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クレール・ドラクゥル

すみません。投稿遅れました。

 とても巨大な扉をエルとアレクサンダーの2人が押して開くと、たった2段しかない階段の上に素朴な人間サイズの、玉座とは思えないただの石のイスが1つだけぽつんと置かれているだけだ。

 妙な部分と言えばイスの後ろは一面ガラス張りである事。それ以外は一切不要と言う感じで本当に何もない。


「ここにクレールはいるのか?」

「もうすぐ来ます」


 エルがそう言っている間にタイタンさんとエルちゃんが片膝をついた。

 彼らにとってクレールは神様だから当然なのかも知れないが、ライトさんは白夜教式の祈りを捧げ始め、若葉は急に土下座をした。


「若葉?」

「な、何か来ます……とてつもなく強い何かが来ます!!」


 声をかすれさせながら言う若葉は身体を震わせて怯えている。

 これは無理に立たせて一緒に居ろと言う方が厳しいことかもしれない。

 仕方ないと思っている間に正面のガラスに巨大な魚影が見えた。

 来るというのはそういう事かと感じながら、この神殿の玉座が質素な物である理由と、一面ガラス張りである理由を理解した。


 ゆっくりと泳いで現れるのは超巨大なシャチ。エル達の2倍、100メートルはあるであろう巨大なシャチが俺達の事を確かに目で捉えながら優雅にガラスの前に現れた。

 元気そうな顔を見て俺は頬を緩ませながら言う。


「ごめんな、クレール。迎えに来るのがかなり遅くなった」

『お父様……お待ちしておりました』


 美しい声で話しかけてきたクレールは懐かしむ様に、ホッとする様に頬を緩ませた。

 届いた声は直接声帯から響かせたものではなく、頭のメロンと呼ばれる特殊な器官によって発生させられる超音波の応用だ。

 だから水中からこの部屋の中に声を響かせる事が出来る。


「クレールお姉ちゃん久しぶり!!」

『久しぶりね、ブラン。寝坊助なヴェルトと生真面目なノワールお兄様もお久ぶりです』

「……ん」

「そちらも変わらないようで何よりだ」

『ノワールお兄様に関しては何度か手紙で話をしましたが、ヴェルトとブランに関しては手紙を送る事も難しかったの。そして、そっちに居る普通の人間とお父様と似た雰囲気がある女の子はどなた?』


 クレールの関心がどうやらライトさんと若葉に向いた様だ。

 ライトさんは少し呼吸を整えてから、若葉は身体を大きく震わせて反応する。

 若葉の方はもう少し時間がかかると判断したのか、ライトさんの方から答える。


「お初にお目にかかります。深き海の神、クレール様。わたくしは白夜教現教皇、ライトと申します」

『ブランの関係者ね。初めまして、クレール・ドラクゥルと申します。威厳のある言い方の方がいいかしら』

「申し訳ありませんが、そのまま話していただいてよろしいでしょうか」

『構いません。そして小さい人間がさらに小さくなっているあなたは』

「は、はい!わ、私は、若葉と言います!!ドラクゥルさんの元で働かせていただいてます!!」

『そう。お父様の元で。アルカディアは広いでしょ、大丈夫かしら』

「えっと、ドラクゥルさんも他のみなさんも優しくしてくれているので大丈夫です!!」

『そう。ならお父様のために努力なさい』

「は、はいぃ!!」


 ……この間の若葉の体勢は常に土下座状態である。

 なんだか新人いびりをしている悪い先輩の様に見えるのは親だからか?

 緊張しまくっている若葉をこれ以上見てられないので話しかけて意識を逸らす。


「クレール。こっちに来てくれないのか?」

『ごめんなさいお父様。ここに入るにはその扉からしか入れないの。設計の都合上、他に入り口を作ると水圧で壊れちゃうから。その代わり1つ約束してもらってもいいかしら?』

「どんな約束だ?」

『明日のナイトショーを見に来て欲しいの。表向きはこの国で歌手をしているの、だから明日の夜はステージに来て欲しいの』

「分かった。花束を持って会いに行くよ」

『ありがとうお父様。明日は特に力を入れるわ。それからお兄様、ヴェルトにブラン、重大な話よ。ちゃんと聞いて』


 クレールがそう念を押すと声色からかヴェルトとブランも真剣な表情をする。

 ライトさんも教皇として聞いておかないといけない話だと思ったのか、耳をすます。


『この国にもホーリーランドの勇者に似た存在がいます。しかしその男は暴力的で、どうにか力と条件で押さえつけている状態ですが、あまり良くないでしょう』

「力で押さえつけてるからじゃないの?あと条件って?」

『衣食住の提供と娯楽施設の無料開放です。元々高級リゾートとして開発した土地ですのでたった1人金を払わないぐらい何ともありません。ですが彼の力は凶悪です。以前浜辺に現れた魔物を退治する際にその男が観光客を巻き込んでしまう事件が発生しました。その際には私が殺意を向けましたが、反省している様には見えません』

