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ダンジョンだろうが家に帰ってちゃんと飯を食べる

「……そろそろ休憩しますか」


 若葉が俺達に向かってそう言った。

 第1層は広いが弱い魔物しか出ないし、群れてもゴブリンぐらいっと言う話だったが何だか違う。いきなり出てきたゴブリン5体も異常だが、その後もオオカミの群が3頭ぐらいで現れたりっと言う感じで群ればっかり出くわしている。

 そのため予定よりも進んでいない様だし、若葉も戦闘で疲れている。そしてレオの方も疲れている。慣れない獣道を歩いているからか、軽く息切れをしているし、子供なのだから疲れて当然だ。


「この異常な状態だとゆっくり休む事は出来ませんが……交代で見張りをしながら休みましょう。まずは私から――」

「あ、それなら俺が休憩場所を用意出来るから見張りとか大丈夫だよ」


 若葉の言葉を遮りながら言うとブランとノワールが意外そうな表情をしながら聞く。


「パパいいの?」

「秘密にしておく予定では?」

「確かに最初は隠しておくつもりだったけど、この人数なら仕方ないだろ。特に若葉とレオは疲れてる。俺はこうして見てるだけだし、こういう時ぐらいは協力してあげるもんだろ」


 俺達にしか分からない会話をして若葉とレオは首をかしげているが、ブランとノワールは俺が決めたからまぁいっかっと言う感じで何も言わない。

 俺は念のために2人に前持って言っておく。


「これは俺の秘密の力だから出来るだけ他の人に言わないでくれ。そこでならゆっくり休めるから」

「ゆっくり休む……?ダンジョンで安全地帯はないって聞いてるよ?」

「そうですよ。もしかしてブランちゃんに結界を張ってもらうとか?それじゃ休憩になりませんよ。ブランちゃんは守りの要なんですから、あまり疲れさせたく――」

「そう言う感じでもないよ。とにかくこっちにおいで」


 そう言って俺はアルカディアに行く穴を空けた。

 突然の穴に若葉とレオは驚いた様子だったが、俺やブラン、ノワールが入るのを見て恐る恐る入る。

 そして穴を閉じると若葉は驚いて後ろを振り返った。


「ほ、本当にここはどこなんですか!ちゃんと元の場所に戻れるんですよね!?」

「俺が居る所からしか出入りできないから必ずあのダンジョンに戻るよ。それよりおいで、俺ん家まで少し歩くから」


 そう言いながらレオの手を取り、迷子にならない様一緒に行く。

 レオは俺と手を繋がっても周りの光景が急に変わった事で忙しそうに首を動かす。まぁぶっちゃけ何もないんだけどね。あるとすれば放牧しているスレイプニルが草を食んでいるとか、子供達がベビーモンスターと遊んであげているとかそんなところか。

 若葉もこの光景に驚いているのか、あっちこっち興味深そうに見ている。

 そうしている間に我が家に着いた。家の前ではガブリエルが何故かエプロンを付けて、ほうきを持って玄関の前を掃除している。


「ガブリエル。なんで玄関掃除なんてしてんの?」

「あらお父様、お帰りなさい。昼食ですか」

「ああ。5人分頼むよ」

「分かりました。すぐ用意しますね」


 そう言ってガブリエルは嬉しそうに家の中に消えた。

 本当に世話好きと言うか何と言うか、何で俺が育てたのにあんないい子に育ったんだ?俺放任主義者だから何でああなったのか全く分からないんだけど。まぁ俺が飯作っている時にじっと見てきたり、俺が家事をしている所を後ろから追いかけてきたり、真似して掃除を手伝ってくれたりしてたけどさ。

