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邪神化を食い止めろ

「『バトル…スタート!!』」

「しゃあ!いくぜっ!!」


戦闘開始とともに腰に携えた剣を抜き、わざわざレッサーが密集する群衆に飛び込んでいった。戦闘自体は好きなのね



こっちも準備を進めよう


『ハミングバード』

『見習いキューピット』

『オシ鳥の夫婦』を召喚し、コスト軽減枠を用意。


魔法カード『ストームドロー』を使用し手札を3枚増やす。


生命いのちの御神木』を配置。

『天獣ペガサスポニー』をレベル2で召喚


「頼むぞー」


小ぶりな茶色いペガサスにまたがり、数メートル上から見下ろす位置取りへ。


さてとザックさんは…囲まれた状況をもろともせず、剣でレッサーの首をはね、また次のレッサーを一刀両断し、飛びかかってきた別のレッサーをノールックの左手でキャッチしてそのまま心臓に刃を突き立ててはまた投げていた。


問題ないな。


「『ドロー』…よしっ

『魅惑の聖弓を召喚』」


コレを自分が装備して、いつの間にやら自動で背中に装着された矢筒から矢を取り出す。


テレビで見たアーチェリーと弓道部のイメージでそれっぽく構えてみる。


あれ…使い方が自然に分かる…?


弓には全く触ったことがないはずの自分がまるでエルフの村出身であるような、不思議な感覚を感じる。

先ほど刀を初めて持ったはずのザックさんが何の戸惑いもなく使えてたから、装備カード自体に適正を与える効果でも付いているのか。

それなら話は早い。

鑑定スキルでレッサーのオスとメスを見分ける。ザックさんが数を減らし続けているので死体の数を抜いて、メスが4匹、オスが15匹。メス1に対して雄が3〜4もいる。

ならオスに打てるだけ撃つ。逆ハーレム状態を作ればザックさんが一気に叩くまで。


魔力50を消費して状態異常【魅了メロメロ】を与える矢を作成する。

デバフ用の武器なので攻撃力はほとんどないも同然だ。追加で消費すればダメージは入るらしいけど今は要らない。

490あるから…450消費して9本作る


コレをセットして、狙い…撃つ!さらに撃つ!撃つ!撃つ!撃つ!


当たった個体は一瞬動きを止め、鼻息を荒らしてメスを探す。

目に入ったメスは逃さねえっ!と言わんばかりに近づくがライバルが多い。すぐにメスの取り合いで別の戦いが始まる。



「オイ!ケー!」

「あっ はい!?」

「ちっと飛ばしすぎだ!

こんなんに魔力使ってっと後もたねえぞ」

「え…でも…」

「オメエが このっ! 魔力切れでくたばっちまっちゃ オラっ! 意味ねえだろうが!

オレなら腕や足がッ なくなっても くそがッ オメエが治せっけど、オレはオメエを治せねえかんな!!」

「それでもっ…!」

「そんな心配ならッ ちっと黙って見てろッ」



少し余計なお世話が過ぎたようで、そこからは本当に何もしなくてもザックさんとレッサーの頭数がどんどん近づいていく。


手札と魔力が時間経過で整う頃には返り血まみれ無傷な騎士が、ひと仕事終わって飲みのメンツを誘いに行く上司のように歩いて戻って来ていた。


「な?言ったろ、アイツら相手にそんな飛ばすこたぁねえって」

「はい。流石です」

「でも、オメェの援護アシストもなかなかだったしよ、ホントに死んじまっちゃ文句もクソもねぇ。だから」


ザックさんの眼光が今までにないほど強くなり、ゆっくりと歩みを進めるノーマルとその奥にあるボスの影に殺気を放つ。


「こっから先はオメェに作戦を任せる。

"後で"さんざん文句言わせろよ。ゼッテーな」


文句を言う、文句を言われるのは双方が生き残っていないと成立しない関係性。


絶対に死ぬな、死なすなってことか


「了解」






ただ、相手は一般男性より一回りほど強い“劣等種”が38匹、災害級のモンスター5体、対してコチラはたった2人。

普通ならもうとっくに喰われているのに、まだ怪我人1人出ていない。それどころかノーマル四天王がいまだに咆哮ブレス1つ放ってこないし、寄ってすら来ない。


この群れ何かおかしい。


「そういや変だな。」


よく見れば眼が不自然に光っては消え、鱗も所々剥がれている。

後ろのボスがモヤがかかって影しか見えないのも気になる。


「『鑑定スキル』

……」

「なんか分かったか?」


「ごめんなさいザックさん

倒すのは一旦中止にします。」


「はぁ!?何考えてんだ!

アレ倒さねえとココ通れねえだろ!?王国だって危ねえし!」

「鑑定スキルで【邪神化の呪い:不完全】と出ました。

今なら討伐するよりも彼らを呪いから開放した方がいいかもしれません。」


条件の指定がないホワイトヒールなら呪いの一つや二つイケるかもしれない。


「できんのかよ」

「やるしかないでしょう。

邪神化が進んでしまったら王国どころか世界規模の危機でしょうし。

今から迂回なりして王国に辿り着けたとしても、騎士団を総動員する頃にはもう…」

「オメッ そっち先言えよ!

こうしちゃいらんねえ!

あの剣出せ!なんとかオメェの札を使う時間はかせいでやっから」

「『ドロー』『天空斬刀 風雷丸、召喚』」


カードが剣と刀の形に変わり切る前にガシッと引っ掴んで、その刃にブツブツ言った後、肩に担いでそのまま持っていってしまった。





「苦シィ… 憎イィ…!嫉シィ…!」

「怖ィ!!恐ィ!!」

「ニンゲン…逃…ゲロ…喰ウゾ…ッ!」

「殺…!シタクナ…イイ!!」


グルゥゥ…グッ!グルォオオオオオオオ!!!