「クレールの殺気を受けても反省しない、か……随分と傲慢な男だ」

『元々彼は凶悪な力を所持している事で調子に乗っている点は以前からありました。ですが私には勝てない。その事は理解できた様なので今は大人しくしています』

「……首、切る?」

『彼を野に放つぐらいなら殺します。手元に置いてあるからこそ良い事もあるのよヴェルト』


 しれっと殺すって言ったな。だから怖いって言われるんだよ。

 それにしてクレールが凶悪と認める力か。一体どんなゲームの力何だかな。


「クレール。それはライトさんが聞いても大丈夫な話か」

『むしろ聞いていただく方がとても都合が良いのです。一応勇者と言う者を所持しているのですから必要でしょう』

「なら教えてくれ。そいつはどんな力を使う」


 俺が真剣に聞くと、クレールは分かりやすい物騒な言葉を出した。


『火器。銃や爆弾を使って戦う男です。名前はリアム・フォートレス。彼の口からはアメリカの軍人だと語っています』


 …………これまた面倒な……本当に分かりやすいぐらいヤバい力じゃないか。

 そしてさらに問題を言うとすれば、相手が使う武器にミサイルや戦車のような本当にヤバい兵器を所有しているかどうかという話だ。もし火器を装備したヘリコプターや戦車のような物も使えるとすれば……相当ヤバい。

 火器と言う単語を知っている俺やノワール達、若葉はそのヤバさを理解できているが、ライトさんだけは分かっていない様だ。

 この世界に銃はないので火器と言う単語はないのかも知れない。


「ライトさんに分かりやすく言うと、異世界の兵器だ。筒状の物から弾丸、矢じりのような物が遠くから飛んで来る。当たればだいたいは相手を撃ち抜く」

「……ストーンバレットのような物でしょうか?」

「ストーンバレットとは少し違いますよ。ストーンバレットは相手を貫通する事はありませんし、ただ1度に複数の石を当てるぐらいの魔法ですが、ショットガンと言われる兵器に比べると非常に劣ります。爆発魔法の爆風を利用して弾を出す感じ……っと言えば分かるでしょうか?」

「……何となくですが、恐ろしい物だというは理解できました。それで魔力消費は――」

「0だろうな。この世界のルールとか絶対無視してるだろ。クレールはどう思う」

『0です。観測していましたが銃弾を発射した際など一切魔力が計測できませんでした。そして幸か不幸か、ミサイルのような大型兵器はなく、戦車や戦闘機に属する物も持ち合わせていないようです』


 ライトさんは魔力0と言う所に驚いている様だが、俺としては戦車のような兵器の類がない事に安心した。

 もし存在していたなら身体の大きい子供達がその標的になっていたかもしれないからだ。どれだけランクが高いと言っても生物だから限界は存在する。もし兵器の類を隠し持っているとすれば……


「パパ。恐い顔してるよ」


 ふとブランにそんな事言われてしまった。

 この場では笑って誤魔化すが、俺や若葉の様な戦闘がメインではない能力だったのが、戦闘メインの能力者持ちと直接接触するのはこれが初だ。

 正義君に関してはブラドたちが勝てると言っているからまだいいとして、そのアメリカ人に関してはデータがあまりにも少ない。そしてクレールが警戒している点から厄介であると思っておいた方がいい。


 そしてこの先の話はゲームの内容次第だが、風の影響を受けるのか、受けないのか。弾がなくなったら補充はどのようにするのか。爆弾も使うと言うが種類はどれぐらいか。近接武器は存在するのか。考えだしたらきりがない。

 とにかくそれはエル達にも傷を負わせる事が出来る程の武器と性能なのならば、警戒して当然だ。


「クレール。何かあったら俺達に頼れ。家族なんだからな」

『はい。その時は頼らせてもらいます』


 何となく恥ずかしそうに見えるが、気のせいだろう。

 クレールの元気な顔を見た、子供達の墓参りもした。なら今日はそろそろ帰るべきだろう。

 ブランが欠伸し始めた。


「それじゃクレール。明日のステージ楽しみにしてる」

『はい。楽しみにしていてください』


 こうして俺達は神殿から離れた。

 その帰り道、ブランとヴェルトは完全に寝落ちし、俺がブランを背負い、ヴェルトをノワールが背負う事を話した後に若葉が不安そうに言う。


「ドラクゥルさん。もしも、もしもですよ。私達にも物凄い戦える力があったら、勇者君やそのアメリカ人みたいに戦いで生計を立てようとしていたんですかね?」

「……その可能性は捨てきれないな。俺だって最初はシュミレーションなら無双系ゲームじゃねぇのかよって思ってたし」

「そうですね……私もアドベンチャーならもうちょっと戦闘向きのゲームだったらよかったのに~って思ってましたから。この世界、戦えないと生き難いですね」

「それだけ日本が平和だって事だろ。そのぐらい平和にするために俺達が送り込まれたんだとすれば、何で具体的にどう救えばいいのか、教えてくれないんだろうな」


 俺がつい口走ってしまうと若葉も考え込んでしまった。

 その後はホテルに戻り、ブランとヴェルトをベッドに運んだ後、それぞれ部屋で眠りに着いたのである。

 種族  アビス・バハムンド

 名前  クレール・ドラクゥル

 ランク SSS


 超巨大なシャチの姿をした、世界に6体しかいないSSSランクモンスターの1体。司る属性は水で海を操る力を持つ。

 普段は深海で穏やかに過ごしているが、海を汚す者が現れた時、深海から海面に飛び出し津波を起こし、全てを洗い流す。


 補足

 クレール・ドラクゥルは好奇心旺盛で、ロボットアニメから始まり、機械系に大きな興味を持つ。

 普段は大人な女性、淑女に憧れているため穏やかに過ごすが怒ると怖い人ランキングでトップを取る。

 しかしドラクゥルと2人っきりの時は甘えたがる一面もある。

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― 新着の感想 ―
[一言] 閑話見る限り傭兵本人的には間違ったことしてないから反省してないだろ 観光客のいる浜辺に魔物が辿り着く前に駆除できなかったアビスブルー側にも責任あるからね  例えるなら民間人100人守る為に1…
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