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この世界の常識について聞く

 食事に関してはまぁ好評だったと言っておく。

 料理慣れしていると言う程ではないから不格好な所もあったと思うが、それでも美味い美味い言いながら食ってもらったからきっと素材のおかげだろう。

 牛乳とかチーズとかの加工品もこのマイルーム内で勝手に作ってくれるし、最高レベルまで上げといた良かったと本当に思う。

 そして飯を食い終わって一服した後、俺は彼らに聞く。


「これで俺が普通ではない事は理解していただけたでしょうか?」

「あ~それに関しては最初から普通じゃないと思ってた。聖域から出てきたにしては闇の連中っぽくない、しかもこんな豪邸があるスキルなんて聞いた事がない。本当に何者なんだ?」


 闇とかスキルとかに関しても俺は全く知らないのでここで少しでも情報が欲しい。

 まずはこの世界に来た経緯について話さないといけない。

 俺はディースさんをちらっと見てから言った。


「まず俺はこの世界の人間ではありません。他の世界から来ました」

「他の世界?まぁこんな訳の分からない力を持ってるから当然かもしれないが……」

「そう口に出されてもやっぱり分かりませんね」


 そうアレクとライナさんは言う。

 しかしディースさんとメルトは違う反応をした。


「それは……もしかして勇者召喚でしょうか?メルトちゃんはどう思う?」

「……“迷い人”の可能性もある」


 2人はどうやら何かを知っているらしい。

 俺達男性陣が2人に視線を送るとまずディースさんから話してくれた。


「私が思い当たったのは勇者召喚です。教会の秘儀であり、噂でしかありませんが最上位の召喚術師にのみ使用できると噂程度で聞いた事があります。ですがその場合召喚される場所は教会の大聖堂のような大規模な儀式場で行われ、その儀式場に現れると聞いています。と言っても噂の領域から出てきた事はありませんが、一応、教会の最終手段だと聞いています」

「私もその噂は聞いている。でも聖域内で儀式を行える場所があるとは思えない。確認する。どこか聖なる場所で召喚された?」

「そんな聖なる場所なんて言える所じゃなかったぞ。聖域のどこかなんだろうが、朽ちた牧場?みたいな場所で人はいないし、何もなかったぞ」

「なら迷い人の方が可能性が高い。迷い人は時々異世界から文字通り人が迷い込む現象。向こうからこちらに来る理由に関しては不明であり、何故迷い込むのか全く分からない。それに迷い人のほとんどは普通の人間と聞いている。ドラクゥルみたいにこんな力を持っていると聞いた事がない」


 2人の話を聞いて俺は少し考える。

 俺の場合この世界の神様に召喚されたが、それはこの世界の人の意志ではなく神様のお節介とでも言うべきものだったのだろう。

 変に勇者を名乗っても面倒な事になる事しかイメージできないし、素直に迷い人と言う事にしておくとしよう。

 このゲームの力に関しては……自分でもよく分からないとしか言いようがないか。


「2人の話を聞く限り俺は迷い人って奴みたいだな。この力に関しては……俺自身よく分かんないけど」

「分からない力を使っていたのですか?」

「俺自身元々こんな訳の分からない力を持っていた訳じゃない。ただこの世界に来てから自然と使える事が分かったと言うか、この力使わないと生き残れなかったと言うか、そんな感じ」

「こういっちゃ悪いが戦える人間には見えないからな。逃げ場所があるなら素直に逃げた方が良い。ある意味ドラクゥルは賢い選択をしてたよ」

「俺自身戦えないのは分かっていたので恐る恐る行動しててよかったと思います」


 さて、俺自身についてはこんな感じだ。

 食事も終えたのであとは色々とこの屋敷の中を案内して明日からの行動について聞いておこう。

 それからこの世界の常識なども知っておきたい。


「それでみんなは今後どうするんだ?俺個人としては町まで送ってもらいたいんだが……あいにくと金になる物はここで育ててる野菜とか肉ぐらいしかない。街まで送ってもらうには安いか?」

「いや、十分すぎる。依頼として受けるが……やっぱりこちらとしては利点が大き過ぎる」

「利点?部屋貸して飯用意するぐらいしか出来ないけど?」

「それはとてもありがたい事なのですよ。冒険中は野営は普通ですし、温かいベッドに温かい食事、魔物や野盗に襲われない安全な場所とはとても価値のある物なのです」

「そんなにひどい物なのか?」

「野営は最も気を付けないといけない。交代で火の番をしながら交代で寝る。冒険者になる試験でもこれが1番ハード」


 思っていた以上にシビアな業界の様だ。マンガとかじゃその場で犯罪歴などを調べられて、犯罪歴がなければ即採用みたいな感じだけどこっちはもっと厳しい物の様子。

 野盗が出ると言う事は治安もよくないんだろう。と言うか魔物が出るのに野盗も出るってこれ以外と不思議な事じゃね?

