情報を求めて
こうして月1感覚で高品質の野菜をギルドに収める事で金を稼いでいるが、その金額がとても多いので色々と使ってみたいと思う。
っと言ってもこの世界の家具とかはうちにある家具よりも質が悪いし、なにより欲しい物は他にある。
それはこの世界に居るかも知れない子供達の情報だ。
この世界に手から早一カ月経った訳だが、依然として子供達が居るかも知れないっと言う情報はない。っと言うか元々人ではなくモンスターなのだからそう簡単にそれらしい情報が手に入るはずがないのだ。
とりあえずもう顔見知りであるクウォンさんの所で相談してみる。
「魔物に関する情報、ですか」
魔物と言うのは俺が知っているモンスターたちのこの世界での言い方だ。
俺も一応会話では魔物と呼んで合わせている。
「はい。実はあまり魔物に関して知識がないので少し興味がありまして、身を守る事にもつながりますし魔物の事を知る場所はありませんかね?」
「そうですね……魔物の事を知るとすれば教会か冒険者ギルドに行くのが良いのではないでしょうか」
「教会?冒険者ギルドは魔物を倒して収入を得ている訳ですからそちらは納得できますが、教会ですか?」
「はい。教会は言ってしまえば完全な人間と魔物の住み分けを目指しています。しかも大国である6各国が率先しているのでとても多くの情報を持っていると思われますよ。しかし……そう簡単に情報を渡すとも思えませんから、まずは冒険者ギルドで魔物図鑑を購入してみるのはどうでしょう」
「魔物図鑑?そんな物があるんですか」
「はい。冒険者達も多くの魔物を発見しているのでそれをまとめた本になります。よろしければご購入しますか?」
「お願いします」
「では少々お待ちを」
そう言ってクウォンさんが席を立ち、少しした後持ってきたのが魔物図鑑。最新の図鑑らしく、今まで発見されてきた魔物について書かれてるらしい。
細かい生息分布まで書かれている訳ではないが、この世界のモンスターは俺が知っているモンスターと同じなのかどうか、知るだけでも今後の行動に大きくかかわるだろう。
「こちらになります。お値段は金貨1枚と銀貨4枚となります」
「それじゃ金貨2枚で」
そう言って渡すとすぐにおつりの銀貨96枚を渡してくれる。
俺はその図鑑を開き、内容を読んで行くと……少し気になる事を発見した。
いや、特にこの図鑑に書いてあるモンスターの生態がどうこうっと言うつもりはないが、この発見されている魔物の種類がどこかで見た事がある気がした。どこで見たのか思い出そうとすると…………
あ、そうだ。攻略サイトで見た適当に育てても進化できる魔物と全く同じなんだ。
これはただの偶然か?それとも単にこのモンスター達がよく発見されるから図鑑に載っているだけ?でもそれがまる被りっておかしくないか?
俺がじっと見ているとクウォンさんが困惑気味に聞く。
「どうかなさいましたか?」
「あ、いえ、とても興味深いと思いました。それで教会だとどこに行くのがよろしいでしょうか?」
「そうですね。最も道が安全なのはホワイトフェザーですね。ドラクゥルさんを連れてきてくれたポラリスのメンバーの1人、ディースさんがその国の教会に所属していますよ」
「そういえば言ってました。確か白夜教会のシスターだって」
初めて会った日の事を思い出しながら言うと、クウォンさんも頷く。
「その白夜教会こそが各教会の中で最大の勢力を有しています。別名結界の教団と呼ばれ、結界による防御と後方支援に力を注いだ教団です。この教団だと回復魔法を得意とする方々が多いので信者も集まりやすいと聞いています。大きなケガや病に犯されたらホワイトフェザーに行けと言われるほどです」
「結界と回復の教会ですか。それは凄い所ですね」
「ただ……命に関する事柄が多いせいか、気の強い方がとても多いですけどね。死に向かう命を前に動じないための精神力を鍛える事こそ彼らの教戒ですから、癒しと聞いて弱いと思っていた不埒な者達が返り討ちにあった、なんて話も時々聞きますね」
う~ん。確かに医者が死にかけた人を前に慌てふためいていたら救えないもんな。
そういう事を言いたいのかも知れないが、何だかナイチンゲールみたいな人が多そうだ。
マンガとかで見る優しげなお姉さんとかではなく、死にそうになっている人を無理矢理力尽くで引き戻そうとするパワフルさを感じるというか何というか。
でも俺は何か怪我をして行く訳ではないし、知りたい事を知ろうとして行く訳だから肝っ玉の強い人と会う事はないよね?