ガルルゥゥ…ガゥォオオオオオオ!!


「うおっ!?」「ワアッ!!」

「オイオイ…野生爆発してんじゃねえか?」

「『鑑定スキル』っ!」



マズイ、急激に呪いの侵食が進んじゃってる…もう彼らの意識は良くても6割も残っていなはずだ。

力尽くで討伐しにかかれば5割以上の邪神の力と自分たちの攻撃で彼らの意識は完全に死に、誤差含め5〜7割分の邪神もしくは邪竜となる可能性が高い。


今から試す解呪治療(仮)なら、状態異常カテゴリの超強力な呪いを無条件で治療してくれる“かもしれない”魔法カードを使えばいい。

それでもデッキに入っているホワイトヒールは3枚、それも手札には2枚だけ。一枚じゃ足りない可能性だって全然ある。


「チャンスは1度。

強化レベルMAXにするので、ザックさんの力業と合わせて自分の事を素通りさせて下さい。

使うべきカードは全てボスに集中します。ボスが元に戻れば味方にできるか、他4体の邪神化も止まるかもしれません。

それでダメな時はボスを解呪後にカード化、デッキに加えつつ第二ラウンドです。」

「あれ全部抑えりゃいいんだな。」

「そういうことです。いけますか」

「おうよ。いつでもいいぜ」

「では。

『ザックさんの強化レベルMAX』

仲間スキルカード『騎士の勇姿を使用。』」


「うぉおっほおおおおおお!?」


緑と黄色の激しい光が発せられ、彼のステータスが急激に上昇したのがビリビリと伝わってくる。

理想を言うなら自分も強化したいが、カムロさんの固有スキルは“騎士の”勇姿。ジョブも仕事も騎士ではない自分にはその恩恵は受けられない。


「うっし。

せーのっ吹き飛べぇっ!!」


刀をひと振り。

するとビュォンビュオンバリバリィッと音を立て、モヤどころか周りの木々が悲鳴をあげ、ついには根本から剥がされていく。

味方には優しいようで、服が大きく流される程度で済む。


おかげで未知なるドラゴンの全容が明らかになった。

ノーマル4体足して足りるかどうかの巨体、漆黒すぎて何色かわからなくなってしまった鱗、左眼を除いた全てが怒りや憎悪、破壊欲に染まったソレが邪神の完成を僅かに拒んで苦悶の声をあげていた


「来るぞ!」


突然、2体がこちらに向けて歩き出した。

口元に強い魔力の上昇を感じる…まさかっ!


グルォオオオオオオオ!!!

ガゥォオオオオオオ!!


咆哮ブレス!?


「離れてろ」


ゴゴゴゴゴゴゴゴォォオオオオオオ


「ウォオラァアアっ!!」


大ぶりに放たれた斬撃と2体分の咆哮攻撃がぶつかり、その場の地面を削りながら押し合う。


「クッソ キッチィなッ…!ケーっ行けるか!?」

「はいっ!みんないくぞっ」


2体はザックさんが相手取っていて、2体とボスは意識をまだ完全には乗っ取られていない。

頼むから大人しく解呪させてくれよ…


ポニーにまたがり、一気に距離を詰める。


ドックン…ドックン…ドクン…

ドクンドクンドクンドクン…

ドクドクドクドクドクドクドクドドドドド…

パアアアアアアアアアアーーーーーーン


「うわあぁッ」

「くっ…!なんだこれ…」


黒い衝撃波に弾き飛ばされ、モンスター達が維持できずに霧散してしまった。


「いったぁ…

せ、『生命の御神木』の効果発動

破壊された味方モンスター×1枚ドロー。

よしっ。」


「でっかいドラゴン!聞こえるか!?

今からお前達を苦しめている呪いを解く!

もう少しだけ頑張ってくれ!」

「--…モン…」

「え?」

「身体が…思うように動かぬ…。我は…もう…手遅れじゃモン…。

我は放って…仲間たちを…助けてやって…くれじゃモン」

「お前…優しい奴なんだな。

けど、自分はお前を見捨てない。呪いを解いてお前もお前の仲間も絶対に助ける。

だからドラゴンの長であるお前が最後まで諦めるなよ!」

「フン…人間のクセに…この我に生意気を言うじゃモンか。

気に…入ったんじゃモン。お主…名は何と…いうんじゃモン?」

「神谷啓介、ここらへんだとケースケ・カミヤ。呼び方はケーで。」

「ケー…後生じゃモン。

我と…我の仲間を…助けて…ほしいんじゃモン。」

「もちろん。

待っててもお互い死ぬんだ、自分も死ぬ気で治しにかかるから、死ぬ気で耐えろよ。」

「分かった…んじゃモン。死ぬ気で生きるんじゃモン」

「『見習いキューピッドを2体、小天使ミニーを3体、鋼の聖剣を召喚』」


天使たちにホワイトヒールを預け他の手札は一旦しまう。

コストや効果の割に飾りっ気のない聖剣を地面から引き抜き、呪いの“核”に最も近い横っ腹の露出した肌に先端だけ刃を立てる


「いくぞ」

「うむ…!」

「全ての『ホワイトヒール』を発動!

そしてっ解除した呪いを鋼の聖剣と一緒に…『カード化』だぁあああああ!!」

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