 魔物出るならちゃんと町で傭兵でも冒険者でもやった方が安全な感じがするんだけど。


 俺は頷きながらみんなの話を聞き、頷く。


「と言う事は安心して眠る事が出来るだけでも価値があるって事か……」

「そう言う事だ。それにドラクゥルが用意してくれた飯だってかなり美味い。ここの所は干し肉と水しか食ってなからスゲー助かる」

「いざとなれば魔物を狩って食べる事も出来なくはありませんが、食べれる魔物って数が少ないですから希少ですしね。野菜となったらさらに野生である物なんてありませんし」


 へ~。食べれる魔物なんているのか。

 アヴァロンで食べれる魔物は存在しなかったからな……一応部分的な所は食べれたりするが、もしかしてそいつらの事だろうか?

 あと存在するとしたら軍隊蜂アーミービーだな。彼らも今は存在しないが彼らの巣からハチミツが取れた。結構甘くて美味いが現在彼らが居ないの生産の目途はたっていない。

 それでもハチミツと巣は残ってるけどね。


「それから常識とかも聞きたいんだが……俺がこの世界で生きていくにはどうしたらいいと思う?」


 そう聞くとみんなそれぞれ考える。


「冒険者は無理だよな。とても戦えるようには見えないし」

「教会で一時的に保護してもらうと言う手もなくはありませんが……主に幼い子達向けなので恐らくダメでしょうね」

「商人?この料理売る?」

「しかし商人ギルドに登録など必要な事が多いですが、金銭的な問題もあります」


 っと言う感じで思い付いた事をとりあえず言ってみて、検討すると言う感じで話し合ってくれている。

 もちろん俺自身事でもあるので当然俺も参加している。

 と言ってもこの世界の常識すら知らないので、それは甘いと言われる事が多かったが。

 そして結局行きついた先は――


「商人になるしかないだろうな」


 との事。

 アレクが説明してくれる内容だと、まず商人ギルドと言う所があるのでそこで野菜などを売れば一応は買い取ってくれるだろうとの事。ただし野菜では二束三文で買い取られる可能性は非常に高いので料理に使った塩やコショウを売った方が良いのではないかと言われた。

 それに関しては畑で作っているので売ろうと思えばいくらでも売れる。このファーム内であれば作物の生産スピードはゲームの時と同じ速度で生産されるので連作障害などを起こす事もない。

 商人と言うよりは農家と言う感じの方がしっくりくるがそれは細かい点でしかない。


「その商人と言うのは必ず店を構える必要はないんだよな?」

「ドラクゥルの場合は必要ないな。コショウなどを売り下ろすのは商業ギルドがしてくれるだろうし、店を構える必要はないな」

「となるとやっぱり必要なのは証明書製作が面倒なのか……」


 各ギルドと呼ばれる業種には厳しい身元検査が行われると言う。

 普通に生きて犯罪歴がなければ取得するのは面倒ではないのだが、俺の様に身元不明だと面倒な事が多くなる。

 例えば奴隷。たまに主人から抜け出した奴隷が行き場を求めて冒険者ギルドに来ると言う。しかし身元が奴隷である場合判明した場合その主人の所に送り返されるし、そうでなかったとしてもまずは奴隷でないかどうか調べる所から始まる。

 それを突破した後は楽だが、この奴隷であるかどうか確認する時間と作業が非常に面倒らしい。


「と言ってもドラクゥルさんが奴隷だとは思えないから問題ないだろうけどな」

「でも疑われるのは確定なんだよな?あぁ~面倒なのは嫌いだ」


 テーブルに顔を乗っけるとディースさんとメルトちゃんがくすくすと笑った。そして顔を横にした時に時計を見て気が付いた。

 もう夜の9時だ。アレスたちは疲れているかもしれないし、そろそろ部屋に案内するべきだろう。


「とりあえず大体の事は決める事が出来たから4人を部屋に案内する。1人1部屋で良いか?」

「いや、2人1部屋でいいだろ。そこまで甘える訳にはいかない」

「そうか?それじゃすぐ近くの部屋に案内するよ」


 こうして4人を部屋に案内した。

 部屋は希望通り2人1部屋でバス、トイレ完備の客室だ。タオルとかもちゃんとあるので好きに使えばいい。


「そんじゃ俺は俺の部屋で寝るから。お休み」

「ちょっと待て。この部屋使っていいのか?こんなきれいな部屋を?」

「そりゃ客室だし使ってもらわないと困る。女性陣は隣の部屋使ってくれ、間取りとかは特に変わらないから」

「あ、ありがとうございます」

「あと風呂とかトイレの使い方はさっき教えた通りだから安心して使ってくれ。そんじゃお休み」


 こうして俺達は別れて部屋で寝る。

 俺は俺用の部屋でベッドの上に寝転がる。

 そしてこれはアレク達に言っていないが、行商人をしようと思う。もっと正確に言うと旅をしながら商人として金を稼ぎながら行動しようと言う感じだ。

 いまだにゲームの力で育てた魔物達が死んだ気配はない。となれば一緒にこの世界のどこかにいるのではないだろうか?

 そんな淡い期待を込めて旅をする。商人はそのおまけだ。ただ生きるために仕方ないとしか言いようがない。

 それじゃこの世界で頑張って生きてみるか。

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