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吹雪の中で探す

 そんなグリーンシェルからの頼みもあり、俺は寒い吹雪の中問題の原因である冬の夫婦3組を探す事となった。


 ちなみに今日の服装は完全防寒。

 靴は見た目はただの長靴だが仲はモコモコした温かい長靴。コートは白い迷彩柄、口はネックウォーマーで鼻まで覆い、眼元はこの吹雪でもしっかり見える様にゴーグル着装、頭は耳まで覆える大きな冬用の帽子、手は当然冬に身に着けるスキーとかで使うタイプの手袋。

 そして強過ぎる吹雪のため俺とコートの間にドラゴンの姿のまま小さくなったブランもいる。ブランの結界で少しでも寒さと吹雪の影響を遮るためだ。


「でもまだまだ寒いな~。さっさと終わらせたいけどそう簡単に見つかるもんでもなさそうだしな……」

『何で夜に来たの?昼間の方がまだマシじゃない?』

「言いたい事はよく分かる。でも王様が教えてくれた情報だと夜の方が出現率高いみたいなんだよ。これだけの吹雪だと人海戦術という訳にもいかないし、下手するとこの吹雪で凍え死ぬぞ」


 他のお城の人にも手伝わせると王様は言ってくれたが断っておいた。

 いくら国の中と言ってもこの猛吹雪では方向感覚すら当てにならないのだから、国で遭難して翌朝凍った状態で発見されるなんて事になったら目も当てられない。

 そんな彼らに比べると俺は危険を感じれば穴を空けてアルカディアに逃げる事が出来る。安全という面でこれ以上ないくらい都合が良いと言える。

 それでも俺とブランだけで行くのは反論が多かったが、この猛吹雪では天使達は空を飛ぶ事は出来ない、蛇系の魔物達だって寒さに弱い、吸血鬼達もこの吹雪のせいできちんと捉えられるかどうか分からない、ヨハネ達は可能性があるが……それでも長時間活動するのは難しい。


 こういう時は水系のモンスターが寒さに強いのだが……今は居ないのだからどうしようもない。

 せめてポーラベアーがいればな……

 ちなみにポーラベアーとはアルカディアで育てる事が出来る白熊。属性は水でこういった寒さに非常に強い。

 もっと分かりやすく言うとホッキョクグマのモンスター版。


 ブランの温かい子供体温が唯一の天然カイロだ。流石にアルカディアに使い捨てカイロはないからな……でも以外と作れそうな気がしなくもない。

 え~っと。材料は鉄の粉と塩水で作れたような……


 そんな事を考えていると、足元に何かいた。

 よく見てみるとEランクの雪ウサギだ。

 俺に見られている事を察すると即座に逃げだす。相変わらずのビビりで逃げ足の速いモンスターだ。


 でも俺の目的はあくまでも雪女と冬将軍。しかも3組も見付けないといけないのだから少しぐらいヒントが欲しい。

 一応王様から目撃情報をもらってはいる。

 北に1組、南東に1組、南西に1組それらしき影を見た人がいるらしいがそれが本当に雪女と冬将軍だったのかどうか分からない。

 この猛吹雪のせいではっきりとした姿を捕らえる事が出来ていないのだ。


 それでも何のヒントもないよりはマシと思い、その方向に向かって歩く。

 今回は南西の方に向かっているが……何だかあちこちで雪ウサギを見かける。

 もしかしたら彼らはこの吹雪に守られているのかも知れない。保護色となる白い体毛は雪が積もっていないと意味をなさないし、これだけの強烈な風なら上空から狙うフクロウの様な猛禽類からも守られる。

