アビスブルーに戻る
宴の翌日、俺達は朝食だけいただいてから帰る準備をしていた。
準備と言ってもスレイプニルを呼んで乗るだけなので準備らしい準備は必要ないが。
「最長老様の事をよろしくお願いいたします」
「任せてください。ヘビーはちゃんと俺が面倒を見るので」
そう長老とキング・ボアに言ってから俺達は港に帰った。
そして事前に伝えていたノワール達が港の入り口で待っていた。
「思っていた以上に早い帰りだな」
「……お帰り」
「ただいま。ヘビーに会ったからアルカディアに帰らせた」
「そちらは順調なようだな。ちなみに天使や獣人達からも連絡があったぞ。兄弟達の子孫と思われる者達は居たそうだが、兄弟達はみな様々な理由で死んでしまったようだ」
「そう……か」
「残念に思うのは当然だ。だがこればかりはな」
「頭では分かってるんだけどね……そう簡単に切り替える事は出来ねぇよ」
何で俺だけ子供達と一緒にこの世界に来なかったんだろうと疑問に思いながら、ノワール達と話をする。
どうやらみんなこの大陸を調べ終えたらしく、ヘビー以外に子供はいないようだ。子孫達にアルカディアに来ないかと誘ってみたらしいが断られたと言う。
「そうか。そっちはそっちで随分と手が早いな」
「大陸と言ってもモンスターの種類は少なかった。それに周りとの関わりが強いのも調査しやすかった理由だ」
「そうなんだ。そっちもお疲れ」
「それでこの後はどうする?また少しこの港を観光するか?」
「ん~。そっちはいいや。ホテルに帰ってゴロゴロしたい」
「では今日の正午にアビスブルーに戻る船が出るからそれを待とう」
「正午……あと2時間ぐらいか。若葉とかブランはどうだ?もう少し観光したいか?」
2人に確認を取ると2人とも首を横に振った。
「お土産だけ買ったら後はいいかな」
「後ドラクゥルさん。琥珀の引き取り忘れてますよ」
「あ、そうだった」
っという事で俺達は琥珀を引き取りに店へ。
店員さんに会うとすぐに琥珀の引き取りに来たと分かってくれたので、取りに行っている間に話をする。
「ところで王様達とライトさんは?」
「先にアビスブルーに戻った。私達も昨日の晩はアビスブルーに戻ったし、食い物ばかりなのでこれ以上見る物もないという事で帰った」
「そうか。やっぱ食べ物ばっかりだと長時間留まるのは難しいか。それに食べてばっかりというのは女性の敵か」
「そのようだ」
「そして正義君はどうする?一緒にアビスブルーに帰るか?」
「僕も帰る。元々1泊だけの予定だったし、遊ぶならアビスブルーの方が色々あるしね」
それは確かに。
そう話している間に頼んでおいた琥珀を店員さんが持ってきてくれた。
俺が頼んでいた蚊の入った琥珀は形を整えただけの楕円型の琥珀。
若葉の琥珀は球体に加工された後に琥珀をペンダントにはめられている。
ブランの琥珀も若葉の琥珀と同じ感じだが、琥珀の中が大分違うので印象もかなり違う。
そしてヴェルト用の琥珀はそのまんまヴェルトに渡した。
「はいこれ。ヴェルトの分」
「……?頼んでない」
「俺が勝手に用意しただけだよ。ブランのとはまた少し違うタイプのペンダントだけど、まぁ記念に持っておけ」
ヴェルトの琥珀は俺と同様に楕円タイプなので結構大きい。そのためペンダントタイプといっても上から吸盤のようにくっ付いている様に見えるタイプなので正直振り回すと琥珀がどっかに行ってしまいそうな感じがする。
なので耐久性に関しては少し疑問が残るし、首にかけると少し重いかな~っと思わなくもない。
ヴェルトは俺から受け取った箱を開けて琥珀のペンダントを取り出すと、何故か首だけを出してきた。
「……ん」
「えっと?」
「……つけて」
「お、おう」
そういわれるがままにヴェルトの首にペンダントをかけると、ヴェルトは上機嫌で店を出た。
表情には出ないが、ヴェルトは上機嫌になると甘い花の香りを出すのでよく分かる。
そしてその光景を見てブランが何か悔しそうにする。
「そっか、パパにそうやって贈り物をもらう手段があったか!!」
「えっとブランちゃん。悔しそうに言ってるけど本気には聞こえないよ」
「うん、本気ではないよ。それよりも一緒に居る方が嬉しいし」
なんかブランと若葉が漫才みたいな事をしている。クレールにも買ってあげるべきだったかな?でも全員分となると正直無理だし、家族全員にあげられるものと考えるとやっぱりお菓子系がメインになっちゃうんだよな。
そう思いながら琥珀の店を出た。




