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人間の街2

 開拓地は森を切り開いており、かなりの広さがあった

 それこそ街一つ分はある

 木で出来た家がすでに何軒か建っており、数十人ほど広間に集まって話し合いをしているようだ

 今ここにいるのは僕を含めた精霊五柱

 妖精たちは近くの森に待機させている(忘れててごめん)

「すいません、開拓民として派遣されてきたのですが」

 そう話しかけると彼らは一斉にこちらを振り向いた

 彼らの中には人間だけでなく、獣人や蟲人もしくはインセクトイド、エルフと言った亜人種も混ざっている

「おお、連絡はもらっている。これからよろしく頼むな」

 その中のリーダーらしき男が握手を求めてきた

 彼は開拓村の指揮をしているルドラ・マゼリオンという人間

 その手を取り、集まっている理由を聞いてみた

「あぁ、実はな…」

 彼が言うには、森の木を切り出していると、どこからともなく巨大な阿修羅熊という六本腕に三つ首のの熊が現れた

 これは魔物なんだけど、今回現れたのは通常の倍、6メートルもある

 それに、通常黒い毛並みをしているはずの阿修羅熊だがこの個体は真っ白らしい

 ユニークモンスターと呼ばれる特殊な魔物だという。幸いにも見つからずに済んだみたいだけど、放っておけば危険だ

 ヒソヒソとグノームのアスラムが何か言っている

「リディエラ様なら、倒せます。簡単に」

 彼女はどんな相手だろうとステータスを見破ることができる。そんな彼女が太鼓判を押すのだから大丈夫なのだろう

 そこで自分たちが討伐すると提案してみた

「お嬢ちゃんたちがか?無理無理、やめときな。討伐隊の派遣をギルドに依頼するから大丈夫だよ。まぁ派遣までは一週間はかかるからそれまで俺たちは待機だな」

 別段急ぐわけでもないのでそれでいい。でも、僕は試してみたいという気持ちがあったんだ。だって、やっと自由に体を動かせるんだ

 見えるようになったこの目で、走れるようになったこの体で、いろいろ試してみたかった

 なので内緒で討伐に向かうことにした

 夜になると彼らの目を盗んで森へと入っていく

 松明はばれるといけないので付けていないが、僕たち精霊は夜でも昼間のように見渡すことができるので問題ない

 しばらく森を進んでいると、魔物や動物の姿が見え始めた

 それらは本能的に僕たちの強さを分かっているのか、物陰から見るだけで襲ってくることはない

 気配を感知しながら周囲を警戒する

 すると、シルフのフーレンが声をあげた

「リディエラ様~、前方から何か来ます~。すごく、大きいです~」

 ゆったり口調で話すフーレン、彼女は風の精霊魔法による感知能力に秀でているので警戒をしてくれていた

 僕らの前に木をなぎ倒しながら何かが突進してくる

 一目見て分かった。真っ白な毛並みに六本の腕、三つの顔。これが阿修羅熊のユニーク個体と言うやつなのだろう

 大きい、あまりにも大きい

 正直怖かった

 前世で目が見えていた頃もここまで大きな動物をまじかで見たことはなかった

 それが爪を振り上げ襲い掛かってきているのである

「ひっ」

 思わず小さな悲鳴を上げてしまった

 エンシュとテュネが僕をかばうように前に出る

 それを見て少し気が落ち着いたよ。だから僕は、魔力を即座に込める

 そして、魔法を発動させた

 この世界に生まれたときからなぜか記憶に刻まれている魔法を

 「フォトンスラッシュ!」

 光の粒子が鋭利な刃物となって阿修羅熊を切り裂き、真っ二つにする

 あまりにもあっけない終わりだ

 無事阿修羅熊を倒した僕らは死体をテュネさんが持つどんなものでもいくらでも入る収納袋へと入れた。どうやら人間の食料になるらしい


 開拓地に戻ると、僕らがいないことに気づいたらしくちょっとした騒ぎになっていた

 嘘をついてもしょうがないので死体を収納袋から取り出し討伐したことを報告する

 怒られた。五柱とも頭に拳骨を喰らい、コブを作っている

 だがそれ以上に感謝もされた

 あのままでは討伐隊が派遣されるまでに被害が出ていたかもしれないのだ

 阿修羅熊を倒した僕らがまだ駆け出しのGランク冒険者だということに全員が驚いている

 この熊は通常の個体でもDランクで、ユニーク個体であったこれはCランクにも相当するのだそうだ


 その日は僕らの歓迎会も兼ねて阿修羅熊の料理がふるまわれた

 ステーキに串焼き、野菜との炒め物や鍋だ。それに、森で獲れた果物もある

 ステーキは肉汁が溢れ、胡椒のような香草が降られており、絶妙な塩加減がされている。噛んでみると、口の中いっぱいに広がるうまみと香り、食感は柔らかくとろけるようだった

 野菜炒めは肉と野菜が絶妙にマッチしているね

 鍋は肉が薄くスライスされていて、酢醤油のような付けダレに付けて食べた

 どれこれも前世では食べたことない(当然だが)ほどおいしかった

 思わず顔がほころんでしまう

 それを見て開拓者たちも笑っている

 僕らは彼らに無事受け入れられたようだね


 余談だけど、僕たち精霊は人間と同じように食物を食べることができる

 食べなくても周辺の魔素を取り込むことで活動はできるので別段食べる必要はないんだけど、やっぱり元人間としてはおいしいものは食べたい

 ちなみに排泄機能はないみたいだ。食べたものはエネルギーに変換され、残りかすは砂のようになって足から地面に流れ落ちていた

 この砂が排泄物?のようなものなのかもしれない

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