獣人の国12
幻獣地区は危険地区と神獣地区に挟まれている
職員さんに連れられて幻獣地区につくと辺りは焼け野原のようになっていて、ところどころに幻獣の死体や傷ついた幻獣が倒れていた
僕はまだ生きている幻獣を、治癒の精霊カイユに教わった治癒魔法で治療して逃がす
暴れているキメラは見境なしに目についた生物を襲っているようだ
そのキメラがどうやらこちらに気づいたらしく、怒り猛るように突進してきた
慌てて結界を張ったけど、激しい金属音のような音があたりに響き、今にも結界が壊れそうだ
キメラはライオンの口を開くと激しい炎を吐き出した
結界で何とか防いでいるけど、職員さんが熱によってダメージを受けている。でもその熱をエンシュが吸い取り、職員さんの体を水の結界でテュネがくるんだ
「本当の炎というものを見せてあげますよ」
エンシュは僕にそう言うと体から炎を吹き上げた
キメラはエンシュに向かって再び炎を吐いた。直撃しても意に介さずそのまま精霊魔法を行使する
まるで地獄の業火のように燃え盛るエンシュの炎はキメラを包み込んだ。悲鳴を上げるキメラは蛇の口から水を吐き出すと体についた炎を消し始めている
「便利なものですね」
アスラムがその消火作業を止めるように地面に手を置き、キメラの足元を沈下させた
突然のことに驚くキメラは、とっさのことであるにもかかわらず体勢をすぐに立て直して、その穴から飛び出ようと足を踏ん張った。しかしフーレンが風でそれを抑え込む
飛び出せないキメラは怒りに任せてヤギの頭から雷を繰り出した
それを僕は全て吸収し、力に変えて手に集約させ、力任せにキメラの頭全てを殴って気絶させることができた
ようやくキメラの動きは止まって気絶という形でおとなしくなったよ
一通り暴れまわったキメラは厳重に封印を施されたうえで危険地区の最奥に運ばれていった
「ありがとうございます! 精霊様!」
職員たちは一様に感謝を伝えてくれる
怪我をした人たちも治癒魔法で傷一つなく回復させれたので良かった
運ばれていったキメラはこれからどうなるのか聞くと、野生なので今回のことはこちらに落ち度があるとのこと
つまり、危険地区の包囲を破られたのは公園管理者のミスなのでキメラはおとがめなし。ただ、今後出ることができないようより強固な守りのあるAランク以上の危険生物が住む地区へと移されるそうだ
無事にキメラの制圧を済ませると、僕らは空を飛んで公園を去るように見せかけて近くの森へと降りた
姿を獣人の姿に変化させるとまた宿に戻り、さも今まで隠れていましたとばかりに危険のなくなった公園へと安心した顔で戻った
警報は解除されて危険地区のキメラが破った柵も直されて、普段通りの公園に戻ったからね
静寂を取り戻した公園で僕らはまだ見ていない動物たちを見るためにその日一日を使うことにした
公園はまだまだ全容を見れてはいないけど、今回はこのくらいにしておこっかな
いずれまた来ようと思う。もちろん、セルズクに会いに
そんなことを思っていると、あの時僕の肩に止まっていたセルズクがまた僕の肩に止まりに来た
職員さんがそれを見て「ずいぶん懐かれてますね」と笑った
セルズクを撫でながら「はい」と答えて職員さんに別れを言う
セルズクにも別れを言って公園から出ようとしたのだけど、どういうわけか離れてくれない
ヒシと僕の肩に止まってまるで別れたくないと言っているようだ
「どうやら~、リディエラ様に懐いてしまったようですね~。 このままこの子を連れて行ってはどうですか~?」
フーレンがそう言うけど、公園はセルズクを保護しているので僕らの一存では決められない
だから職員さんにセルズクを任せようとしたんだけど、職員さんは「ぜひ連れて行ってあげてください! この子も喜びます!」なんて言ってきた
なんと許してくれたのだ
あっけに取られていると、あれよあれよという間に手続きが完了し、セルズクは僕のパートナーになった
職員さん曰く「通常懐いてもこのようなことはありませんが、あなたになら任せられそうなので」と一言
どういうことか詳しく聞いたけど「直観です」とだけ言われて的を得ない
でもまぁ悪い気はしないのでセルズクを連れて行くことにした
嬉しそうなこの子を見ていたらもう連れていくしかないと思った
さしあたってこの子に名前を付けようと思う
実は、初めて見たときから決めていた
梟に似ているからフクちゃんだ。福を招いてくれそうだしね
こうしてセルズクのフクちゃんを加えて僕らはまた旅に出る
次はまた首都に戻って観光名所を聞きこもう
公園は確かに目玉だけど、それ以外にも観光名所はまだまだあるはずなのだか




