様」

「うん、僕達みたいな精神生命体にはかなり不利な状況だね。傷を受ければそこから魔力が流れ出しちゃう。それに、回復ができないし、僕に至っては魔法が使えなくなっちゃう」

「大変じゃないですか!」

「そう、大変なんだよ!」

 イナナキビメさんはもう既に戦闘態勢。こっちが構えるのを待ってくれてるみたい

 それならこっちも

「精霊刀、亜守徒羅(あすとら)

 この刀は鬼ヶ島でもらったものだ

 最初は名前がついてなかったけど、僕の力を受けて変化したことで名前がついた

 今はまだ精霊刀だけど、このまま僕の力を吸収し続ければ神刀になるのももうすぐって感じかな

「白刀、散雪」

 ハクラちゃんも自分の刀を抜いて構える

 あの槍、触れるだけでも危なそうだからハクラちゃんは自在に変形させられる散雪を大剣に変えていた

 相当重そうな見た目だけど、ハクラちゃんは軽々持ってる

 さて相手はまだ動かない

 こっちも動きたいけど、どこを見ても彼女には隙が無い

 動いたら槍の一突きですぐやられちゃうヴィジョンがありありと見えた

「はぁ、動かないのなら私が動きましょうか? そんなことでは強くなりませんよ?」

「で、でも隙が無いから」

「ないなら作りなさいな」

 イナナキビメさんがスッと動いてハクラちゃんの刀を弾き飛ばした

 え、今何が起こったの?

 動き始めの部分は見えたんだけど、気づいたらハクラちゃんの刀が宙を舞っていた

 全然見えない。速いとかそんな次元じゃなくて、まるでそこまでの一連の流れをカットされたみたいだった

「あ、あれ? 何で刀」

「危ないハクラちゃん!」

「へ?」

 ハクラちゃんのお腹に深々と槍が刺し入れられ、そこから魔力が破壊されていくのが分かった

「油断は命取り、次の生へのいい教訓になりましたね」

「ハクラちゃん!」

 まずい、この迷宮での死は本当の死

 ハクラちゃんの体が段々と破壊に侵食されて、光の粒子になって消えた

「え、嘘、そんな簡単に」

「ふふ、次はあなたの番ですね。もう一度死んで新しい生を楽しみますか? それとも無となりあなたという全てを消し去りますか? ちなみに今の子は無に帰しましたよ。ふふ」

 ハクラちゃんが、無になった?

 それって、魂すら破壊されて消えちゃったってことなの?

 そんな、そんなことって

 だって、簡単すぎるじゃ、ない・・・。あの子が、いなくなったなんて信じれない

 僕はぐるぐるとした気持ちが修まらなくて、それで、目の前が真っ白になって

 そこからどういうわけか僕の中で何かが弾けた感じがして、体内の力の流れ全てが一緒になったような感覚があった

 何だろうこれ、なんだか力が有り余って苦しい

 無いはずの心臓の鼓動のようなものが胸の奥でドクドクと脈打つ

 天雷

 バチバチとした雷が僕にまとわりついて力の流れが変わった

「こ、これは、天雷!? 神の力を一精霊ごときが使うと言うのですか!?」

 なんだろう、これならあの槍に触れても大丈夫な気がする

 僕はイナナキビメの槍を掴むと砕き折った

「な!? 高硬度の私の槍を砕」

 彼女のお腹に手を当てて、波打つ雷の力を撃ちこんだ

「ガッ! アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 相当なエネルギーの塊、普通なら消し飛ぶところだろうけど、さすが天使、体の半分を失っただけで耐えていた

 でも、それでもハクラちゃんを殺したこいつを僕は許せない

 怒りが、体を止めてくれなかった

 僕は彼女の残った体に手を添えて、力を溜めた

「待ってください精霊様!」

 後ろでハクラちゃんの声がする?

「死んでません! 死んでませんから私!」

「え、だって今完全にハクラちゃんの生命力、消えて」

「ぐ、ふぅ、あれは、一時的に空間内に収納しただけ、です。あなたの力を引き出す、ための、演出だったのですが、ここまでの潜在能力があったとはうかつ、でした。まさか、私が死にかける、とは」

「え? え?」

「ふぅ、少し、落ち着いてきました」

「何だよ落ち着いたのかよ!」

 突込みが追い付かなくて口調が変になった

 あ、イナナキビメさんの体が再生し始めてる

「さて、今引き出した力のように、あなたはどういうわけか神が扱う力を使えるようです。その力はあなたの武器となるはずですが、しかしそれでもまだ足りません。これからも精進なさいな」

「は、はい。その、すいませんでした」

「何を謝るのです。私はあなたの力を引き出せて満足しています。それがワコ様からの使命でしたので」

 完全に再生を果たしたイナナキビメさんと話していると、頭上で力の流れが起きた

 上を見るとお尻が浮いてて、それに続いて下半身が出て来た

「うんしょ、んしょ、よいしょっと。なかなかいい戦いだったわん」

「ワコ様!」

 え、この小っちゃい女の子がワコ様!?

 あ、でも確かに神聖な気配を感じるから間違いなく神様だ

 そしてワコ様は満足そうに僕に近づいてきて僕のお尻の匂いを嗅ぎ始めた

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