危機8
メルカは悲しい女性の罪を断ち切るため、彼女の力を全て自らに吸収し、やがてヴィータはゆっくりと崩れて行く
「ああ、ありがとう優しい人。最後に、妹に会いたかったけど、こんな罪深い私にそんな願いはかなわないよね」
そんな崩れ逝くヴィータの目に映る走ってくる愛おしい姿
それは紛れもなく妹エーテリアだ
「まさかそんな、ヴィータ! なぜ、ここに」
「ああ夢じゃないだろうか、エーテリア・・・。ごめん、ごめんね。自分を止められなかった。あの時から私は、私じゃなかった。そんなの言い訳に過ぎないだろうけど、私は・・・」
どんどん崩れて行く体
「ヴィータ、いえ、姉さん、あなたは、正気に」
「私のことは忘れて。可愛い子、私が言うのはお門違いだけど、どうか、安らかに、幸せになって」
「姉さん、いや、姉様」
エーテリアはヴィータをギュッと抱きしめた
「ああ、幸せだ。エーテリア、最後にこんな、幸せで、私、は・・・」
ヴィータは完全に崩れ去り、魂はどこかへと飛んでいった
「エーテ!」
突然走り出したエーテリアを追いかけてきたのは彼女の仲間のアーキアとアモン
さらにそこに巨大な竜のようなものがずしんと大地を揺らして着地した
「まずい、もう来てしまった」
黙示録の獣と呼ばれる獣がリルカに近づく
「きゃっ」
そしてリルカをぺろりと舐めた
「あなたもしかして」
リルカは獣の頬を優しく撫でる
「やっぱり、キューちゃん」
「クアアア!!」
リルカがキューちゃんと呼ぶと、獣は嬉しそうに鳴いた
「え、あの獣が、なんで?」
アーキアはあっけにとられる
「あなた達、種の子達ね?」
「その獣は危険な黙示録の獣です」
「あら大丈夫よ。私の子ですもの・・・。あら? あなた何か混ざってるわね」
リルカは獣の胸に手を当てると何かを引きずり出した
「うわ気持ち悪! 何ですかそれ」
「この子、何食べたのかしら。これのせいで自分の力を抑えきれなかったみたい」
そのせいで獣は暴れ、黙示録の獣として封じられていた
レノンナの胸を貫いたのも、殺そうとしてからの行動ではなく、力を抑えれなかったからだ
「これでよし」
「クゥウウン」
嬉しそうに頬ずりする獣
竜のようなみためから子犬のような小さな、可愛い獣に変わる
「一件落着? かな」
獣と戦ったことで五人はついに花を咲かせた
そして、その中でもレノンナは死にかけたことで大きな花を開花させた
「なんだ、ヴィータもそいつも使えないな。あっさりすぎる」
空から声が響く
「ヴィータのやつ、せっかくいい素体だったからあの時僕の因子を植えてやったってのに。まぁ頭がおかしくなったから失敗だったけど。それにその獣にしてもそうだ始祖の獣とか面白そうだったからさ、そいつにも僕の因子を植え付けておいたのにさ。それをこんなに簡単に取っちゃって。あーあやめだやめだ。アウルとかいうあのバカも楽しませてくれると思ったから泳がせてたけど、下らない思想を」
「あなたは何者です。始祖の獣に因子を、ということは、私と同程度の年齢ってことになりますけど?」
「ああそうだな。僕はXXXXXXXXX」
何を言ったのか聞き取れなかった
言語化できない何かを口から吐いている
プロフェッサーの姿が変わった
人型だが顔に穴が開いている得体のしれない何か
「もういいや、ここももう僕が楽しめるばしょじゃあない。全部消そう」
笑った
顔がないため笑ったのかどうか表情では分からないが、気配がただただ楽しそうに笑っている
ソレは手のようなものを翳すと、獣がシュバッという音とともに蒸発して消えた




