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無事…なのか?

一方そのころ王女様チームはというと、前後道の状況の把握に追われていた。


「…どうだ?」

「いろいろマズイかもしれない。

ザック達が向かった方面からの反応が変化していてな…」

「2人は無事なんだろうな」

「安否は分からんが、戦況に何らかの大きな変化が起きたのだけは間違いない。」

「どんなだ?」

「先ほどは破滅的な危機だったのが、今はこう精神的な何かが…」

「何を言ってるんだお前は」




『大量のレッサードラゴン』、『謎のドラゴン』以外に情報が全く入ってこないため、一喜一憂すらできない。

むしろ、人間の中で頭ひとつ抜けた程度のレベルでは、ドラゴンの群れがいると察知できただけでも奇跡的なのだ。



そんな時、3人の『仲間の証』に反応が。



『カムロさん、アベルさん、王女様、聞こえますか、応答願います』

「『ケー!?無事か!?

そっちの状況を教えてくれ!怪我は!?ザックも無事か?』」

『えっと…謎のドラゴンはなんとかはなりました。自分もザックさんもなんとか生きてます。』

「『おお!』」

「『よかった!!』」

『ただ…なかなか厄介なことになっちゃいまして、ちょっとそちらに向かえそうになくてですね…どうしたものかと』

「『どうした、疲労か魔力切れで動けそうにないのか?』」

『いやぁ…もっとこう…アベルさんが別の意味で身の危険を感じ出すような面倒ごとと言いますか…あっアベルさんは大丈夫ですか?』

「『ああ、お前達の方からどうとか言って真っ青だが、そんなにマズイ状態か?』」

『やっぱりそうですよね…

カムロさん…絶対に怒らないって約束できますか?』

「内容によるな。」

『絶対に!怒らないって約束できますかっ?』

「『だから内容に』」

「…カムロ」

「はっ」

「アベルの様子を見る限り、相当なストレスは避けられそうにありません。

諦めて状況を受け入れましょう」

「エリーゼ王女がそう仰るなら…」

「『ケーさん、我々も急いでそちらに向かいます。』」

「うぅ…ぅ…ん、カムロ…」


指差す先は馬車の進行方向とは逆。

見れば三十騎だがそこらの馬がこちらを見つけ、乗っていた者の大半が剣に手をかけていた。当たりだ。


「ん?…『すまん、その前にこちらにもやることが残っていてな。少し遅くなる。』」

『来ましたか』

「『ああ。召喚と強化、頼めるか』」

『相手の数は』

「『50はいない。』」

『カードは誰が?』

「『護身用分以外、私が全て預かってる』」

『青いのと黄色いのを出してください。順番に召喚します。

魔力繰りの関係上、低ランクモンスターは消滅しますが気にしないでください。』

「『なんでもいい。始めてくれ』」



数分後、モンスター軍とそれを従える騎士団長が43の軍勢を返り討ちにしたが、ザックチームの元に到着した王女様チームは目の前の常識はずれな光景に口が空いたまま塞がらなくなっていた。


「ガーーハッハッハッハッハッハッハ!

お主はお主でなかなか見どころがあるんじゃモンなぁ!」

「へへっ!ダンナの方こそ、邪神化っつーから極悪クソヤローだと勘違いしてたが、話してみりゃなんだよ、話わかるいい漢じゃねぇかよ!」



「一体この状況は…」

「どういうことなんだ…」

「あちらが竜王である金剛の竜王ドラゴルド、後ろにいる彼らは左からグレン、シアン、ネロ、ヴァイスです。」

「「……」」

「ケー」

「はい」

「すまんが0から説明してくれ。こと細かに。」

「ですよね…」



自分はここまでの出来事を文字通り全部話した。


①アベルさんが言っていた謎のドラゴンというのは邪神化する途中だったドラゴン一族であること。


②どうにかこうにか邪神化の沈静化には成功し、謎の真っ黒なドラゴンは金色だの赤色だの色とりどりに変化。今ザックさんの対面で呑んでいる金ピカドラゴンがドラゴルドであること。


③ドラゴルドとコチラの特攻隊長が意気投合してしまい、どこからか酒を引っ張り出して酒盛りを始めちゃったこと。


④どうやら今後も是非仲良くしたいとのことで、さりげなく種族間交易に発展しかけていること。


まで


「「な、なるほど…大変でしたね」だったな」

「ええ。王女様の馬車が列から外れた上に、グリフォンに追っ手、ドラゴンに邪神化現象に、種族間交易問題に。報告書や始末書だけでもすごいことにな…

あっ!そいえばアベルさんは?姿が見えませんが…」

「馬車の中だ。泡吹いて気絶してな。真っ青通り越して真っ白だ」

「アベルさーーーん!!!今行きまーす!!」



「ん? よおっカムロォ〜 無〜事だったかァ〜。おっ!王女さ〜んも相変わらずべっぴんさんでな〜によりだぜぇ〜」

ピキッ

「…」

「あ〜れれ〜?どったのよ顔なんか赤くしちまってぇ〜、オメェも呑んだんかぁ?」 

ピキッピキピキっ

「ザック…お前な…!」

「ありゃっ?もしかしてカムロく〜んご立腹な感じぃ?」

プチンッ

「仕事中に酒を呑む騎士がどこにいる!!!」

「そんなでっけぇ声出すなよぉ

相手ぁ無敵のドラゴン様だぜぇ?仲良くしてくれるってんなら出された酒分くらい悪りぃこたぁねぇだろぉ?

