ホワイトフェザー
「それでは行ってらっしゃいませ」
「予約ありがとうございます。それじゃ行ってきます」
商業ギルドの支部長が直接俺にあいさつした事により、冒険者や馬車の業者からこの人何者?っと言う雰囲気が出た。
とりあえずよく分からないので、1番いいのでお願いしたら貴族が乗るような派手な馬車に、20人の冒険者たちに守られて移動する事になった。しかも往復でこれなのだから帰りも目立ちそうだ。
何はともあれこの大勢でホワイトフェザーに向かう事になる。
確かに安心安全なんだろうが……ここまでとはな……
――
そしてこの大勢の冒険者に囲まれながら向かうホワイトフェザーへの旅だが、この間にちょっとした実験をしてみた。
それは普段売っていないちょっと特別な食材を分けたと言うだけの実験である。
モンスターの1部は特殊な食材を食べさせないといけない訳だが、それと似たような感じで食べる事でステータスを上昇させる食材があるのだ。それを何も知らない冒険者達に食べさせた訳である。
食べさせ方は引っ越しとか工事をしてくれている人達に差し入れを入れる感じで、「お疲れ様です~。これよかったら食べてください」っと言って食材をそのまま手渡しただけである。
ある程度俺の事をクウォンさんから聞いていたからか、冒険者たちと馬を走らせていた業者さんは喜んで受け取った。
ついでに馬にも特別な干し草を食べさせた。
その結果、食べたその日だけではあったが一時的に冒険者たちの足の速さや、馬の体力が上昇したのだ。
しかも効果はおそらく24時間。まぁ鑑定スキルみたいな物を持っているわけではないから本当に24時間だったのかは分からないがそれでも上昇したのは事実だ。
食べた本人たちもなんだか力が湧いてくるような気がすると言っていたし、実感が湧くものかもしれない。
だが次の日も似たような感じで行動しそうになっていたので、きっといい物を食べたから気分が向上して疲れ知らずだったんだろうっと冒険者たちは言っていた。
まぁ早く着いた方が都合良いからその後も差し入れとして晩飯の度に食材を渡したけどね。
冒険者たちも馬も喜んでいたのでウィンウィンって事にしてほしい。
そして旅を始めてからまさかの3日目の朝にはホワイトフェザーに到着したのだった。
――
業者さんと冒険者さんたちにお礼を言ってから俺はホワイトフェザーに降り立った。
そしてまず一言。
「白過ぎて目が痛い」
宗教国家と言う事もあるんだろうが、象徴である白ばっかりを使った家ばっかりで日の光が反射して目が痛い。
そして思っていた以上に服装は普通の人ばっかりだ。まぁ信者と一言で言っても全員が教会で働いているわけじゃないだろうし、普通に食材や宿で金を稼いでいる人もいるか。
そう思いながら俺は町を探索する。この辺りに図書館のようなものがあれば楽なんだが……景観を守るためか、パッと見ただけで図書館だと分かる場所は見当たらない。
とりあえず辺りを見渡して、人のよさそうなおばちゃん達のいどばた会議に突入してみる。
「すみません。この街に図書館ってありますか?」
「あらあら、もしかして学者さんかしら?」
「いえ、観光できたのですがこの国の歴史に関して知ってみたいと思ったので図書館のような場所はないかと探していたのですが、見つからないものですから知っていたらお聞きしたくて」
「そういう事ね。他の町から来た人にとってこの街の図書館は分かり辛いものね」
「この街の図書館はね、あの町の中央にある大聖堂の中にあるよ。初めて来た人にとっては分からないわよね~」
「大聖堂に図書館があるんですか?」
俺はこの街の中央にある特に巨大な建築物に視線を動かす。
この街の普通の店や家は全て2階までの大きさしかないのだが、町の中央にある建築物だけは10階建てではないかと思えるほどの巨大建築物だ。しかも敷地もとても広く、この街の人が全員は言っても余裕があるのではないかと思えるほどの広さである。
外見は特別芸術的な形ではなくシンプルだが、その神々しさだけであそこが神聖な場所だと分かる。
「ええそうよ。大聖堂はこの国の中心であり、様々な情報を溜めていると聞いているわ。噂じゃ神様がこの国の歴史を守るために作らせたのが大聖堂って噂よ」
「あらやだ!それは噂じゃなくて教本に書かれている事じゃない!」
「そういえばあなたはどれぐらいこの街に滞在するの?」
「1週間ですね。今日から1週間この街を見て、学びたいと思っています」
「あらまぁ!あなた本当に運がいいわね!!ちょうど3日目のお昼に神様にお供え物を上げるお祭りがるのよ!あなたも何かお供え物をすればきっといいことがあるわ!!」
「お祭りですか?」
そんな事聞いていなかったので詳しく聞いてみたい。
「それはどんなお祭り何ですか?」
「3日後のお祭りは収穫祭と神様がこの地に降りて100年目の感謝祭が重なったのよ。だからみんなで育てた野菜や家畜のお肉、小さな子供とかは感謝の手紙を書いて渡すことが多いかしらね」
「うちの子なんて神様にあげたいからってアクセサリーを作ってるわよ。そういった小物でも何でもいいの。とにかく神様に感謝をささげる日ね」
「そのあとは収穫祭として町のみんなで楽しく祝うのよ。この国の神様は楽しいことが大好きだから」
「なるほど。収穫祭と感謝祭が一緒になっているんですね。教えてくれてありがとうございます。俺もその日は神様に食材でもお供えしたいと思います」
「それがいいわね。ちなみに神様が好きなのはお肉よ」
「それから可愛い物!神様は女性で女の子らしいわ!」
「それから定番は白い物ね。あまりお金をかけない人は白いハンカチをお供えする人もいるわ。あまり気負い過ぎちゃダメよ」
「わかりました。では俺が用意できる最高の肉をいっぱい持ってこようと思います」
「あなたは商人なの?でも無理しちゃダメだからね」
「分かりました。ありがとうございます」
そう言ってから俺はおばちゃん達と別れた。
なるほど、この国でお祭りをするのか。子供たちに会えるようにお願いするのも良いかもしれない。
俺はそう思いながらこの街の中央にある大聖堂に向かうのだった。