妖怪族の国26
レナちゃんは公務のため慌てて戻って行った
さぁ、もうすぐ妖猫族の里だ
獣人の猫族と違って、二足歩行する猫と言った出で立ちの妖猫族も多い
二足歩行する猫は大抵もともとただの猫だったのが、年を経て妖怪族へと進化したらしい
種族名は化け猫で、さらに歳を経て妖力が高まると尾が増えていき、猫又(尻尾が二本)、ネコショウ(尻尾が三本)を経て九尾の猫となるみたいだ
ネコショウ族以上になると人型になるから不思議
しかも尾の数だけ魂があり、ちょっとやそっとじゃ死ななくなる
もし一度死んでも尾が身代わりとなって助かるんだとか
さらに凄いことに、また年月がたてば尾は再生するという特殊な種族、それが化け猫族だ
他には仙狸(狸がついてるけどこれは山猫って意味らしい)という仙力を使う妖猫、猫神(妖力を神力に昇華させた実力派の妖猫)、金花猫(呪力という特殊な力を持った妖猫)などなど、妖力や神力、仙力などを使える特殊な妖猫族も多い
ようするに、結構強い種族なのだ
「にゅあ、めんどくさいけど、ネムが案内してやるにゃー。ネムのおススメお昼寝スポット百選だにゃ。レッツゴー!」
「ネムリ様、そのような暇はございません。ちゃんとしないとお尻たたきですよ」
イネムリちゃんの後ろには、いかにも出来る秘書風の女性(ちゃんとスーツまで着こなしてる)、九尾猫のミアさんがイネムリちゃんを叱っている
「もー、そんな目くじら立てなくてもわかってるにゃ―。ちゃんと精霊様を案内するにゃ」
「申し訳ありません精霊様、ネムリ様は年中この調子でして、実力はあるのですがやる気がないのです」
「そんなことないにゃ! ネムはやる気満々なのにゃ! だから帰って寝ててもいいかにゃ?」
「ダメです!」
ネムリちゃんは叱られながらも案内を始めてくれた
「まず! ネムの行きつけお昼寝スポ」
ゴチン!
「痛いにゃ! 何するにゃ!」
「ネムリ様、次はお尻ですよ」
「ぐ、ぬぅ、ちゃんとするにゃ。まず案内するのは妖猫族に大人気! スーパーアスレチックスのライブだにゃ!」
スーパーアスレチックス、通称アスレというのは妖猫族や猫獣人だけで構成された七人組アイドルグループユニットらしい
その人気は他国にも轟いていて、実は鬼ヶ島のアイドルライブにも来ていた
中でもセンターの金花猫族のウルルちゃんは式典などでも活躍するほどの人気だ
癒しの歌という妖術を使えるらしく、聞く者の心と体を癒すという
「精霊様が来るといったら張り切ってたのにゃ」
ライブは貸し切りにしてたらしいんだけど、そういう歌はみんなに聞かせないとってことで、無料のライブを開催してもらうことにした
お金は全部僕もちでね
大丈夫、いろいろあって結構持ってるからね。食や宿以外であまり使い道もないし、こういうことでもないと減らないもん
その日のお昼過ぎにコンサートは始まった
急な呼びかけにもかかわらず満員御礼で、僕たちも大枚をはたいた甲斐があったというものだ
最初に七人の挨拶が始まる
「どもー!スーパーアスレチックスリーダー! 蒼海の癒し手ウルルでーっす! 精霊様!この度は私たちのライブに来ていただきありがとうございます! 精一杯歌いますので最後まで楽しんでくださいね!」
うわ、マイクを使ってないのに大きな声。しかもかなりの美声
一言一言が耳からしみこんで体を癒してくれる
ウルルちゃんのあとはその他のメンバーの自己紹介だ
「煌く赤星! クレナだよ! キララン!」
キラキラ星をイメージしたポーズをとっているのはクレナちゃん。仙狸族の女の子
元気っ子って感じかな
アカネちゃんとはまた違った元気さを感じる
「は、母なる樹翠、ホクトです!」
うわ、すっごくおっきい(何がとは言わないけど)
ホクトちゃんは猫魔族という魔力の高い妖猫族で、見た感じドジっ子なのかも
眼鏡をかけてるところがポイントが高い
「天翔ける迅雷! リンカ!」
かっこよく決めポーズをとっているのはリンカちゃんという雷猫族の少女
雷猫族は雷獣に似た種族で、雷を纏って戦うらしい
少女というより少年のような顔立ちで、女の子の声援がひときわ大きい
「静かなる紫音、ミナ」
無口な印象のミナちゃんはウルルちゃんと同じ金花猫族で、物静かな感じ
一見おとなしそうだけど怒らせると怖そう
いや、なんとなくだけどそう思うんだ
「セクシーピンク、イロハよん」
ん? 一人毛色が違う・・・
主におじさんやおっきな男の人に人気があるこの人はイロハちゃん
大人っぽい雰囲気だけどこのグループはみんな同い年らしい
イロハちゃんの種族は愛猫族という珍しい妖猫族で、愛が強すぎるゆえに一途なんだけど、もし浮気でもしようものならそれはそれは恐ろしい目に合うらしい
この種族も呪力を使うみたいだね
あとは気力も使えるんだとか
「聖なる純白、ミシロです」
驚きの白さ!
ハクラちゃんくらい白いんじゃなかろうか
ミシロちゃんは純粋そうで、ちょっと頭が固そうな委員長タイプかな?
種族は猫獣人だね
自己紹介が終わり、彼女たちのオンステージ!
最初はノリのいい曲から入り、二曲、三曲と休まず歌い続け、最後の十曲目はバラード調だった
どれもこれも素晴らしい曲ばかりで、彼女たちの歌声が込められたオーブが飛ぶように売れていた
あ、グッズもある。うん、長蛇の列だ
楽しい時間を過ごしてその日は宿へ
宿と言ってもネムリちゃんの家、通称オネム御殿
ここは眠りに関するグッズがすごくて、ネムリちゃんの情熱が詰まっている
眠りにいい食、環境、音楽、寝具
どれもこれもネムリちゃんの安眠のために集められたものらしい
すごい情熱だ
ネムリちゃんが僕らにそれぞれぴったりの安眠グッズをくれて、それで眠りについた
なんということでしょう、布団に入ったとたんに心地よい眠気が、睡魔が、僕たちを包み込んだ
そして翌朝、今までないほどすっきりした心地で目覚めた