 何でだろうな~っと思っていると若葉が聞いて来る。


「あの、今お父様って……」

「ここに居るのはみんな俺が育てた子供達なんだよ。だからパパだったりお父さんだったり色々呼ばれてる」

「ここに居る人達全員ですか?」

「最近は全員じゃなくなったな。1部のうちの子が使用人ごと連れて帰ってきたからさ、その使用人の人達だけは流石に違うよ。それより入った入った」


 そう言って俺は若葉とレオを家に招く。

 若葉は小さく「お邪魔します」と言って、レオは何が珍しいのか分からないがずっとあっちこっち顔を動かす。

 真っ直ぐ食堂に行き、ガブリエルが食事の準備をしている。その隣には数人の女性型天使達がガブリエルの手伝いをしている。

 その手伝いをしている天使の1人が俺達に冷えた麦茶を持ってきてくれた。レオにはこのアルカディアで取れた果実のジュースをコップに入れて持ってきてくれる。

 それぞれコップの中身を飲みながら、レオはストローを使ってのどを潤す。


「ふぅ。やっぱりダンジョンってのは厳しい所なんだな。俺戦闘出来ないからずっとひやひやしてた」


 麦茶を一気飲みした後、家に帰ってきた安心感からかついそんな事を言ってしまった。

 それに対してブランとノワールが言う。


「パパの場合はそうだよね。武器とかも持った事ないし、魔法も使えない。それが普通だよ」

「父さんは無理に戦う必要はない。こういう時こそ私達に頼ってくれないと困る」

「困るって何だよ?なんか俺したっけ?」

「何もさせてくれないからだよ。このアルカディアは父さんの管理だけでほぼ成り立っている。こういう時ぐらい活躍させてくれないと出番がないじゃないか」


 ノワールがそう言うが子供達にはこまごまとした事を手伝ってくれているのでかなり助かっている。

 例えば薬の開発。これはラファエルやドクターが行っている。ちょっとした塗るタイプの傷薬に液体や錠剤タイプの薬など、いざと言う時のために開発してくれていた。特に今回は大量に薬を使う可能性が高いので大量生産を行うと言う意味でも手伝ってくれるのは本当に助かる。


 ミカエル達天使組は基本的に家事とか、スレイプニル達のような動物型のモンスター達を放して牧場に移動させたりしてくれている。

 それでもホワイトフェザーでの仕事もあるので無理は言っていない。向こうでも大切な仕事があるのだから無理に手伝わなくてもいいと言っているのだが、俺の手伝いをするのは当然みたいな事言うのでちょっと戸惑っている。

 本当に無理だけはしないで欲しい。


 そして最近だとヴラド達には他の子供達がどこに居るのか調べてもらっている。

 六大大国を中心にこの辺りに兄弟がいるんじゃないか、こっちの森も怪しいっと言う感じで会議を続けているとか。ホワイトフェザーやパープルスモックの情報を集めて管理している分、アニメの情報局みたいな感じだ。


 こんな感じで子供達は毎日手伝ってくれている。

 俺としては帰ってきてくれただけでもうれしいので後はゴロゴロしていてもいいのではないかと思う。今でも2000年間放ったらかしにしてきたと言う負い目を感じているし、どうせ一緒に居るのであれば楽しい事をして過ごしたい。

 あまり危険な所で頑張ってほしいと言う思いはないのだが……


「親心って奴だ。大切だからあんまり危険な事はして欲しくないんだよ」

「それならウリエル達に護衛してもらったらどうですか。ブランちゃんから聞きましたよ、今はお父様とみなさんだけだって」


 料理が出来たのでガブリエル達が持ってきてくれた。


「お、今日はグラタンか。美味そうだな」

「残念。今日のお昼はドリアです。冷蔵庫に残ってたご飯がそろそろ古くなってきそうだったので。あ、もちろんそちらのお2人にはちゃんと朝のご飯で作りましたよ」

「主婦らしくなってきたな……ガブ」

「誉め言葉としていただきます」


 何故かそう言うと嬉しそうに言うガブリエル。ガブリエルも一緒にお昼の様でドリアの器を持ってくる。

 こうして6人での昼飯ととなった訳だが、レオが何故か手を付けようとしない。


「レオ?嫌いな物でもあったか?」

「そうじゃなくて……これどう言う食べ物なの?」

「もしかして……ドリア初めてか?」

「うん。どうやって食べればいい??」

「どうって……普通にフォークで好きに食べていいんだぞ。焼きたてで熱いのと、トマトソース飛ばさないようにすれば」


 トマトソースって1度服に付くとすぐに洗わないと厄介なんだよな……洗い方間違えると広がるし。

 レオは俺達が食べている姿を見てフォークをドリアに刺す。焼く事で溶けたチーズが伸びて、レオは少しだけ面白そうにした後口に運んだ。

 するとすぐに目を見開いて俺に向かって叫んだ。


「これ美味しい!!この下のつぶつぶ何!?」

「つぶつぶ?もしかして米の事か?俺達が主食で食べてるパンとは違う穀物。そういやグリーンシェルで食べた事ないな」

「コメ?へ~。私パンかトウモロコシで作ったパンみたいなのしか食べた事ない。これ美味しい~」


 そう言って次々口に運ぼうとするけど、焼きたてで熱いから食べたいけど食べれない。と言う攻防を温かく見守ってから俺は冷ましながら食べる。

 うん。やっぱりガブリエルの飯は俺より美味いな。なのに何で俺の飯の方が美味いって思うんだろ?やっぱ食い慣れてるからか?

 なんて思いながらもう1人、若葉の方はどうかと見てみると何故か視線が合った。若葉は慌てて視線を外し、食事に戻った。

 その視線に何でだろうと思っているとブランが言う。


「さっきのガブリエルお姉ちゃんが言ってたウリエルお兄ちゃんの事、本当にお願いしてもいいんじゃないかな?普段暇だし」

「暇って言い方は止めてやれよ。グリーンシェルに着くまで守ってくれたじゃん」

「でも後は帰りまで出番ないよね。よくウリエルお兄ちゃんも出番欲しいって言ってるし、また護衛としてお願いした方がいいんじゃない?」

「まぁ……それもそうか。それじゃウリエルに頼んでおくか」


 なんか最初の護衛の人達を無理矢理追い払ったのはどうするんだろうっと思いながら安全性を高めるには丁度いいよな?っと思う俺だった。

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