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三獣鬼と三妖鬼4

 目が覚めると少し硬い布団の上に寝かされているのが分かりましたわ

 鼻には何やら紙が詰められ、口の中に鉄の味がありますの

 そう、わたくしはタイコウボウ様の素晴らしすぎる筋肉に当てられて気絶してしまいましたの

 まだぼやけた視界であたりを見渡すと、ミドリコがちょこんと座っていましたわ

 どうやら心配してくれていたみたいですわね

 わたくしが目を覚ましたのを見て飛びついてきましたわ

 フフ、同い年ながらもミドリコは妹のようですわ。クロハ様もハクラ様に対して日々このような気持ちを持っているのでしょうか?

 いえ、あれはちょっと違いますわね

 家族に対する愛じゃない気がしますわ

 ま、まあ今はそれはどうでもいいですわね

 そういえばモモネさんとタイコウボウ様はどこへ行ったのかしら

「モモネさん、水汲み、タイコウボウ様、薬取りに行ってる」

 ミドリコがキョロキョロしている私を見て答えてくれましたわ

 モモネさんも私を心配して急いで水を汲みに行ってくれたみたいですわ

「もうすぐ、戻る、思う」

 ミドリコ、わたくしの前ではよく喋ってくれますのよね

 まあ家も隣同士で一番仲よしでしたものね

 わたくしの家は鬼ヶ島でも指折りの豪商の家、対してミドリコは忍の技術を受け継ぐ武闘派の家系

 ミドリコは幼いころから人見知りが激しかったですわね

 でも仲良くなりたかったから毎日声をかけ続けていたら、ようやく心を開いて少しずつ話してくれるようになりましたの

「あらまぁ、目が覚めたのねぃ」

 モモネさんが戻って来ましたわ

 その手には水瓶が下げられていますわね

「ほら、これを飲みなさいねぃ」

 お水はとても冷えていまして、少し熱いこの部屋で汗をかき、乾いた喉を潤してくれましたわ

 何故でしょう、ただの水の筈ですのに空気のようにスーッと体にしみわたるようなのどごしでしたわね

「もう大丈夫そうだね」

 そこにタイコウボウ様も戻っていらっしゃいましたわ

 ハッ!鼻の紙を取りませんと! こんなあられもない姿、恥ずかしいですわ!

 わたくしは急いで鼻に詰まった紙を取ってタイコウボウ様に向き直りましたの

 ああ、何と凛々しいお顔なのでしょうか

 頬を赤く染めていますとタイコウボウ様が懐から何かを取り出され、わたくしにくださいました

「これは造血作用の仙薬だよ、飲んで、気分がよくなるから」

 その丸薬を口に含み、水で飲み下しますと、先ほどからくらくらとしていた頭がすっきりしましてよ

 このような素晴らしいお薬をわたくしのために! わたくしは増々タイコウボウ様にぞっこんらぶですわ!

 ぞっこんらぶというのは三幽鬼の一人、マリハが教えてくれた深い愛を示す言葉ですの

 まさにこの今の状況にぴったしではございませんこと?

「どう? 気分はよくなったかな?」

「はい! ありがとうございますタイコウボウ様、その、恥ずかしいお姿をお見せして申し訳ありませんわ」

「いえいえ、まあ君が大丈夫そうでよかったよ。それで、ジョカからの手紙のことなんだけど、君たちは童子に成るために修行がしたいんだったよね? 本来は八仙たちがここにたどり着けた人間や君たちのような鬼仙の修行を請け負っているんだけど、今彼らは魔族国に友好を結びに行ってるからね」

「魔族国にですか!?」

 驚きましたわ

 だって魔族と言えば世界征服を企んでいた魔王の手下たち、歴史を読み解けば今でも和平が成立したとは思えませんもの

 それほどまでにかつての魔族や魔王は残虐だと聞きましたのよ?

 確かにうわさでは現魔王は非常に優しく平和を愛する存在だと聞き及んでいます

 それでもまだわたくしは信じれませんの

 それは恐らく世界中の方がまだ同じ気持ちだと思いますの 

 何せ前魔王の脅威はつい最近までありましたもの、恐怖は未だに人々の心に根付いて離れていないのですわ

「君も、魔族は怖いと思うかい?」

 驚きましたわ、まるでわたくしの心を読まれているようです

「ごめんね、こんなことを聞いて。でもね、魔族たちも戦争なんてしたくなかったんだ。でもやらなきゃ殺されるから、仕方なく。それこそ今代の魔王は平和に向かって歩みだしている。まだよく分からないかもしれないけれど、それでもそんなに嫌ってあげないで欲しいんだ」

「はいもちろんですわ!」

 ええそうですとも、タイコウボウ様の言うことに間違いなどありませんのことよ?

 それほど信じさせてくれるまでにタイコウボウ様のお声は甘くお腹の奥底に響くような、何というのでしょう、わたくしの心にしみわたるお声ですの

「よし、それじゃあ修行は午後から始めようか。僕の修行はジョカほどじゃないけど厳しい、ついてこれるかな?」

「「「はい!」」」

 いよいよわたくしたちの修行がはじまりますの

 見ていなさいアカネ、きっとあなた方を超える童子になって見せますわよ!

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