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誓いのバラ、検査結果

 アルカディアにある俺の研究室はぶっちゃけるとミニゲーム感覚で扱う部屋になっていた。

 もちろん機材がいい物になればなるほど扱いが難しく、難易度が上がる。最高の結果を残せばその分品質のいい薬が出来たり、素材の品質が少し低くても薬のできは良い品質の薬を作る事が出来たりする。

 もし本当に世界樹が病気になってい薬が必要となった時はここで作る事になる。


 まぁ今回はバラの事を調べるだけなのでそう難しい事はないんだけど。

 あくまでも難しいのは薬を作る事だけなので、機材に調べたい物を入れて調べるのは本当にただ調べるだけと何も変わらない。

 俺は大型の機械についている電レンジの様な物を開けてその中にバラを入れて扉をしっかりと閉める。

 あとはこの機会のコンソールを操作して調べればいいだけだ。


「パパ~、向こうの世界の植物でも調べる事って出来るのかな?」

「さあ?よく分からないけどやってみるしかないだろ。一応この機材は繊細な植物でも調べる事が出来るし、バラにダメージはないと思う。まぁまずはとりあえずやってみるって事でいいだろ」


 そう言いながら機材を起動。静かに起動音が鳴り始め、画面も動き出す。

 まず画面に出てきたのはバラのカメラ映像で、そこから俺が色々と詳しく調べる。

 まずは葉脈に流れる水の動き、これはルーペで見た時と変わらない流れ方だ。そこからさらに細かく知るためにバラを解析する。葉脈を通して魔力と思われる物も流れているのでこの辺りはアルカディアの特殊な植物とあまり変わらない。


 ライトさんは魔法植物と言っていたが、これぐらいならこのアルカディアではランクの低い植物に分類されそうだ。さらに調べると特別な薬効がありそうな部分はないし、精々バラの部分がガラス細工の様になっているので美術品としての価値があるだけだ。


「何か分かった~」


 ブランが暇そうにイスに座って足をぶらぶらと振っている。

 ノワールはそんなブランに何か言いたげだが、俺は笑ってそれを許す。だってただ外から見ている人からすれば暇なのは明確だからな。


「ライトさんが言っていたようにこのバラには多少の魔法の力が混じっている事は分かった。でも特別薬になるほど強い効果がある訳ではなさそうだ」

「やっぱり。ブランは回復系の力に敏感だから分かるけど、やっぱり何かを癒したりする力はないんだね」

「そうだな。でもこの葉脈に流れる魔法の力を追ってみるとちょっとだけ面白い事が分かった。あと花が咲かない理由も」

「え!本当!?」


 もう既に花が咲かない理由を見付けたのかと思って駆け寄ってくる。ノワールも咲かない理由を知って少しだけ表情を変えた。


「流石父さんだ。それで咲かない理由は?」

「簡単に言うと栄養不足。まぁ分かりやすく栄養不足って言ったけど実際に足りないのは魔力の方だ。このバラに合った魔力を探し出して注入する必要がある」

「それじゃ魔力さえあげれば花は咲くって事?」

「いや、それだけじゃダメだ。確かに魔力不足って言う根本的な問題は見付けたけど、もう1つ必要な事がありそうなんだよな……ほら、この魔力の流れを見ると魔力と栄養が十分にある状態で外的要因が必要みたいなんだよ」


 俺は画面の1部を指差しながらブランとノワールに見せる。

 今見せている映像はバラの葉脈に流れる栄養と魔力の流れをCGにした物だが、花の中心にあるめしべとおしべの中心部分に居ように魔力が集中している。しかもその集中した所は針のように小さな点で、人の手でここを刺激するのは難しいだろう。


「この点は?」

「恐らく栄養と魔力が十分になっている状態で花が咲く最後の条件だと思うぞ、ノワール。おそらくグリーンシェルで咲いたバラは偶然この条件が重なっていたんだろう。だがこうなると別の問題が出て来るな……」

「別な問題?綿棒か何かで突っつけばいいんじゃないの??」

「それはそれでありだとは思うんだが……このバラの中心部分ってかなり脆いみたいなんだよ。ブラン言うように人工授粉をさせるのであればそれでも良いのかも知れないが……まずは元々このバラをつついてくれる何かを探した方がいいかも知れないっと俺は思ってる。自然界で咲いていたと言うのであれば受粉させてくれるハチとか、小さな昆虫の類がバラの中でこのスイッチを押していたかもしれない」


