丸腰
あ、自分死んだ。
いやいや信号青になって渡ったじゃん。何で轢かれてんの
あぁ〜体が重い…頭がガンガンする…なんだ?夕方にしちゃやけに明るいな。
「ここは…?」
目を開けて真っ先に広がるはずのさっきまでいたコンクリートの交差点ではなかった。
「病院…ではないな。」
目の前の景色が白い天井なら病院だが、周りを見渡す限り木しかない。
「裏山?」
これだけ木々が生い茂った場所は昔に秘密基地を作って遊んでた裏山くらいなものだが、自分を轢いたトラックが数キロ離れた裏山に飛ばせる力があるとは思えない。
それに、もしここが裏山なら山とはいえどどこからでも電線か建物くらいは見える。
となると
「マジでここどこ?」
こうなる。
「あれ!?カバンが!デッキがない!携帯も、財布もないし!はあ…もう終わった…」
今の俺はジーパンに白シャツ一枚+持ち物なし=希望なし
「ってそもそも怪我は?
…あの世か…やっぱり死んだんだ…」
三途の川か、お花畑を通るのは聞いたことあるけど森は聞いたことないぞ。
「適当に歩いてみるか。」
死んだなら死んだで閻魔さんの所に行く方法がいるし、夢ならそのうち覚めるだろう。生きてるなら何かしらの道具か雨風を防げる場所を探すべきだ。
しばらく歩いてあるものを見つける。
「何あれ、気持ちわるっ」
某動画サイトで一時期、時のアイテムだった青いスライムの塊が動いている。それも3つ。
ヌルヌルヌルヌルゥゥゥゥ
完全にこっち向かってきてる。
「く、来るな!キモいキモい!!うわぁああ!!」
思わず手近にあった木の枝を振り回す。
ダァン!
先頭にいたスライムに当たった。
半固体のはずなのにしっかりと硬いものを捕らえた手応えがある。
倒したスライムの体の中に丸いものがあり、そこが弱点だったっぽい。
「まだ来るか!やめろ!気持ちわるいっ!近寄るな!」
バキィッメキィッ
「ハァ…ハァ…倒したっぽいな」
『スライムのカードを入手しました』
『スライムのカードを入手しました』
『スライムのカードを入手しました』
「カードになった…」
ひとまず三枚のカードを拾ってみることにした。3枚中2枚がスライムの体?に触れてネチョッとしてる。
『スライムのモンスターカードをデッキに追加しますか?』
「なんか出てきたし。イマイチ状況わかんないけどとりあえず『はい』で」
『デッキを成立させる40枚に満たないため、仮のスロットを解放します。』
この感じから察するに、カードを集めた方が良さそうだな…またこんなん探すのか…」
ブツクサ言っても本当に何も起きなかったので仕方なくまた歩く。
「けどこのカード集めたところで何かあるのか?デッキってことは『召喚』とかするんだろうけど」
パァァァァァァァァァ
「魔法陣?うわっまた出た!」
目の前に現れたのはさっき倒したはずのスライム。たださっきと違って体の表面に魔法陣が付いてることと半透明だった体がもっと透けていること。
「まさかね…『スライム召喚』」
できちゃったよ召喚。
「ってことは、『スライム1号、木を攻撃』」
ヌルっヌルっポーンベチャ
スライムの体が木に当たって形を崩してしまった。
スゥーーー…
砂粒のように飛散するスライム
「BPで負けると破壊されてカードの中に戻るのか」
カードに書いてあるスライムのバトルポイントは10。
RPGでも最弱のスライムだからBPが低いのはなんとなくわかる。
「『スライム2号、レベルアップ』」
そう唱えると自分の体から力が少し抜けた感覚と同時にスライム2号の動きが少し激しくなった。
「えーっと、スライムのレベルが最高で2でBPが12か。多分木は…耐久値50か。これはBPと同じものと考えて良さそうだな。」
『条件を満たしました。
魔法カード、武器カードが使用可能になりました。』
『条件を満たしました。
魔法カード
[ホワイトヒール]×3
[魔力弾]×3
『魔力壁』×3
武器カード
[鋼の聖剣]×2を獲得しました。』
頭の中に直接語りかけてくるタイプのナレーションと横長の半透明な吹き出しみたいなのが出てきた。
吹き出しの下部分にモンスターカードに似た感じのカードが表示されたので、触れてみると全部で11枚のカードが俺の手の中にあった。