それとも、出された酒を断る無礼もんが騎士なんかぁ?」

「うっ…」


おお…酔っ払いザックさんが素面カムロさんを論破した。

人は知識があればいいってモノではないって聞いたことはあるけどこういうことなのか


「おっ!お主が話に出ておった固ーいアタマのカムロじゃモンな?」

「かたっ…!?

し、失礼いたしました。私はヴィクトリア王国騎士団長をしておりますカムロ・ベナルッティと申します。この度は大変な状況の中、お話しをさせていただ」

「いらんいらんッ!我らに固ーい挨拶は不要じゃモン。それよりお主も王女もコッチに来て座るんじゃモン。お主らとの出会いに乾杯じゃモン!」


挨拶どころか自己紹介もないまま王女様まで酒の席にあげられてしまった。


さーてどうしよ…まともに話せる人が酔ったらいよいよ王国に帰れなくなってしまう。


「ヒィッ もうしわけ…ございませ…ん

明日の…日の…出までには必ず…ていしゅ…つ…」

「アベルさんっ気を確かに!報告書の山は襲っては来まてせんよ!」


やっぱり…この人、悪い結末が視えてるみたい。


今頃は王都も王女様がいない事には気付いているだろうし、本格的に相手国に殺されたと勘違いして外交問題はもちろん、森のど真ん中で酒を呑ませているドラゴン一族にも問答無用で攻め込まれるかもしれない。


そうでなくても魔物とされるドラゴンと酒を呑んで危険に晒したとかなんとかでカムロさん達の首がはねられるかもしれない。


奇跡的にうまく話が進んだとしても、大量の報告書・始末書。



現時点で確定しているわけではない未来のストレスで死なせないためにも一旦落ち着いてもらわないと。

確か敵味方を問わず落ち着かせるようなカードあったな。


「アベルさん、ちょっとごめんなさいね。

魔法カード『擬似夢治療ドリーミングエイド』発動」


すぅ…スゥ…


よし。


次はあっちの酒盛りをどうにか延期にしてもらわないと


「ドラゴルド、ちょっといい?」

「おっ戦友、なんじゃモン?」


いつのまに戦友になった?

まあいいや、その件は後だ


「お楽しみのところ悪いけど…こちらの王女様、急いで王様の元に帰らなきゃいけなくて。お酒の席はまた今度に出来ないか?」

「なにか用事でもあるんじゃモン?」

「カクカクシカジカで王女様達の命が危ないんだ。」

「オイッ」「ちょっ」「説明雑っ」

「おー!そうかそうか!隣国から命を狙われ、いくさになるかもしれい…か!

我も配慮ができておらんかったじゃモン。すまんじゃモン。」

「いや伝わんのかよ」

ホッ

ホッ


「良いことは急げじゃモンからな。なら我らが乗せて行くじゃモン」

「「「「え?」」」」







王国領上空を突っ切る白と黒の巨大な飛行物体。

先頭を行く白い竜がヴァイス、後ろの黒い竜がネロ。


「綺麗…!」

「姫サマ、揺れや風圧の方は如何でございまスル?」

「大丈夫です。快適そのものです」

「本当でございまスル?なにかあればお申し付けくださいでありまスル。

魔法なり飛び方なりで調整いたしまスル。」

「ありがとうございます。」

「おやすみ中の騎士サマは?」

「ええ。おかげさまで顔色もかなり良くなってまいりました。」

「そうでありまスルか。ではこのままお紅茶が溢れないようにのんびりとまいりまスル。」





「うっひょーーーーーーーーーぅ!きぃもちぃーーーーっ!」

「落ちるっ!落ちるぅうううううう!」

「チッ おい後ろのクソうるせーの、これ以上暴れんなら望み通り落とすぞ」

「ぅおいやめろっ!冗談にもならんぞっ!」

「チッ クソメンドくせぇなぁ ほらよ」


ズブっ…ズブズブぅ…


「なっ手足がっ 貴様なにをっ!?」

「闇魔法の影空間もしらねぇのかクソ猿が。

落ちたくなけりゃそん中入ってろ。マジでクソうぜえから。」

「くっ…覚えてろ…」

「あんたは入んなくていいのか?」

「ん?オレぁコッチ派だから気にしなくていいぜ。なんならもっとビュンビュン行ってほしいくらいだな」

「フンっ 悪くねーが、今それやるとクソ世話焼ヴァイスがクソうぜぇからまた今度な。」

「へへっ オレもあっちでのびてる兄貴アベルによく「もうちっと慎重に周り見ろ」とか「対策と準備してから動け」とかギャアギャア言われっから分かるぜ。

お互い口うるせぇのが近くにいるから大変だよな」

「フンっ あんたならドラゴン族とうめぇ酒が呑めそうだな。

…ヴァイスみてぇなん以外は」

「だな。」








「見えてきたでありまスル。このまままっすぐのあの街であっているでありまスルか?」

「はい、王都セイネリアで間違いありません。」

「あの距離ならおかわりの一杯が空になる頃に到著できまスルが、いかがでございまスル?」

「空からの景色と共に満足いたしました。ご馳走様です。」

「ご満足してもらえてよかったでありまスル。

では、地上の騎士サマ達に襲撃と間違われるとそれもまた危険でありまスルので、あの城壁より手前に降りまスル。」

「そうですね。お願いします。」

「かしこまりでありまスル。」

「…」

「…大恩人サマのことが気になるでありまスル?」

「ええ。ケーさんは大丈夫でしょうか…」



ヴァイスに2人、ネロに1人、彼らの魔法空間内に1人と2頭、馬車1台。

予定外で得た拾い土産が1人ついてきてなかった。

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