「……その国に行く手段はどれぐらいありますか」
「ホワイトフェザーでしたら馬車が出ているので賃金さえあれば乗せてくれますよ。もしかして行くおつもりで?」
「はい。魔物について調べたい事があるので」
より正確には子供たちの情報がないかどうか、なんだけど。
アルカディアのマイルームには自分が育てたモンスターたちが現在どのような状態なのか調べる機能がある。なんせ規模的に街づくりや街づくりなんてレベルではなく、マジでモンスターだけの世界を作るようなゲームだからファームなんて世界のちょっとした部分でしかない。
一応規模は地球と同規模と言う設定らしいが、それ以上の規模を感じる。しかもプレイヤーの意図で好きに地形を変化させたりする機能まであるのでマジで神様気分だ。
まぁ俺はその辺面倒臭かったからオート機能、現在の地球と同じ地形に設定しておいて自分の手で地形を変化できないようにしてたけど。
とにかくその機能で調べてみた結果、家の子達の総数はあまり激しく上下していないのだ。
多分寿命の短い子たちが死んだ可能性が高いが、それ以上に増えている可能性だってある。さすがに寿命の長い子達はそんなに増えていないと思うけど。
それにな……特に体のデカい子達はどうなってるんだろ?ちゃんと飯食えてるんだよな?
ゲームの設定上体の大きいSランクのモンスター達は品質最高の食材でないとそう簡単に腹が膨らまないっと言う設定がある。つまり低品質だとそれだけの量を与えないといけないし、高品質なら育てるのは大変でも少ない数でも満足する。
たとえ大食漢じゃなくてもSランク以上の子達はみんな最高品質しか食べさせてこなかったからな……個人的に結構美食家なのではないかと思う。
そんな子達が外でやっていけるとは思えない!!早く連れて帰ってうちの飯を食べさせないと!!なんでも食べる子はいいけど特定の食材しか食べる事が出来ない子達が心配だ!!
なんて思っているとクウォンさんが不思議そうに言う。
「何故そんなに魔物にお力を?もしかしてあの野菜は魔物の力で?」
「あ、いえ、そういう事ではないのですが、ただ興味深いだけなんですよ。地元ではあまり魔物はいなかったので」
「そういうものですか。しかし――」
「ちゃんと野菜を入れてから行きますよ。仕事はきっちり終わらせてから自由に過ごしたいタイプなので」
「それは安心しました。それではホワイトフェザーに行く馬車についてお教えしますね」
そして聞いた馬車はどれも3日ほど馬車に乗って移動するようだ。
ただ安い馬車は外国のとんでも映像みたいにすし詰め状態であり、あまりお勧めしないという。そして最高ランクだと俺1人の馬車で、冒険者による護衛付きで悠々とホワイトフェザーに向かうという。で、普通のは冒険者に守られながら予約した他のお客と一緒に向かうというプランらしい。
まぁそれでも馬車で移動するだけで結構な贅沢らしい。金のない人は冒険者などに依頼せず1人で歩いて向かうという。その際何が起ころうが自己責任だし、馬車で3日の距離を歩くのだからとても時間がかかる。具体的には最低1週間はかかるとか。
その話を聞いて俺は最高ランクの馬車を頼むことにした。
ぶっちゃけ1人で行動する方が色々と楽だし、俺のゲームの力を出来るだけバラしたくはない。となれば集団の馬車より個人の馬車の方がいいかと思ったのだ。
それにどこかでこの金を消費しておかないとなんだか悪いし、大金使わずにただ貯めとくって言うのもなんか変だと思われそうだし。
なので最高ランクで、と使わなかった野菜を売って得た金を袋で出すと、「ただいま予約してまいります」とクウォンさんに言われたのだ。
ただ急には動けないので少し時間が欲しいとの事。馬車を動かす業者に、護衛を引き受けてくれる冒険者へ依頼するなどいろいろ準備がかかるとの事。
あとはよく分からないのでプロにお任せする。
こうして俺はホワイトフェザーに向かう馬車の予約を入れたのだった。