 どうも調べる限り綿棒で触れたりするのは難しそうな感じがするんだよな。本当にこのバラが咲くスイッチの様になっている中心部分は針の太さとそう変わらない様に感じるし、力を入れ過ぎると壊れてしまうかも知れない。

 それに受粉させるのに花が咲かないと言うのはおかしいとしか言いようがないし、たとえ昆虫の類が受粉を助けていたとしても咲かないと言う事はない。

 ラフレシアなんかは臭いで昆虫が来るようにするし、花が咲く事で目立つ色を昆虫にアピールする花がとても多い。


 どれもまずは咲く事を条件にしていると思うのだが……半透明の花びらで目立つ色と言うのも変だし、特別変な臭いがする訳でもない。これは……どうしたもんかな。


「だからとりあえずこのバラと共生関係にある昆虫や動物を探してみる。うまくこのバラを咲かせてくれる誰かが見付かったらどのバラも一気に咲かせる事が出来るだろうよ」

「パパがそう言うならそれでいいのかな?でも2週間以内に見つけられるの?」

「ブランの言う通り2週間以内にその花を咲かせてくれる昆虫や動物を見付ける事が出来なければこの課題はクリアされたとは言えない。父さんは2週間以内にその誰かを見付ける事が出来るのか」

「その辺りは半分運任せ。とりあえずこのグリーンシェルで咲いているって事はその誰かは最低でもここには居るって事だ。まぁモンスター、この世界では魔物がこのバラを咲かせている可能性も高いし、色々調べ直さないとな……」


 グリーンシェルでは昆虫か動物と共生関係あると考えているのかどうか分からないが、調べたいから図鑑を貸してくれと言えば流石に図鑑ぐらいは貸してくれるだろ。

 もしそれもダメだとしたら……この国は何で他国に助けを求めたの??っと言う事態になる。

 流石にそれはないだろうと思いながらバラをレンジの中から取り出す。バラの状態は変わらず、機材の影響を受けていない。まぁ元々デリケートな植物でも大丈夫な奴で調べたから問題ないけど。


 っとなるとグリーンシェルに戻ったら図鑑とにらめっこする時間になりそうだ。

 地道に調べるしかないと言うのは頭では分かっているが、見つけるのに時間掛かりそうだな……


 そう思いながらも俺達はアルカディアから客室に戻った。

 そこにはライトさんに天使が紅茶を振る舞っていた。ガブリエルの所に居た天使だから家事系は得意なんだろう。

 そして紅茶をテーブルに戻したライトさんが優雅に聞く。


「ドラクゥル様、ブラン様、ノワール様、お帰りなさいませ。何か分かりましたか?」

「調べてみたら色々分かったよ。あ、俺にもお茶とお菓子ちょうだい」


 天使にそう言うと天使は嬉しそうに表情を緩ませてから頭を下げた。

 今日のお菓子はスコーンだ。アルカディアで育ったイチゴやブルーベリーなどを使ったジャムが複数並べられており、好みが分かれる。あとついでに溶かした甘くないチョコなどもあったりする。

 俺達はスコーンを食べながら紅茶を飲んでライトさんに言う。


「大雑把には開花する最低限条件は分かったと思います」

「本当ですか!?まさかたった1日で誓いのバラの開花方法が分かる何て……これは歴史的な発見ですよ!!」

「俺はその辺りよく分かりませんけど、でもその条件を満たすためには何らかの生物を借りないといけないようです」

「何らかの……生物?ですか」

「はい。どうやら開花条件にこのつぼみの奥にある部分を押す事が出来る生物の力が必要の様です。まだその生物が何なのか分からないのであと一歩と言う所なんですが……」

「その生物を特定しないと開花しないと言う事ですか。それなら早速図鑑などを手配しましょう。おおまかな目星は付いていますか?」

「とりあえずこの国に居る在来種を調べる事が1番の近道かと。誓いのバラが昔からこの地で育っているのであれば咲かせる何かもこの国に居ると思います」

「では早速……明日から調べましょう。2週間しか時間がありませんからね」

「はい。今夜メイドさんに伝えておいて、明日から調べられるようにしましょう」


 誓いのバラその物の構造は大体分かったが、後はどの生物が花を咲かせるきっかけを与えてくれるのかは手当たり次第調べてみたいと分からない。

 疲れそうだけど頑張るか~

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