 彼らはこの環境を利用しているのかも知れない。


『パパ。雪ん子達見付けた』

「どっちだ」


 ブランの言葉を聞いて俺は顔を上げるが吹雪のせいでよく分からない。


『あっち。ブランの鼻の先』


 ブランは顔を雪ん子達が居る方向に向け、俺はブランの顔を羅針盤にして進む。

 その先にはブランの言うように雪ん子達がこの吹雪の中で遊んでいた。


「「「「「かーごめかごめ。かーごのなーかの鳥は――」」」」」


 どうやらかごめかごめで遊んでいたらしい。

 これだけ見てると日本に居る様な感じだが……このも吹雪の中で行なっていると思うとやっぱり異常だ。

 俺は雪ん子達に近付くと、雪ん子達の方も俺に気が付いて駆け寄ってくる。


「人間だ!」

「人間の大人だ!」

「人間の男だ!」


 そう言って俺を取り囲むように雪ん子達ははしゃぐ。

 俺はそんな雪ん子達の視線に合わせてから話をする。


「初めまして、俺の名前はドラクゥル。君達は?」

「私達は雪ん子!」

「違うよ。私達は雪の精霊だよ!」

「違うよ。私達は冬だよ!」

「人間の大人さんはどうしたの?」


 子供特有の好き勝手に話す奴を聞いて油断してた。

 最近の俺の周りにいる子供達は全員大人びているから忘れてた。見た目通りの子供と接するのは久しぶりだな。


「俺はちょっと人探しに来たんだ。この吹雪を起こしている人の事を知らないか?」

「この吹雪?」

トトさまとカカ様の事かな?」

「でも多分ダメだよね?」

「ダメだよね~。カカ様探してるもん」

「そうだよね、カカ様が探してるの見付けないとダメだもんね」


 よっしゃヒントゲット。

 雪ん子の親は何かを探している。


「一体何を探してるのかな?」

「え~っと、何だったっけ?」

「確か人だよ。名前は……何だっけ?」

「名前は言ってなかったよ」

「うん。言ってなかった」

「確か……私達のお爺ちゃん!!」

「それだ!!カカ様のトト様探してるんだ!!」


 はい情報ゲット!!

 でも3組もいるんだよな……どの夫婦だろ?


「なぁ雪ん子達。俺も手伝うから詳しい話を聞きたいからカカ様の所に連れて行ってくれないか?」


 俺がそう聞くと雪ん子達は困った表情をする。


「どうする?」

「どうしよっか?」

「カカ様は信用できる人間じゃないとダメって言ってたよ」

「信用できる?」

「信用できない?」

「でも怖い人間ではなさそうだよね」

「悪い人間でもなさそう」

「見て!白くてフワフワのドラゴンの赤ちゃん抱えてる!!」

「本当だ!ドラゴンが居る!!」

「なら大丈夫かな?」

「ドラゴンの赤ちゃんが一緒に居るなら大丈夫かな?」


 雪ん子達の相談が終わるまでじっと待っていると、ブランがくしゃみをした。


「大丈夫かブラン?」

『大丈夫。でも鼻かませて』

「全く、それぐらい自分で出来るだろ」

『この姿だとし辛いの』

「はいはい。ほれ」


 ポケットからティッシュを出してブランの鼻に当てる。

 ブランはそのティッシュで鼻をかんで間抜けな姿から脱出する。

 それを見ていた雪ん子達は何かを決めたように頷き合った。


「大丈夫そうだね」

「大丈夫かも」

「ドラゴンの赤ちゃんが信用してるなら大丈夫じゃない」

「人間の大人、カカ様の所まで連れて行ってあげる」


 あ、なんかよく分からない内に決まってた。

 しかも連れて行ってくれるならかなりいいかも。

 こうして俺とブランは雪ん子達の後をついて行くのだった。

 種族  雪ん子

 ランク C


 小さな子供ような姿をした精霊。姿形はほぼ人間の姿と変わらないが強い進化の可能性を秘めている。

 肌は白く、髪は青白い。服装は和服に藁で出来た防寒着を着ている。

 無邪気で見た目通り子供っぽい性格。

 まだ力は弱いが精霊なので寿命はない。

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