ボアが居る大陸
この大陸を観光中、チョコバナナを食べながら街を歩いている。
食い物以外の名産はないかと見て回っているが、見当たらない。その代わり美味い物があっちこっちにあるのは個人的に嬉しい。
色々食べながら見ていると、女王様が俺に言う。
「思い出になる物でしたら琥珀店が一般的ですよ」
「琥珀ですか?」
琥珀って宝石だっけ?
どんな宝石だったっけと思いながら女王様おすすめの店に行くと、そこは琥珀だけの店だった。
小さなアクセサリーのような物から宝石と呼ぶにふさわしい物など、大小さまざまな琥珀が取り揃えられている。
「いらっしゃいませ。これはこれ、エフェルディス様。いつもありがとうございます。本日はどのような琥珀をお求めでしょう」
「具体的に決めていないから良い物があったら買わせてもらうわ。ドラクゥル様も自由に見て下さい」
「は、はぁ」
そう言われても宝石の価値なんて言われてもよく分からない。精々でっかいかどうかしか分からない。
とりあえずみんなと見て回ってみるが、ライトさんとノワールは価値が分かるのか凄いだの希少だのと言っている。
俺と若葉、ブランとヴェルトはその価値がよく分からず首を傾げている。
少し見て記念に小さなアクセサリーでも買おうかと思っていたが、奇妙なコーナーを見付けた。
それは琥珀が加工される前の状態であり、石などがくっ付いた状態であるがとても安く売っている。木箱の中に適当に入れられたような感じだが、こういうのを見ると何か掘り出し物があるようで気になる。
「ドラクゥルさんここにあるのを買うつもりですか?」
「いいのがあればな。ここで買った物は無料で加工してくれるらしいぞ、ここの絵に描いてある物だけらしいけど」
「あ、本当ですね。この値段なら……うん。私も買えるので私もここから探してみようと思います」
「ハクも選ぶ!!」
「……私は待ってる」
ヴェルトだけは乗り気ではない様で俺のそばでじっとする。
それじゃヴェルトの分も俺が選んでおこうかなっと思いながら物色する。
この石は……ただ濁ってるだけ、こっちは……琥珀の中に砂利みたいなのが混じってるのか。どうやらこの箱の中に入っている琥珀は不純物が混じっていてあまり売れないという風に判断された物らしい。
そして1番多かったのは昆虫の身体の1部と思われる部位が混じっている琥珀だ。翅だけが入った琥珀、足と思われる物が入った琥珀、あと蚊とかアリとかが入っている琥珀は価値のない物として扱われている。
何というか、ジュラシックパ〇クっぽくてちょっとカッコいい。とりあえず俺は蚊の全体が入っている琥珀と……あ、蝶っぽいのが入ってる琥珀みっけ。蝶はヴェルト向けに加工してもらおう。
「俺は決まったけど、2人はどうだ?」
「私も決まりました」
「ハクも決めたよ」
そう言って2人が持っている琥珀も中々だ。
若葉が持っている琥珀は中に葉っぱが入っており、ブランが持っている琥珀は少し砂が入っている様だが綺麗な方だ。
これらを店員さんに頼んで加工してもらう。無料というだけあって加工してくれるのは簡単な球体と楕円型だけだが、俺とヴェルトのは楕円形、若葉とブランは球体に加工してもらう。
直ぐに出来る訳ではなく、全部終わらせるには2時間ほど後に取りに来ないといけないらしい。
女王様達も買い物を済ませた様なので店を出た。
「他に何かいい場所ってありますかね?」
「他は食べ物ばかりですね。この大陸は1年中温かいので、この地にある果物などが多く取れるのです。そのせいか食べ物ばかりになってしまったようです」
「そんなに食べ物が取れるなんてすごいですね」
「生産量で言えばドラクゥル様の畑の方が凄いと思いますが」
「俺の畑はズルみたいなものですから」
そう女王様に言うと今度はデザートの店に行ってパフェをみんなで食べる。
暑い国だからか周りにいる観光客たちも冷たいアイスなどを食べている。それにしてもこのパフェ値段の割に凄いボリュームだな。レオが食べきれなくて王様と女王様に頼んでる。
「あの、ドラクゥル様。私もその、手伝っていただいてもよろしいでしょうか……」
恥ずかしそうに言うのはライトさん。どうやらライトさんも多過ぎたらしい。
「いいですよ。それじゃまず食べたい所だけ食べちゃってください。あとは俺が食べるので」
「そ、それは流石に図々し過ぎるのでは?」
「構いませんよ。食べ物は美味しく食べてなんぼですから」
「……ありがとうございます」
そう約束した後、ノワールもチョコパフェを食べながら言う。
「それにしても豊かな大陸だ。年中暑いというだけで生産量がここまで上がるとは」
「それが地域ごとの面白いとこって事だ。と言うかアルカディアでも似た様な所はあるだろ。ルージュの所とかさ」
「アルカディア以外では珍しいのだ。ヴェルトもそうだろう」
「……ん」
ヴェルトはただのフルーツの盛り合わせを食べている。アイスとか飽きたと。
そう思ってゆっくりしていると珍しい種族を見付けた。
それは頭が猪のモンスター、オーク・ボアと言う種族だ。
オーク・ボアはオークから進化した種族であり、オークよりも優れた身体能力と高い知能を持つ。身体全体は硬い猪の毛に守られているので非常にタフなのが特徴的だ。
「オーク・ボアか。珍しいのが居るな」
「あらお客様、オークとボア様の違いが分かるんですね。観光客の方だと間違える人が多いんですよ」
店員の女性が俺の声に気が付いてそう話しかけた。
空になったパフェの器を回収しに来た様でお盆に回収していく。
「まぁ魔物の事を調べているので」
「だからですか。観光客の方だとボア様の事をオークと勘違いして怯えたり攻撃したりするのでボア様達はアビスブルーの上陸日にはあまり来ないんですけど、珍しい日がある物ですね」
そう言って店員さんは下がっていった。
確かに観光客はオークが来たと勘違いして怯えている様に見える。ここで正義君とかが勘違いしないと良いんだけど、そういうトラブルは――
「お前オークか!町に人に酷い事しに来たわけじゃないだろうな!!」
……いたよ正義君。しかも想像していた通りにオーク・ボアにからんでるし。
もしかして俺、フラグ自分から掴みに行ってるのかな……
そう思いながら「少し待ってて」と一言言ってから店を出る。
そして正義君とオーク・ボアの間に入って正義君を止めた。
「何やってるんだよ少年。地元の人に迷惑かけてるんじゃねぇよ」
「だってこいつ等はっておじさん?」
「ああおじさんだよ、とりあえずオーク・ボアの人をよく見ろ。オークは顔の周りに毛が無いが、この人にはびっしりと毛が生えてる。これだけでオークじゃないって分かるだろ」
「え?毛が生えてるオークとかじゃなくて?」
「そんなオークいねぇよ。別種族だ。とりあえず悪かったな、え~っとボアの人達」
「いや、誤解を解いてくれて助かった。礼を言う」
「そう言ってくれて助かる。ほらお前も謝れ」
「ご、ごめんなさい」
俺がそう促すと正義君は渋々頭を下げた。
まぁこれで一応いいだろうと思いながら店に戻ろうとするとボアの人に止められた。
「あ、あの!もしかしてドラクゥルと言う名の方ではないでしょうか?」
ボアの人がそう聞くので俺は振り向いてから肯定する。
「ああ。俺の名前はドラクゥルだが?」
「よかった。よろしければお話を聞いていただけないでしょうか?最長老からの命令なのです」
な~んかまた面倒事が向こうからやってきたような気配をしながら俺は言う。
「そこの店で丁度パフェ食ってたところだ。そこでよかったら聞くよ」
「ありがとうございます」
「あ、俺の家族とか知り合いもいるけどいい?」
「もちろんです」
こうして店でボアと話す事になったのだった。
種族 オーク・ボア
ランク D
猪の姿をした二足歩行のモンスター。オークよりも優れた身体能力と知能を持つ。
ゴブリンの様に魔法が使える個体が生まれる事はないが、それ以上に優秀な身体能力を持つ。
優秀な身体能力を持つが、最大の特徴は硬い体毛に覆われている事により非常にタフな所である。硬い毛は様々な物理攻撃を軽減し、斬撃も打撃も効きにくい。しかし普通に熱や電撃などは効果があるので魔法防御力は低い。




